第6話 いつものお店で
男性
コーヒーは、どちらかというと嫌いではない。
ただ、どちらかというと、甘い方が好みだ。
かっこつけてブラックで飲んだりもするが、基本的に砂糖とミルクはかかせない。
何か集中したくなるときは、いつもカフェで甘めのコーヒーを飲む。
自分自信これといって特徴もなく、唯一は背が少し高いだけで、あまり目立つ方ではない。
最近出費も多いのでバイトでも始めようかと思っていたら、よく行くカフェでバイト募集をしていることを知った。
雰囲気の良いカフェだ。
とても繁盛しているので、覚えることも多く、毎日が忙しい。
それでも、コーヒーの香りに包まれて仕事が出来るなら、うれしいかぎりだ。
仕事をしていると、常連でよく来る女の子がいる事に気付いた。
その子は、いつもメニューを見ながら悩み、悩んだあげく結局いつものコーヒーを選ぶ。
おもしろい子だなと思い、ちょっと気にしていた。
今日もその子がやってきた。
今日はなんだか浮かない顔をしている。何かあったのかとは思ったが、お客さんに声をかけるほど自分に自信があるわけでもなく、いつも通り普通に対応した。
物思いにふける彼女の横顔に、なぜか目がいく。
すると、急に慌てだした。
何か急いでいるようだった。
飲みかけを置いて、大慌てで出ていった。
彼女がいたテーブルを片づけていると、イスの上にスマホが置いてあることに気付いた。
たぶん相当慌てていたから忘れてしまったのだろうと思い、レジの横に置いた。
きっとまた来るだろうから、その時に渡そう。
今日中に取りにこれればいいのだが。
少したって、スマホにメッセージが届いていた。
仕事が終わり身支度をしているときにふと思い出した。
もう取りに来たのだろうか。
まだ、レジの横に置いてあるままだ。
もしかしたら、スマホがないことに気付いていないのだろうか。
一応、近所まで戻っているかもしれないから届けてあげようと思い店先の道を見渡した。
あの女の子が少し先の方に見えた。
調度戻ってくるところだったようだ。
仕事も終わって帰るところだったので、駆け寄って声をかける事にした。
声をかけると、彼女は機嫌が悪かったようで、不機嫌そうな顔でこっちをみた。
迷惑だったのかなとは思ったが、そのままスマホを手渡した。
彼女は自分にお礼を言って、動転していたのか急に赤信号へ向かった。
車が走ってきて危ないと思った瞬間、彼女の手を引き寄せた。
数秒して、急に手を引いた事を謝ると、なかば強引に近くのお店でお礼がしたいと言うことで連れて行かれた。
彼女はいつものように、迷って迷ってコーヒーを選ぶ。
自分はいつものコーヒー。
なぜだろう。
コーヒーを飲んでいると、彼女がほほえんだ。
夕日でまぶしいせいもあるが、彼女の笑顔が輝いて見えた。
なぜだろう。
その笑顔から目が離せなくなった。
明日は、季節のオススメでもいかがですか?
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