エゴ

 地元まで一緒に帰った。初詣も一緒に行った。新年になった瞬間、周りから見えないようにこっそりと手をつなぎ合った。おみくじを引いたら、二人とも大吉でうれしくて大笑いした。こんなに楽しい冬休みは今までなかった。


「六日に戻る?」

 佐野は意外そうな顔で恩田を見た。地元の駅前のコーヒーショップで二人は向かい合って座っていた。分厚い雲の隙間から差し込む日の光が、かろうじて店内の窓際の席には届いている。恩田は口にした紙カップを置いてうなずいた。

「三箇日までしかいないつもりだったんですけど…親がどうしてもいろってうるさいんで」

「親戚とか集まったら色々あるからな。いいよ、六日にしよう。駅に十二時でいいよな」

「え……」

「まさか、この期に及んで俺に一人で寮に戻れとか言うつもり?」

「……いいんですか」

「だいたい、行きは一緒に来たじゃん」

「そうですね」

 ふっと笑いがもれる。佐野は腕時計を見るとさっとコートを羽織り、コーヒーの紙カップを手に立ち上がった。その洗練された動作一つで周囲に座る女性たちの視線を集めている。ここに座っているときからずっとそうだったけれど、彼が店を出る気配にまたひときわ視線が集中していた。本人は気にも留めない。

「じゃ、今日はそろそろ帰る。俺も親戚のお相手しなくちゃな」

「あ、」

「いーって。いちいち立つな。また夜電話するから」

はい、と小さく手を挙げて返事をする。その傍をすり抜けて颯爽と歩く後ろ姿を恩田はもう一度振り向いて見やった。一人になると、途端に周りの声や音が耳に戻ってくるのが不思議だった。



 クリスマスイヴに佐野へ告白し、驚くことに彼と付き合うことになった。もちろんそうなりたくて告白した恩田だったけれど、まさか本当に成就すると思っておらず、しばらくは驚きから抜け出せなかった。

 その後は毎日のようにメールをし、年末年始の帰省も予定を合わせて一緒に電車に乗ったのだった。同じ中学出身である恩田と佐野は学区が同じで、家が一駅分しか離れていない。それはもちろんわかってはいたけれど、まさか一緒に地元に帰れるとは思ってもみなかった。それから二人で新年を迎えて……希望するよりも先に色々な望みはもう叶っていて、むしろ恐縮するほどだった。

 告白したその日に、キスされたし。

 思い出すと頬が熱くなる。恋人になってからわかったことだが、恋愛面でも佐野は恩田が勝手に想像するよりずっとサバサバしていて、それでいて愛情表現も直接的だった。情熱的というわけではなく、ごく当たり前のように触れてくる。

 今も去り際に頬を撫でていったり。

 慣れないといけないと思いながら、未だ慣れることができない恩田だった。


 携帯電話がメールの着信を知らせてきた。甲斐からだ。

『先輩との一夜はどうだった?(笑)』

「……また面白がってんな、あいつ」

 一夜というのは、大晦日の夜のことで、恩田は佐野と初詣に神社へ行っていた。わざと揶揄してそう言ったのだろう。下手に反応して相手を助長させたくなかったので、『超よかった。二人とも大吉でした』と返信する。

 携帯電話を手にしたまま、大きく息をついた。

 塚原、どうしてるかな。

 何気なくそう考える。佐野といるときは奥にしまい込まれていた記憶が、あっさり蓋を開けて脳裏にひらめく。風呂で、裸で、隣で彼と一緒に湯につかったときの記憶。


 誰かが溺れていると思ったらそれは塚原で、そういえば二人きりで話すのは何日かぶりだった。拗ねた顔、尖らせた唇が相変わらずで。説教のような話もしたくなかったし、できなかった。こんなに緩んだ顔では。

 けれど次には佐野と付き合い始めたことを言い当てられ、動揺してしまった。いつの間に知ったのか。そういう話は彼にしたくなかった。甲斐に何を言われようが、したくないものはしたくないのだ。とは言うものの一方で、五組の寮生が塚原に告白したという話も恩田は耳にしている。塚原はきちんと断ったらしく、それ以上の話はない。それを聞いても、塚原へ早めにその手の話をしておけばよかったとは思わなかった。彼が寮内で恋愛対象としてそこそこ人気があって、付き合いたいと思っている男がいるなんて。

 あのときは自分がいるから、自分がわかっていればいいと思っていた。彼が何かに巻き込まれそうになったり、理不尽な思いを押しつけられようとするなら自分が守ればいいと。けれど、今はそういうわけにもいかない。

 わかっている。それでも聞かせたくない。


 塚原が湯から上がったときの、彼の上気した身体が目に焼きついている。赤くなったうなじと背中、尻、しなやかな手足。彼がのぼせているようだったから、呼び止めた。ふらついたから、腕を掴んで支えたのだ。そこに理由があったから、恩田はそうした。

 本当にそれだけだったと言えるのか。

 恩田はすぐに自分に裏切られた。彼の腕を掴んで彼と目が合った途端、恩田の脳裏で、塚原は湯船に引き倒され、恩田は彼の身体を抱えて湯船の縁に縫い止めていた。派手に水しぶきが上がって、彼が驚く声を上げる前にその口を自分の口でふさぎながら、彼の身体の感触を確かめる。髪、頬、首、胸、腹、その下――

 次に彼がうん、と言ったとき、そうしてもいい、という了解と錯覚しそうになった。

 ――のぼせてるのは俺だ。

 その証拠に、手を離すと塚原はもう脱衣所へ歩き始めていた。



 いけない。

 恩田は頭を振って情景を追い出した。高鳴りだす心臓を押さえ、気を取り直してカフェオレを口にする。こういうことを考えるのは彼を汚す行為も同じだ。当の本人と顔を合わせられなくなる。いや、何よりもそれ以上に、恋を叶えた自分が他の男のことを考えるなんて不誠実に過ぎる。

 馬鹿か俺は。何考えてんだ。

 五組の男のときは塚原が交際を断ってそれで終わったけれど、今後また誰かが彼に告白しないとも限らない。さすがに強引に迫ったりする男はいないだろうけれど、それも確信があるわけでもない。例えば思い詰めた誰かが必死になって「お願い」したときに、彼はそれでもきっぱり断れるのだろうか。

 ――お願いだから、一度だけでいいから……

 ありもしない誰かの声が脳裏に響く。考えるだけで不快だった。恩田はまた頭を振る。少なくとも彼にはそういう感情への嫌悪感があるはずだから、一も二もなく断るだろう――

「……いや、そうでもないか」

 ――そうだとしてもそうじゃなくても、俺恩田好きだし。別に気にしない。

 いつかの彼の言葉。甲斐や恩田のこともあったせいか、瞬間的に拒絶反応が出るほどではないようでもある。


 やっぱりきちんと伝えておかないといけないか。恩田は考えを改めた。

 知ってるのに本人には言いたくないなんて俺のエゴだ。何かあったらどうするんだ。塚原に何かあったら。

 そう考えるうちに、それが風呂で見た彼の身体や脳裏にひらめいた妄想と結びついて、浅ましいほど鮮明に最悪の場面を想像してしまう。

 泣いて抵抗する彼を無理矢理――

 背筋に小さな痺れが駆け上った。こんなにも簡単にあからさまな想像ができてしまうのは、まぎれもなくあのとき恩田が彼に欲情していたからだった。

 ぬるくなったカフェオレをぐっとあおって、ため息をついた。


 また携帯電話が音を立てる。甲斐からの返信だ。

『大吉(笑)やらし〜(笑)あ、俺明日には寮に帰るから』

なにが「やらし〜(笑)」のか。意味がわからない。

『はいはい。部屋の空気入れ替えといて』

『お土産買ってくるね! ご当地プリッツとかどう?』

『俺とお前って同じ地元だった気がするんだけどな』



 六日の昼過ぎには佐野と一緒に電車に乗り、寮に戻った。寮母さんに挨拶し、佐野とは夕飯を一緒に食べることを約束して、自分の部屋へ向かった。男同士で付き合っている生徒であっても、寮内ではあからさまにいちゃついたりはしない。なぜかわからないけれど、これは最低限の節度、暗黙の了解というもののようだった。消灯後はまた違うかもしれないけれど。


 部屋には甲斐はいなかった。荷解きをして、とりあえずベッドに転がる。

 さて、恩田はもうひとつ考えなくてはいけないことがある。甲斐のことだ。正確に言えば、夜に甲斐の恋人がやってくることだ。期末テストが終わり、冬休み終了後は通常の授業に戻るとはいえ、相手は三年生。受験間近だ。センター試験ならあと二週間といったところだろう。その後は怒濤のように私立大入試、国公立大前期試験、後期試験と続く。いくつ併願するか知らないけれど、今後はもうあまりこちらにやってくる頻度は少なくなると思える。ただ、まったくのゼロというわけではないだろうから、やっぱり避難先は確保しなければならない。

 塚原の顔が浮かぶ。

 あいつのとこに行けたら一番いいんだけどさ。

 いいわけがない。佐野と付き合っている今となっては、夜部屋を訪ねるだけでアウトだ。わかりきっていることを性懲りもなく考える自分に呆れる。

 佐野に頼もうかとも思ったけれど、彼と同室の先輩とはまったく面識がなく、甲斐の本当の事情を話さずに頼みを聞いてもらえるかどうか自信がなかった。佐野自身はきっとすぐに了承してくれると思うが、部屋は彼一人のものではないのだから。さらに自分が迷惑をかけることで同室の先輩が佐野のことを悪く思うことになるとまずい。

 同じクラスで仲がいいやつにこっそり頼んでみるか、とやっぱり最初の考えに行き着いた。もちろん甲斐の事情は言わないでおく。


 どうして塚原には甲斐の事情まで正直に話したのかと聞かれたら、咄嗟に口にしてしまった、としか言いようがない。部屋を抜け出したのも初めてで路頭に迷っているような気分だったし、塚原には「甲斐への怒りがわく前に抜け出した」とは言ったものの、怒りとしてできあがる前の感情は確かに心のうちに存在していたのだ。自分の状況に同情してもらいたかったのかもしれなかった。彼がああいった素直な男で、結果的にはよかったということになる。


 明日は始業式だから、ほとんどの生徒は寮に戻っていることだろう。早速恩田は、クラスメイトの部屋へ向かおうと、部屋を出た。

 そこでラウンジ方向から廊下を歩いてやってくる塚原が見えた。どきりとする。コーヒーショップで一人浅ましい妄想をしてしまったことを思い出して、咄嗟に声をかけられなかった。すると、彼の方から声をかけられた。

「恩田じゃん。おかえり」

 笑って挨拶をしてくれる。――いや、したつもりなのだろう。驚いた。見たこともないようなぎこちない笑顔だった。ただいま、と言えなかった。

「お前、何かあったか?」

 思ったより鋭い口調になっていたらしい。塚原はひどく驚いて、目を大きくしたまま首を振った。たった今思い出した勝手な妄想が、恩田の腕を動かした。セーターの襟を掴んで彼を引き寄せる。

「誰かに何かされたのか」

「は? 何かって何……」

恩田の剣幕に塚原は気圧されて眉を下げている。

「何もないのかって」

「……何もないけど」

彼らしくない弱々しい声にますます不信が募る。視線を合わせたが、塚原はすぐに目を伏せた。


「なーにやってんの、恩田」

 聞き慣れたのんびりとした声は、甲斐だった。塚原と一緒にラウンジにでもいたのかもしれない。恩田は我に返って手を離す。塚原が、ほっとしたように息をついたのがわかった。

「塚原くんいじめたら許さないよー」

「いじめてない。その逆だって」

「その逆って?」

指を振って今出たばかりのドアを示す。

「ちょうどいいや。塚原、話があるからちょっと来て」

有無を言わさぬ恩田の様子に、まばたきを繰り返した後塚原がうなずく。「うわ、こっわ」と大げさに肩をすくめる甲斐もついてくる。


 先月仲良く勉強会をした、小さなテーブルの同じ位置に三人で座った。ドアが閉まる音が大きく響く。塚原は何事かと恩田を窺うような視線を寄越している。甲斐の方は特に頓着する様子もなく黙っているけれど、さっきまでののんびりとした微笑はなくなっていた。数分の沈黙が重くなって、恩田はついさっきまでの自分の言動を少し後悔した。咳払いをする。

「ごめん、いきなり。……塚原に何かあったのかと思っちゃって」

「別に何もないけど、どうかしたのか」

 沈黙のうちに恩田の様子が少しずつ平静に戻るのを見て取ったのか、塚原は素直な口調で尋ねてきた。甲斐は会話に加わることなく、ただ見守っている。

「前にお前に話したろ。この寮に、男が恋愛対象だってやつがそれなりにいるって」

「うん」

「……気持ち悪いって、思うか?」

その問いに、塚原は首を振った。瞳がこれ以上ないくらい真剣だった。

「相手が男だろうと女だろうと、気持ちは同じだろ。気持ち悪いなんて思わない。俺は絶対、思わない」

 強い口調。その言葉には実感がこもっていた。恩田や甲斐の前だからと取り繕う風でもない。甲斐がおや、という顔で塚原を見た。

 もしかして、五組の男を振ったときにそういう思いが芽生えたのだろうか。

「……そっか」

いずれにしても、その真剣な瞳が好ましかった。

「だったら冷静に聞いてほしい。男が恋愛対象だってやつらの中で……その、お前のことが好きだってやつがいる」

塚原がまばたきをする。

「この好きっていうのは、付き合いたい、恋人になりたいって意味な」

「……あ」

「一人二人じゃない。具体的に何人とかわかんないけど。そこそこいる。簡単に言うと、お前……寮の中で人気があるんだよ」

「えっと」

 口を開いて何か言おうとして、彼が言葉を探していた。一気に話し過ぎたか。きっと混乱させているだろう。恩田は一旦言葉を切って、塚原を見つめた。

 えっと、とまた言ってまばたきを繰り返す彼の顔が、次第に赤く染まり始める。思ってもみない反応だった。愕然とする恩田に気づかず、塚原はついにこらえきれなくなったらしく苦笑いをした。

「塚原?」

「……あの、言うのも恥ずかしいけど。えっと、もしそういう人に告白されてもちゃんと断れとか、そういう話?」

 恩田も甲斐も驚いた。ますます照れくさそうに、塚原は頭をかく。

「へ、変に期待持たせたりとか、同情で優しい顔するなとか」

「……知ってたのか」

 赤い顔のまま、彼がうなずく。まったくタイミングも考えず「そっかー」なんて言って、甲斐が塚原の隣に寄って頭を撫で回す。

「ちょっと前に、松谷に聞いた。いやほんと、俺みたいな凡人が何イケメンぶってんだって思うんだけどさ」恥ずかしー、と言って顔をしかめる。

「松谷?」

「塚原くんと同じ長距離陸上部の男だよ」

 恩田の質問に甲斐が答える。それを聞いて、以前食堂で塚原と一緒にいた長身の男を思い出した。塚原のベッドを借りた翌朝、部活のために彼を起こしに電話をかけた男。

「……なんで甲斐が」

「こないだ食堂で一緒になったんだよ。恩田が寝坊した日に」

「……ああそう」

 つーか何だよ。もう知ってたのか。

 一気に力が抜け、大きなため息がもれた。足を投げ出し、カーペットに手をついて天井を仰ぐ。そんな恩田に、塚原はおずおずといった風に声をかける。

「恩田、あの……わざわざありがとう」

 礼を言われて、こちらの方が恥ずかしくなってくる。自分が塚原をなんとかしないといけないと思うあまり、問いつめて半ば強引に部屋に連れ込んでしまった。

「いや、ごめん。いきなり引っ張り込んで」

「恩田珍しく突っ走ったなー」

 笑いながら甲斐はそう言って、座ったまま塚原の背中をとんとん、と叩いた。柔らかい声で言う。

「だから塚原くん、何かあったら俺とか松谷くんに言いなよ」

「……甲斐くん、ありがとう」

「そうそう。俺でもいいからさ」

「恩田はダメ」

口を挟んだ恩田は、甲斐のはっきりした声に否定された。

「は?」

「お前には先輩がいるでしょ」

「なんでだよ。お前にも先輩いるじゃん」

意地悪い顔で言ってきた彼がちょっと憎らしく、すかさず恩田は言葉を返した。

「俺は塚原くんのファンだからいいの!」

「え、ファンって何」

塚原が甲斐の言葉に冷静に突っ込んだ。



「あんまり塚原くんに構ってると、先輩に捨てられるよー」

 塚原が自分の部屋へ帰っていった後。甲斐はご当地限定プリッツ(本当に自分で買ったらしい)をつまみながら言った。口調は軽いけれど、結構真面目に言っているのが恩田にはわかる。

「わかってるよ」

「これからは塚原くんのことは俺と松谷くんにまかせて、ちゃんと佐野先輩一筋にしてさ。ずっと好きだった先輩でしょ」

「はいはい」

 わかっている。自覚している。それでも不自由だな、と恩田は思った。彼を案じているのに、それを心の中で思うしかないなんて。それが当たり前なのだとわかっているけれど。


 ――恩田じゃん。おかえり。

 塚原の声がよみがえる。心のうちでひっかかっていたものに気づいたのはそのときだ。

 その笑顔がぎこちなかったのだ。何かあったのかという問いかけに不自然なほど驚いた表情を見せた。それを見たから、恩田は彼が誰かに嫌な目に遭わされたのではないかと疑ったのだ。けれど、彼は自分の寮内での評判をわかっているという。同じ忠告をもう聞いたという。であれば、あの反応には別の原因があるということだ。

 ――何もないけど。

 そう言った彼を思い出してみればいい。珍しく声が弱まって、自分から目をそらしたじゃないか。


 携帯電話がメールの着信を知らせてきて、恩田の思考を止めた。

『今度は地元じゃなくて、どっか旅行いこ』

佐野だった。甲斐がこちらに視線を向けたのがわかった。

 佐野先輩一筋。中学の頃から数えてもう二年になる。二年前の自分が今の自分を見たら、あまりのうれしさに卒倒するかもしれない。彼の名を知ったとき既に彼は有名人で、女も男も、彼を知る誰もが彼に惹かれていた。彼の姿を見たとき、恩田もまた彼に惹かれ、それだけでは済まず恋に落ちた。初めて彼と言葉を交わしたとき、緊張のあまり声が出なかった。委員会の活動を通じて仲良くなり、並んで家に帰った日、彼の気安い笑顔に縮まった距離を感じて叫び出したいほどうれしくなった。

『行きたいです! けど、バイトしなきゃ』

 そのくせ今の自分ときたら。ただの友達、しかも男が恋愛対象だというわけでもないどこまでもノーマルなただの友達を案じて一喜一憂している。二年前の自分なら今の自分を蹴り飛ばしていることだろう。どこ見てんだ、とか言って。

 甲斐の言うことはわかっている。それなら、そうすればいい。

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