第10話呪い

そこにいたのはケンドールだった。村が襲われたとき以来見てなかったけど何故こんなところに。

「・・・ケンドール君?なんでここに?」

ケンドールは黙っている。

「おい、てめぇ!なんでここにいやがる!てめぇもジダンの手先かっ!?」

ケンドールはゆっくりと喋り始めた。

「殿下お待ちしておりました。ユウヤ、お前が来るのも待ってたぜ。」

そいうとケンドールは剣を抜いた。

「てめぇ、ジダンはどこだ!」

「ふー・・・。お呼びですよ、大臣さん。」

すると椅子の影からジダンが姿を現した。

「ジダン!そこにいやがったか!てめぇの悪行をみんなにバラしてやる!」

「ふん。なんのことかさっぱりですな。まあどのみちそれは不可能だがな。あれを見たまえ。」

ジダンが指差した方を見るとそこにはメグとアイラとバン爺そっくりの石像があった。

「こ、これは?」

「そこのお三方もそうだが街の人間、兵士達全員俺が石に変えたんだ!」

突然ケンドールの周りを禍々しい煙が渦を巻いてケンドールを包んだ。煙が晴れるとケンドールはおぞましい姿に変わり、額には尾を噛む蛇の模様が浮き上がっていた。

「なっ!?」

「一体何が!?」

「ふははははは!!この力はある御方から授かったもの。これで貴様ら全員石にしてやる・・・このゴルゴンの力でなぁ!!」

「ゴルゴンの力だと?」

「ゴルゴンの力は目を合わせた奴を石にするのさ!」

「なに!?」

「くっ!」

アリックとゴードンさんはとっさに目を腕で覆い、俺は目を瞑った。

「これじゃ戦うのはキツい・・・!」

「クソッタレ!卑怯な手使いやがって!」

「くっくっく。目を瞑ったままで戦えるのかな?」

「俺が相手になってやる。」

「ユウヤ!?」

「何言ってやがんだ!戦えるわけねぇだろ!」

「はっはっはっ!いいだろう。だが、貴様だけは簡単に殺しはしないぞ!」

ケンドールの気配を頼りに攻撃をかわした。

「ほう、よくかわしたな。なら、これならどうだ!」

今度はかわしながら剣を振るとケンドールを切り裂いた。

「なっ!?なんだと・・・くそがぁぁぁぁぁ!!」

またかわし切り裂いた。

「な、何故だ。目を瞑ったまま見えるわけが・・・。」

「目を瞑っていようが関係ない。俺は気配で、お前のすることが手に取るように分かるからな。」

剣道をやっててよかった。ふざけて目を瞑ったまま練習したりしたのが功を奏した。

「この・・・」

「えぇい!何をやっとるか!さっさと殺してしまえ!役立たずが!」

「なん・・・だと?俺はお前の手先じゃねぇ。黙ってろ!」

そう言うとケンドールはジダンを石にしてしまった。

「な!?何やって・・・。」

「俺は、あの御方の為にここにいるんだ。こんなやつの言うことなんか聞けるか。」

「あの御方?黒幕がいるのか!?」

「貴様なんぞに誰が言うか。そうだ、一つ良いことを教えてやろう。」

「いいこと?」

「王を殺した犯人さ。」

「なんだって・・・。誰が王様を・・・?」

「それは・・・俺だよ!俺が殺したのさ!」

「なんだって!?お前が・・・王様を!」

「おいこら!ケンドール!覚悟はできてんだろぉなぁ!!」

「何故君が・・・父上を・・・。」

「あの御方の命さ。あの御方はこの世界を無に還そうとしておられる。このモンスターと人間共の醜い争いを終わらせるためになぁ!その手始めとして王を殺したのさ!」

アリックはうなだれ、ゴードンさんは怒りに震えている。

「もう一つ教えてやろう。村にいた子供を覚えているか?」

「マリーのことか?」

「そいつをキングゴブリンに喰わせたのは俺の仕業さ!泣きながら喰われて滑稽だったぜ!」

ケンドールが・・・マリーを・・・?俺は我を忘れたらしく、そこから後は覚えていなかった。


「・・・い!お・・・!おい!ユウヤ!起きろ!」

「・・・あ、れ?」

ゴードンさんの声で目が覚めるとケンドールの姿は無くなっていた。

「無茶しやがって。」

「一体何が・・・。」

「ケンドールが村にいた子供を殺したと聞くと君は突然斬りかかったんだ。ケンドールは反応することも出来ずに真っ二つだったよ。そして死体は灰となって消えた。メグ達が元に戻らないところをみると恐らく、ケンドールに力を分け与えたあの御方を倒すしかないだろうね。」

「俺が・・・。」

「・・・ユウヤ、一つ約束してくれ。二度と感情的にならないと。今回はたまたま勝てたけど返り討ちにされるとも限らない。前にも言ったけど君の強さは怒りでは無いはずだ。怒りはいつか必ず己の身を滅ぼすよ。」

「ご、ごめん。約束する・・・。」

「ったく、しょうがねぇやつだな。しかし、どうするよ?ケンドールが言ってたあの御方ってのが気になるが、どこにいるか見当もつかねぇし。」

「それなら大丈夫だよ。確証はないけど、あの風景が見えたときそれらしい場所があったからね。そこに行ってみよう。」

「場所はどこだよ?」

「山を二つ越えた山々に囲まれてる場所さ。そこに神殿らしきものがある。」

「山を二つ越えた山々に囲まれた場所って・・・それ行けるの?」

「確証はなくても行く価値はあるが行く術がねぇ・・・。」

「・・・いったんおばあ様のところへ戻って相談してみよう。」

「・・・とりあえずそうするか。」

俺達はマリアさんの家に戻ることにした。メグ、アイラ、バン爺、街のみんな、兵士達、俺達が必ず元に戻すからそれまで待っていてくれ。


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