1通目 母さんへ

母さんへ

元気ですか。

突然ですみません。

俺は、もう母さんに会えないかもしれません。



ようやく朝の国の関門に着いた。

空の色は、朱と藍の混ざり合った美しい色をしている。

青い闇のなかに紅い希望が燃えているような、そんなイメージのわく空。

この空の色が僕はとても好きで、彼女にも見せてあげたいと思う。

絵を描けば見せてあげられるかもしれないと思いついたが、

すぐにその考えは取り消した。

昔、彼女に僕の描いた絵を散々馬鹿にされたのを思い出したのだ。

自分では結構うまく描けたつもりの絵を馬鹿にされ、僕は彼女と二日間ほど口を利かなかった。

最後は彼女に泣きながら、なぜか僕が怒られて僕が謝るというよくわからない理不尽な結末でその喧嘩は終わった。

いつだって彼女は理不尽な奴だ。


関門で手続きを済ませて、鞄の中にそっと手を入れる。

今日の一通目。


朝の国南の泉通り五番地の三

サリー・フラン様


飾り気のない茶封筒に鉛筆で書いた宛名だった。

字はなんだかふやけたように見える。

泣いていたのかもしれない。


僕は真っ直ぐに南の泉通りに向かった。

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