第10話 ストーカー

どうも恐れていた事態が・・

誰かにつけられている気がする。

ちょっとした時に視線を感じる。

おじいちゃんに相談しよう。

「どうもストーカーにつけられている気がするの。」

「葉月の雑誌が出たからなぁ。」

おじいちゃんはすぐ手配をしてくれた。

「世の中は物騒だから、気をつけ過ぎる事はない」

「しばらく、学校は車で送り迎えしよう」

と言うことで、しばらくは不自由だが車で移動する事になった。

「合気道も大会が近いし、稽古もある。迷惑かけますが車の送り迎えよろしくお願いします。」

祖父が選んでくれた運転手の町田さんに挨拶をした。

町田さんは優しい顔をしたおじさんだ。

「ストーカーなんて怖いよねぇ。大丈夫、僕がしっかり見張ってるから。」

「ありがとうございます」


学園に着くと早速茜達に囲まれた。

「なによ、お嬢様ぶって車で登校?」

「雑誌のモデルになると違うわよねぇ」

久々にいびれるネタを提供してしまった。

ま、仕方ない。

これも無駄に神経を使い過ぎないためだ。

合気道の試合では更なる高みを狙いたい。

目標は高いほうが燃える。

大体、飲み込みは早いほうだ。

コツさえ掴めれば・・

ま、人生はそんなには甘くないだろうけど。

勉強も楽しいし、毎日が楽しい。

高校はこのままエスカレートで、大学は修司さんと同じ早稲田の法学部。

弁護士として働きたい。

夢があるから、計画的に進もうと思える。

合気道はライフワークだ。

柔軟でありながら、鋼の意思。

理想だ。


授業が終わって、校門のところに行くと町田さんがまだ来ていなかった。

少し待っている所を後ろから来た不審者が抱きつこうとした。

咄嗟だが、そこは合気道の授業でも習っている。

体が自然に動いて、相手を叩き落としていた。

手を後ろでに捻って、動けないようにした。

落ち着いてみれば、やはりあのバカなやつだった。

名前すら覚えていない。下卑た笑いで誤魔化しているつもりか?

「何のようでしょうか?」

「冷たいなぁ。僕のこと覚えているでしょ?」

「さぁ、一向に覚えておりませんが」

男は、ちょっと怯んだように・・

「葉月ちゃんだよね?」

「・・」

「君の事、探したんだよ。雑誌を見てここの生徒だと分かったからさ」

「だから何の事でしょうか?」

「このまま、痴漢行為で警察に突き出しましょうか?」

「そんな事言って、良いの?」

「何がですか?」

「ほら・・友達に知られたら困るでしょ?」

「困るのは貴方ですよ!中学生に・・犯罪を告白しますか?」

「それで良いなら、このまま警察に通報します」

そこへ、町田さんが走ってきた。

「遅くなりました。・・で、そいつ何したんですか?」

「この人、後ろから痴漢しようとしたんです。」

町田さんは、そのまま警察に電話をかけてくれた。

「すいません。出来心なんで、許してくれませんか?」

バカは上目遣いに懇願した。

「はぁ、何言ってるのよ。あんた」

「女子中学生の背後から・・って許される訳ないでしょ!」

「未遂ですし・・」

「そう言う問題じゃないよ!」

「言い訳は警察でしなさいよ」

葉月は最初、面倒くさいので放しても良いか・・と思っていたのだが・・

こう言うバカは一度本当に痛い目をみないと反省しない。

ここで助けられたら、また良い様に解釈して襲おうと考えるだろう。

それは、無意味だ。

警察にストーカーと痴漢行為の訴えをする方が、こいつの為にも良いと判断していた。

世の中の女性がみな、泣き寝入りする・・と思うなよ!

「やはり攻撃は最大の防御だ。」

合気道の修練にますます闘志を燃やす葉月であった。


名門中学生・・お手柄。

可愛い女子中学生が背後から来た痴漢を撃破した・・とニュースになってしまった。

世の中、以外に平和なのかな?

大したことではないけど、学園の校門だっただけに生徒の目撃も多かった。

取材陣が殺到した。

名門と言われる白百合学園で捕り物帳をしたのが、雑誌でも話題になった美少女。

これは、事件です。

そして、快挙です。

面白可笑しく放送されてしまった。

これには、学園長もどうにもできない。

唯一、美咲ちゃんだけは大笑い。

手を叩いて喜んでいた・・らしい。


葉月は大人しく目立たないよう気をつけているのに・・

世間の注目を集めてしまうのはなぜか・・

町田さんたら、嬉しそうに葉月の武勇伝をカメラに向かって話していた。

あーあ、おじいちゃんに怒られなければ良いけど。

まだまだ、頭が痛い葉月であった。





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