第12話 龍玄
目の中に入れても痛くない孫の一人。
次男坊龍之介のところに生まれた女の子。
アメリカに行かせ、経営学修士(MBA)を取らせている時に、ホームステイ先の娘クリスティとの間に生まれた孫。
ハーフの少女は美しく聡明に育ってくれた・・と思った矢先。
高校卒業の日に駆け落ちするとは。
ショックだった。
すべてが許せず、勘当を言い渡した。
可愛さ余って憎さがます・・だ。
しかし、それも10年以上も経つ頃には心配に変わる。
すぐ、泣きついてくる・・と思っていたのに。
頑固で負けず嫌いの私の孫らしい・・
秘書の剣山にそれとなく、身辺調査を依頼して見守ってきたつもりだ。
駆け落ちした男とはすぐ切れたらしい。
しかも、子供を一人で育てているとは・・不憫だが。
孫の成長を見守ることも親の務め。
手を出すばかりが大事なのではない。
自立してどう生きるのかが大切な事である。
高校卒業だけでは、世の中で通用しない。
容姿を生かして、夜の商売とは・・情けないとは思ったが、本人の意思だ。
どこで、私や親を頼るのか・・気にしているが口出しはしない。
そうこうしているうちに・・なかなか根を上げない娘だと思うが。
子供が中学生になった。
頭の良い子らしく、学年でトップ。
しかも、孫に似て容姿端麗で明るく健やかに育っている。
周りの男どもの目が最近心配である。
中学2年の夏のある日、ひ孫の葉月が家を出て、龍之介の屋敷に戻った。
龍之介からの挨拶はない。
葉月が雑誌に載った。
どうも、裏で美咲が動いているようだ。
龍之介が美咲に文句を言ったらしいが、言う事を聞く子じゃない。
雑誌は変身コーナーで、なかなか美しく撮れていて嬉しい。
剣山に買ってきてもらった。
どうも、葉月も活発な子らしくて次にびっくりさせられたのは、痴漢撃退報道だ。
しかし、今は名門中学の美少女で話題であるが・・
素性などに興味を持たれると、恵子の話も出てくるだろう。
ここは、時間で動く必要がありそうだ。
剣山を呼んで、恵子のことなど全ての手配を頼んだ。
龍之介の屋敷で、親子の2世帯生活を許す。
そして、ひ孫の葉月との会食。
久々に恵子と話もしよう。
今後の百合崎での生活を話し合う時がきたようだ。
孫やひ孫に会うことを楽しみにする龍玄であった。
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