部活をしよう、炎の東京遠足編

第17話 部活をどうしよう?

瀬戸内海に浮かぶ小さな島、桃ノ島。

小さいといっても、具体的には福井県と同じくらい。


大分、山口、愛媛のやや真ん中に位置しており行政区分は愛媛県。

大昔は沢山あった鬼の居住地、いわゆる鬼ヶ島と呼ばれる島の一つで

平安から明治の頃までガチで鬼と人とが争っていた島である。


自治体名は『桃ノ島市』桃太郎伝説で有名で、桃太郎の子孫が

島の東西南北に現在も『桃太郎四家』として存在している。


現在では、鬼も人もそれ以外も普通に暮らしているのが幸いだ。


そんな島にある、国立ヒーロー学園高等部桃ノ島分校。


その中の1年A組では、部活をどうしようかという話題で持ちきりであった。

桃ノ島分校は新設されたばかりで1年生しかいない、自分達で部活を作れる

と各々好き勝手に頑張っている。


「・・・・・・部活か、デュエル部とかはどうだ?」

こまは、携帯ゲームをしつつ妖怪ファイト以外にも、フューチャーガードやら

のデッキを机に並べている。


「妖怪ファイトのデッキはともかく、あんたは学校に何もってきてんのよ!!」

そんな、こまに綺麗な形で片羽締めを極めている川原春子ことかぱ子。

彼女は小柄な見かけによらず、相撲と柔術の腕が立ち地味に強い。


こまがタップしたので技を解く。

デュエリストで格闘巫女でと忙しいらいい。


「私は、皆さんとグルメ愛好会なんか作りたいですわ♪」

アイリーンは食いしん坊万歳だ、女友達と食事に行ってあまりの健啖ぶりにドン引きと食べても太らない事に嫉妬の炎を燃やされている。


「・・・・・・皆は良いよな、俺なんか存在自体が暑苦しい!!って拒否だぜ!!」

文字通り元気な炎の男は、何故か元気が無かった。

彼は火や熱を生み出し操れるが、感情が昂ぶったりすると自動的に放熱や発火

に溶解と周囲に迷惑がられているようで力の行き場所が戦い以外に無い。


テニスをやってラケットやコートを焼き尽くしかけて反省文地獄明けらしい。


「俺は、家の仕事がな。」

進太郎は、学生だが魔界の皇太子としての公務がある。

家に帰れば皇族の捺印が必要な物のみの書類仕事に催し物への出席などがある。


そんな具合に問題児たちは、部活の波に乗れていなかった。

というか、あぶれていた。


その一方で、波に乗った面子はというと

「くそ、スイーツ研究会の申請が断たれた!!」

と嘆くのは食べた糖分をエネルギーに代えて戦う超人‘‘甘味マン,,こと

佐藤主我さとうしゅが君や「校長の審査が厳しすぎる!!」と嘆く岸里徹きしりとおる君といったクラスのスイーツ男子グループ。


「和菓子同好会も駄目だったわ、何よあのアメリカハゲ!!」

感情を爆発させて、周囲に次々と饅頭や羊羹や団子を虚空から生み出すのは

道明寺桜どうみょうじさくらさんという和風な魔法少女。


ツインテールが特徴の美少女で外見も性格も男女どちらからも好かれるクラスの

アイドルでスイーツ男子グループのお姫様である。


「桜ちゃんのお菓子、美味しいですのにね~♪」

アイリーンが桜の出した和菓子をこれ幸いとパクパク食べている。


学園に沸いた部活ブームに対して個性が突き抜けた生徒どもに好き勝手やらせるのは危険だと判断した学校側は校長の面前でのプレゼンに受かった物だけを公式の部活と認定し予算と支援を行うことにしたらしい。


付き合わされる校長には、ざまあみろとしか思えない。


クラスの女子達が桜を宥めつつ菓子を食っては美味しいと褒めてあやしてる。

「校長の基準は、大会があって実績が手に入る物やわかり易いもの。後は校長の趣味に合いそうな物っぽいわねアメリカの人は大味だわ。」


現在クラスで唯一校長の審査に勝ち学級新聞部を成立させた勝ち組、お下げに眼鏡な車文子くるまふみこさんが皆の羨望と怨嗟交じりの視線に動じず話す。


「車は堂々としてるよな、流石は中学からの新聞部。」

同じ中学らしい元気がぼやく。


「そういう風に見える人程、内面は繊細なんじゃないの?」

進太郎が元気に聞いてみる。


「・・・・・・ヘル、そういう風に見ていると女にだまされるぞ?」

彼女がいないはずの元気に呆れられて凹む進太郎。


「・・・・・・皆で、楽しめる部活がいい。」

こまのつぶやきはもっともだった。






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