第7話 団員達は仲が良い

 新人が入ってすぐのこと。新人と少年でこのような会話があった。


「おう小僧。これ、本当にベレット傭兵団の集まりなのか?」


 少年は長身な男に声を掛けられた。因みに、長身な男が新入りなのだ。この時、新入りの情報は他の団員には伝わっていなかったのだ。


「傭兵団? 違うよ。リーダーの名前をとってベレッタ旅団って名乗ってる」

「これで全員なのか? 鉄壁の鋼騎士や破壊魔女、影無の二つ名を持ってるやつは?」

「? 何の話? 僕はジャック。ここではシャドウゼロってあだ名で呼ばれてるよ。貴方達は?」


 会話を聞いた新人三人は、勘違いしていたことに気が付いた。

 新人達は、ベレット傭兵団という名前を聞きつけて追いかけてきたものだ。ベレット傭兵団は、問題が起こればどこの騎士団よりも早く駆けつけ、風のように去っていく。少数精鋭で、半数以上が二つ名持ち。武勇も多く持っている。そんな噂があった。


 しかしここの団員は皆、子供ばかり。団員達は殆どがあだ名で呼び合う無邪気な関係。資金繰りも、魔物退治に限らず何でも屋や内職みたいなことをしていた。


 新人達は実態を知るや、すぐに脱退したのだ。

 しかし、一人だけ新人が残った。戦士のような戦い方をする男だった。長身の戦士の男は、リーダーよりも年上であった。戦士の男は、リーダーに成り代わろうと考えたのだ。その際に、憧れのシャドウゼロの名を騙ったのだ。

 因みにシャドウゼロ、影無という存在は、正体不明の副団長という認識が世間ではあったのだ。それも丁度都合が良かったのだ。



 食事の時。団らんの時間だ。


「シャドウ戦士はどこ行った?」「でくのシャドウは街に豪遊しに行った」「あいつの配当金はいくら? ねえシャドウ?」


 皆は言いたい放題だ。

 さておき。少年は魔法の鞄から用意していたプレゼントを取り出していた。


「少し遅れたけど、新年際プレゼントだよ。戦士のシャドウには用意できなくて。黙っててね」「うしゃきた!」「綺麗なヘアバンド。カチューシャ? これも魔法道具なのよね!」「薄衣。ケープ? 向こう側が透けて見える。これつけて戦いに行きたくないな」「この胸当て、かっこ良すぎる」


 プレゼントを配り終え、一通りファッションショーが終わるや、愚痴や不満が始まった。


「団長! 団長の存在意義がない! いつまでもシャドウにおんぶに抱っこじゃ!  それに戦士のゼロがでしゃばってヤダ!」「シャドウもダメダメだよ。シャドウったら、買い出しに猫追っかけてはぐれちゃうんだから!」「8歳と26歳。どっちが上かわかんねえぞおい。しっかりしろよ最年長」「面目無いよう」


「シャドウ。何でいきなり魔法使えるようになったの?」「もともと使えるよ。封印してたんだ」「シャドウがつけてるこのネックレス。魔力の増幅機?」「変換機。質を変えちゃうの」「ねえシャドウ! 旅のお話聞かせてよ」


 楽しい会話に、長身の戦士の男が戻ってきた。


「ゼロが戻ってきた!」

「うし。おやすみ」「おやすみ」「ニンジャー。後片付け当番よろよろ」「侵入妨害、気配察知の魔道具設置してくるね」「ミシェルは私と寝ましょうか」「ヤダ。寝相が酷いもの。レイチェと寝るもん」「」「俺、風呂入ってねーのに! 灯りの道具貸してくれ」「お前ら、ジャックさんの魔法道具の有り難み、マジで理解してないな」

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