第12話黒幕
決戦の地へ向かう最中マリアさんがくれた食料を食べ仮眠をとった。ワーちゃんが着いたことを教えてくれて俺達は目を覚ました。すると、辺りは暗くなっていた。
「なんだ?真っ暗じゃねぇか。朝方出たのにずいぶんかかったんだな。」
「あそこから漂っている邪気がこの辺りを暗くしてるんじゃないかな。」
アリックが指差した方を見ると、山々に囲まれた中に塔が建っていた。
「こんなところに塔があるなんて。」
「どうやらあそこが根城らしいな。」
「ワーちゃん、降りてくれるかい?」
「ギャウ!」
塔の入口付近に降りると、禍々しい気がひしひしと伝わってきた。すると、ワーちゃんは苦しそうに唸った。
「ギャウゥゥゥ・・・。」
「ワーちゃん?」
「もしかしたらこの邪気が嫌なのかも。ワーちゃん、僕達なら大丈夫だから避難してて良いよ。ここまで送ってくれてありがとう。」
「ギャウ・・・。」
ワーちゃんはよろよろと飛んでいった。
「さぁ、入ろうぜ。油断すんなよ。何が出てくるか分かんねぇからな。」
息を飲み、扉を開けた。1階はエントランスになっていてそこには多数のモンスターがいた。
「こいつらは、スケルトンかっ!?」
「スケルトン!?」
「ゴブリンの何倍も強いやつさ。この数は少し骨が折れそうだ。」
「たとえ誰が相手でも俺達は負けないさ。」
「へっ、確かにそうだな。さっさと倒して上に行くとするか!」
いざスケルトンと戦ってみるとゴブリンと変わらない強さに感じた。そしてスケルトン達をあっという間に片付けた。
「あん?全然手応えが無かったな。」
「確かに・・・。」
俺達が強くなったのかと思ったが、気のせいだった。倒したはずのスケルトン達の崩れた骨が組合わさり1体の巨体のスケルトンと化し、額にはケンドールと同じように尾を噛む蛇の模様があった。
「ま、まじかよ。」
「こ、これは・・・。」
「姿を変える力、ケンドールと同じ力を持ってるのか。だけど、こっちにはこのクロノスの剣がある!来やがれ!」
スケルトンはカタカタと骨を鳴らしながら襲ってきた。図体の通り動きも速くなく攻撃も単調だったが、こちらの攻撃だけは全く効いていないようだった。
「くそっ!なんで平気なんだ!?」
「斬っても斬っても、再生するなんて!」
「くっ!どっかに弱点とか無いのか!?」
スケルトンは相変わらず襲ってくる。このままだとこっちが先に力尽きてしまう。しかし、攻撃を繰り返していくうちにスケルトンが頻りに頭への攻撃だけを防いでることに気付いた。
「ゴードンさん!アリック!スケルトンの膝を着かせてくれ!」
「ったく!てめぇいつも注文しやがって!」
「任せて!」
ゴードンさんとアリックの攻撃で膝を着いたスケルトンの額の真っ二つにした。するとスケルトンはバラバラに崩れ、額の模様も消えた。
「や、やった・・・。」
「まじかよ。なんで頭が弱点だって気付いたんだ?」
「頻りに頭を守ってたしもしかしたら額の模様をなんとか出来ればいけるんじゃないかと思ったんだ。」
「ユウヤの観察眼には驚かされるよ。」
「とにかくやっつけたんだ。さっさと上に行くぞ。」
2階、3階と誰も居ない部屋を上っていき4階に着くとそこには人影が。
「遅かったですね、殿下。」
「カイル!?」
「な!?カ、カイル・・・?お前死んだはずじゃ・・・。」
「なんのことだ?」
「村が襲われたあとお前は復興する準備をするって残ったじゃねぇか!そのあと村に行ったら誰も居ないうえにお前がしていたこのネックレスが落ちてたんだ!てっきり死んだと思うだろ!」
ゴードンさんはポケットからネックレスを取りだしカイルさんに投げつけた。しかしカイルさんはネックレスを払いのけた。
「私にはもうこんなものは必要ない。」
「なに?」
「私がまだ新米だった頃に平和を守ると誓いをたて買ったもの。もはや不要だ。」
「どういう意味だ!解るように言え!」
「私はあの御方と共にこの世界を無に還す。」
「お前・・・何を言って・・・。」
「何をもなにもそのままの意味さ。」
「カイル、あの御方ってのは誰のことだい?」
「まだ気づいてなかったんですか。」
「アリック、カイルは決して人の下には付こうとはしない男だ。そんな奴があの御方と呼ぶやつって言えば一人しかいないだろ。」
「ここまで来た褒美として教えましょう。この腐りきった世界を無に還そうとしている御方の名前は、元近衛兵隊隊長バルザック様だ。」
「バルザックさんだって・・・?」
「カイルがここにいるのを見て薄々はそうなんじゃないかって思ったが、バルザック隊長は5年前に死んだはずだ。カイル、お前がそう言ってたじゃねぇか。」
元近衛兵隊隊長、アリックが隊長になる前に隊長だった人。前にゴードンさんが話してた・・・。深くは聞かなかったけどまさか死んでいた、いや本当は生きていた?
「それ以上はバルザック様から聞くといい。それと一つ言い忘れていたがマリア様には死んでいただいた。」
「そ、そんな・・・。」
「てめぇ・・・!」
「さて、そろそろ死んでもらおうか。ここを通すわけにはいかないのでな。」
「ふざけんじゃねぇ。俺がお前を止めてやる!」
ゴードンさんとカイルさんの剣が交わった。二人の因縁の対決とでも言えるべき雰囲気に俺もアリックも手出しが出来なかった。
「ゴードン、忘れたのか?私に一度だって勝ったことがないだろう?」
「うるせぇ!今俺が勝てばそれでいいんだよっ!!」
激しい攻防がいつまで続くのかと思ったが勝負は一瞬だった。カイルさんが払いのけたネックレスにカイルさんが踏んづけバランスを崩したのをゴードンさんは見逃さなかった。そしてゴードンさんの剣がカイルさんの体を貫いた。
「がはっ・・・。」
「悪いなカイル。俺様達はバルザック隊長を止めなきゃなんねぇ。」
「お・・・まえ・・・たちで・・・は、バルザック様・・・は、とめ・・・ら・・・れな・・・い・・・。」
ゴードンさんは黙ってカイルさんの亡骸を床に寝かせた。
「ゴードンさん・・・。」
「こいつは捨てたはずの過去の自分に負けたんだ。俺様達は平和を守るっていうこいつの誓いを叶えてやんねぇとな。」
「そう・・・ですね。」
「・・・先を急ごう。カイルがここに居たっていうことはバルザックさんの所まではすぐのはず。」
俺達は黒幕であるバルザックがいる最上階を目指した。
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