第8話 女子力

斉藤睦子は変わった。

きっかけは、葉月の「変身ショー」のお陰。

その時、たまたま雑誌に載ったことで一躍注目の的。

今までとはまったく違う世界。

根暗で、男の子とも話ができなかった。

もちろん相手にされることもない。

髪型を変える・・これだけで、世界が変わるなんて知らなかった。

男の子の視線すら心地良い。

今までなら、苛められるんじゃないか・・とビクビクして。

相手の目を見て話す事も怖くてできなかった。

今は、相手をみて余裕の笑みを浮かべることもできる。

やってみれば大したことじゃなかった。

「人は変われる!」

きっかけさえ掴めれば・・今なら分かる。

自信ができれば、お洒落する事も楽しい。

そうすると、ますますの相乗効果がある。

これが幸福の連鎖・・と言うのだろうか。

今まで、根暗で自ら負の連鎖を引き付けていたのだ。

もったいなかった。

葉月は良い友達だ。

だけど、ちょっと綺麗過ぎる。

一緒にいると、幸福を掴み難い気がした。

自分がせっかく綺麗になれたのに、実感が弱い。

葉月は空気が読める。

私が自由になりたがっていると知ると、自然に離れていった。

離れてみると、彼女の真の強さが分かる。

合理的な物の考え方。

相手に気を許し過ぎない。

白黒はっきりしていて、ブレない。

来るものは拒まず、去るものを追わず。

それでいて、嫌味がなくて気持ちが良い。

葉月の事は好きだし、感謝もしている。

だから、彼女に恥じないよう私も女子力をもっと身に付けたいと思った。


葉月には相談を持ちかける女子が多い。

口は堅いし、適切な答えが返ってくる。

時には厳しく、耳が痛いことも言われる。

でも、そこに愛がある・・そんな子だ。

だから信者のような子も沢山いるのだ。

本人の悩みはどうしているのか・・

聞いてみたいものだ。

決して、言わないだろうけど。

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