第9話潜入

疲れきっていた俺達は昼過ぎまでぐっすり眠った。

「いつまで寝てるんだい!いい加減起きな!」

マリアさんの声に驚き、3人とも飛び起きた。

「いきなりでかい声出すんじゃねぇよ!びっくりするだろぉが!」

「ゆっくり休みなとは言ったけど、昼過ぎまで寝てんじゃないよ!これから世界を救おうってやつがシャキッとしないでどうすんだい!」

世界を救う・・・。この世界に来たときはまさかこんなことになるなんて思わなかったな。当たり前だけど。俺達は用意されていたご飯を食べ、出発の準備をした。

「今から歩いていけば夕暮れ時には着くさね。」

「おう。じゃ、世話になったな婆さん。」

「おばあ様、全てが片付いたら是非城へ戻ってきてくださいね。」

「よしとくれ。私はここの生活が気に入ってるんだ。戻る気はないよ。それにワーちゃんもいるしね。」

「お世話になりました。」

「ユウヤ、あんたは元の世界に戻れるといいね。」

「・・・はい。」

マリアさんとワーちゃんに別れを告げ平原の端にある高台を目指した。


「さて、ペースは大分早かったな。明るいうちに入り口を探しておこうぜ。」

高台に到着した俺達は隠し通路の入り口を探した。

「お、ここだな。暗くなってきたし早速行こうぜ。松明忘れんなよ。」

俺達は隠し通路を進んだ。隠し通路は長い一本道で特に何かあるわけではなくすんなりと城の地下へ着いた。

「よし、まずは剣を探そう。たぶんすぐに見つかると思うけど。」

アリックの言うとおり剣はすぐに見つかった。

「突き刺さってんな。これを抜けばいいんだろ?アリック、抜いてみろよ。」

「うん。」

アリックが剣に触れた瞬間剣がまばゆい光を放った。それと同時にアリックが叫んだ。

「うわあああぁぁぁーーーーー!!!」

「お、おい!大丈夫か!?」

「はぁ・・・はぁ・・・。」

「大丈夫!?一体何が・・・?」

「み、見えた・・・。」

「見えたって?」

「おばあ様が言っていた風景が流れ込んできた・・・。」

「まじかよ・・・。やっぱり本当だったのか。それより剣は?」

アリックは剣を握ると引き抜こうとしてるがどうやら抜けないらしい。

「ぬ、抜けない・・・。」

「婆さんと一緒か。・・・俺に貸してみろ。強引に抜いてやる。」

そう言うとゴードンさんは剣に触れようとしたが弾かれてしまった。

「いっ!?ってーなぁ!なんだよ!」

「・・・この剣にはクロノス神の力が宿ってる。もしかしたらクロノスの名を持つものにしか触れないのかも。」

「クロノスの名って、アリックもマリアさんも名前を持ってないのに触れたよね?」

「クロノスという名は代々王の座に着くときに受け継がれるようになっているんだ。それに、僕もおばあ様も子孫だからね。だから触れたんだと思う。」

「触れるだけで抜けないって意味分かんねぇ!くそっ!」

「ゴードンさんが触れないんじゃ俺も触れないだろうし。」

「・・・。ユウヤも触ってみてよ。」

「え?でも・・・。」

「どうせ無理だろうけど触ってみろよ。どうせ無理だろうけどな。」

「・・・分かった。」

俺は恐る恐る剣に触った。

「・・・あれ?触れた。」

「は!?なんでだ!」

「ユウヤ、抜いてみて。」

「う、うん。」

俺は剣を握ると、あっさり抜けた。

「ぬ、抜けた・・・。」

「は!?」

「多分だけど、ユウヤはこの世界の人間じゃないから神の力に干渉されなかったのかもしれない。」

「そんなことあんのか・・・?つーか、触れたんならユウヤも見えたのか?」

「い、いや。それは全然。」

「見えるのは王族だけ・・・みたいだね。」

「まぁいい!抜けたんなら結果オーライだ!ユウヤしっかり持っとけよ。もしかしたらこの世界を救うのはお前かもしれねぇからな。」

「は、はい。」

まさか俺が世界を救うのか?ここまで来たんならやるしかない・・・のか。俺は動揺するのと同時に武者震いをした。

「・・・こんな状況なのになんでわくわくしてんだ俺。」

「?何か言った?」

「ううん。先を急ごう。兵士達に見つからないようにしないとね。」

「そうだね。行こう。」

1階に着くと不気味なほど静寂が漂っていた。

「兵士が1人もいないなんて・・・。」

「嫌な予感しかしねぇな。」

「どこに行ってみようか?」

「メグも心配だけどここからなら謁見の間が近い。兵士がいないとはいえ注意していこう。」

謁見の間の前まで来た俺達は中を覗いた。

「ん?誰か居るな。」

「どうする?」

「相手は一人みたいだね。」

「1対3ならなんとかなるだろ。突っ込むぞ。」

俺達は覚悟を決め剣を構えた。目で合図を交わし踏み込んだ。

「・・・!?お前は!?なんでここに!?」






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