第5話 いつものお店で

女の子


コーヒーは苦手。

コーヒーは苦いから、飲む時は砂糖とミルクをたっぷり入れるの。

飲み方が変だとかよく言われるけど、苦手なモノは苦手なの。

でもね、コーヒーの香りは好き。

コーヒーの香りに包まれると、なんだかホッとして落ち着くの。

あと、カフェの雰囲気も好き。

悩みがあると、決まってカフェでぼーっと、行き交う人たちを人間観察。

忙しそうにしている人や、カップルで仲良くしている人。

子供を連れて歩く人とか、風景になっている人たちをぼーっとながめてる。

自分の悩みが小さく思える。

それくらい人間ていっぱいいるんだなぁと、ちょっと哲学っぽく、少しだけ大人っぽく、物思いにふける。

かっこいいでしょ。

ちなみに、悩みがなくてもカフェでまったりするのです。

お決まりの日課みたいなモノかな。

注文するときは、季節のオススメ的なモノが出ると、いつも気になってメニューをながめる。

迷って迷って、結局いつものオリジナルブレンドを注文する。

これも、お決まりみたいなモノかな。

数日前から、いつも行くお店に新しい店員さんが入った。

物静かで、あまり表情がないから接客向きとは言えないお兄さん。

背が高く、細いわけじゃないけど太いわけでもない。

中肉中背?

うん。そんな感じ。

顔は、どちらかというと悪くない。

輪郭が細めで、目も横長のキリッとした感じ。

声が少し低めで、そこは結構好きな方かな。

いつもの癖で、つい人間観察っぽくじろじろ見ちゃう。

いつものコーヒーを頼んで、席に着く。

今日は、ちょっと悩む事があったから、いつものようにカフェでまったり。

あたしって小さいな~・・・

背は低い方だけど、そんなの関係なく、人として小さいなって。

そんな日だからかな、いつもついてくるオマケのマドレーヌがうれしく感じた。

ちょったしたことにうれしくなるほど、今回は悩んでいるのです。

悩みのタネは、おしえない。

いつものようにぼーっとしていると、突然スマホのアラームがなった。

やばい。約束の時間に遅れる。

荷物をまとめ、約束の場所急いで向かった。

なんとかギリギリセーフで間に合った。

約束事が終わり、時計を見るついでにメッセージの確認をしようと思ったら、スマホがないことに気がついた。

最悪だ。

最近、良いこと一つもない。

きっと、さっきのお店に置いてきてしまったのかも。

とりあえず、いつものお店に戻ろう。

なんか色々疲れて、やる気も出ない。

うついて歩いていると涙が出そうになる。

とぽとぽ歩いていると、男性に声をかけられた。

何かの勧誘かと思いながら顔を上げると、いつも行くカフェの新人のお兄さんだった。

忘れ物に気がつき持ってきてくれた。

情けない顔を見られたからか、忘れ物をして届けてもらったからか、色々恥ずかしくなってきた。

その場の勢いで感謝の言葉を伝え、急いでわかれた。

瞬間、急に手を引っ張られた。

渡ろうとした信号が赤である事に気付かず、しかも車が来ていたのを助けてくれた。

すぐに手を離してしまったが、彼の手は大きく、そして暖かかった。

お礼にコーヒーでもご馳走しますと伝え、なかば強引に近くのお店に入った。

私はいつものようにコーヒー。

彼も、やっぱりコーヒー。

私と同じで、砂糖とミルクたっぷり。

見た目と違い、砂糖とミルクをいれて飲む姿が、なんだか可愛くみえた。

なんだろう、安心したからかな

気付いたら笑ってた。

ちょっとしたことでうれしくなっちゃう、そんな一日。

今日はちょっと良い日かな。


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