第13話断ち切る者

最上階へ着くと部屋中に邪気が充満していて、奥には仰々しい機械みたいなものがある。そしてその前に誰かが立っているのに気付いたゴードンさんが叫んだ。

「バルザック隊長!」

「驚いたよ。お前達が来たということは・・・カイルはやられたか。」

アリックがバルザックに問いかける。

「・・・バルザックさん、貴方に聞きたいことがあります。貴方は5年前、遠征中に死んだとカイルから聞いていました。それなのにこうして生きている。一体何があったんですか?」

「カイルは話さなかったのか。知りたいなら教えてやる。俺は5年前隊を十数人を率いて遠征に出た。山を越えこの塔が建っている近くまで来た俺達は1体のモンスターに出会した。そのモンスターには尾を噛む蛇の模様があった。」

尾を噛む蛇の模様?ケンドールやスケルトンにもあったあれか?

「俺達はそのモンスターを倒すために戦った。そのモンスターはとてつもなく強く俺とカイル以外、隊は壊滅してしまった。それでも俺はなんとか倒すことが出来たんだ。だがそのモンスターから邪気が放たれ俺を飲み込み俺の胸には尾を噛む蛇の模様が浮き上がった。この模様は『ウロボロス』というもので、これを宿したものは不死になる。いや、正確には死んだ場合新たな宿主に寄生しモンスターと化しまた人間を襲う。何故俺が意識を保てているかは分からないが・・・。この戦いは今まで幾度となく繰り返されてきたんだ。俺達が命懸けで戦ってきたことは全て無意味だった。ウロボロスが見せてくれた馬鹿な神同士の戦いに巻き込まれた人間やモンスターを苦しみから解き放つために、メビウスの戦いを終わらせてやる!何も無い世界に戻すため!本来の姿に戻すため!俺はメビウスの輪を断ち切り、世界を無に還そうと決めたのだ!」

「勝手なこと言ってんじゃねぇ!」

「・・・ユウヤ!?」

俺は腹が立った。自分勝手に世界を滅ぼすなんて許されないことだ。

「世界を無に還す?結局世界を滅ぼそうとしてるだけだろうが!たとえ馬鹿な神同士が始めたこの戦いが永遠に終わることがなくても、今俺たちはここで生きているんだ!それをあんたが自分勝手に壊していいはずがねぇ!」

「お前は・・・そうか。カイルが言っていた異世界人とはお前のことだな。異世界の人間がこの世界の事情に首を挟んでもらっては困るな。」

「なんだと・・・!?」

「バルザックさん、貴方は今までのウロボロスを持つモンスターと違って意識を保っているんですよね?だったらわざわざ戦わなくてもメビウスの戦いは終わるんじゃ?」

「残念だがそれはない。俺の体は一定の日数が経つとモンスターを生むようになっているんだ。つまり、俺が・・・ウロボロスが滅びぬ限り決して終わることはないんだ。だがウロボロスは滅びぬ。だから世界を無に還そうと・・・」

「だったら!俺がウロボロスを消滅させてやるよ!このクロノスの剣で!」

「・・・神の剣か。」

「こいつがなんなのか知ってるなら話は早いな。」

「つまりこの世界を救うため俺に死んでくれと?・・・はっはっはっ!!俺は戦いを終わらせるためお前達を、お前達は戦いを終わらせるため俺を殺すというのか!?結局やってることは同じだろうが!!」

「違うだろ!あんたは関係ない人達まで犠牲にしようとしてるだろ!」

「関係無くはない!街の人間は戦いをやめたやつらの子孫だ!メビウスの戦いを放棄したやつらがのうのうと生きてていいわけがない!」

全く意見が合わなかった。俺達は世界を救うためバルザックを、バルザックは世界を滅ぼすため俺達を倒す。このどちらかで世界の命運は変わる。

「・・・お互いの意見が合わないことはよく分かった。だったら、あんたの言うメビウスの輪ってやつを俺が断ち切ってやる!」

「お前達にこの世界は救えぬ!」


そして今、最終決戦が始まるー。

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