第7話厄介な奴
目を覚ますと辺りはまだ暗かったが、ゴードンさんがすでに山を登る準備を始めていた。
「おう。目ぇ覚めたか。」
「おはようございます。・・・アリックは?」
「あいつなら顔洗いに行ったよ。おめぇも顔洗ってシャキッとしてこい。」
ゴードンさんが指差した方へ行くとアリックが顔を洗っていた。
「お、おはよう。」
「ユウヤ・・・。おはよう。昨日はありがとう。ごめんね。」
「気にすんな。」
アリックの顔は心なしか精気を取り戻しているように見えた。
「落ち着いたらちゃんと話してくれればそれでいい。」
「うん・・・。」
ゴードンさんのところへ戻ると準備を終えていた。
「さっさと出発するぞ。」
「は、はい!」
山頂を目指して歩き始めた。
「途中まではモンスターは出ないんだが、頂上に行くには中間地点にある洞窟を通らなきゃいけないんだ。しかしそこはゴブリンの巣窟になっていてな。キングゴブリンがいなくなった今、雑魚でしかないんだが・・・」
「だが・・・?」
「ゴブリンの中にはたまに頭がいい奴がいるんだが、そいつらはてめぇで殺した兵士達とかの装備品剥ぎ取って自分の物にしやがんだ。しかも司令塔がいなくても、普通の兵士達には手がつけられねぇくらい強くてな。まぁ俺様にしてみればそれでも雑魚なんだがな!おめぇらは大丈夫だろぉが、油断はすんじゃねぇぞ。」
「はい!」
洞窟に着いた俺達は休むことなく先を急いだ。中に入ると一定間隔で松明が壁にかけられていた。
「なんで松明が?」
「多分婆さんがかけたんだろうな。」
「え!?でもゴブリンがいるんじゃ・・・。」
「婆さんは年は食ってるが、追い出されたのは5年前くらいか・・・。婆さんがいた頃は当時の近衛兵士隊長以外は俺様ですら勝てなかったくらい強かったんだ。ゴブリンくらいわけねぇだろうさ!」
「ふふ。そうだね。」
とゴードンさんとアリックは笑った。
「す、すごいですね。あれ、でも5年前って確かアリックが隊長になったんですよね?当時の隊長ってことは他に隊長がいたんですね。」
「ん・・・ああ。まぁな。」
ゴードンさんがしまったという表情を浮かべたから俺はそれ以上聞かないことにした。しばらく歩くと、少し広いところに出た。
「アリック、ユウヤ、構えとけ。」
そう言うとゴードンさんは剣を手に取った。俺は剣を構えながら辺りを見回すと何かの気配が感じ取れた。
「もしかして・・・。」
「どうやらここがゴブリンの巣穴らしいな。結構うじゃうじゃいやがる。」
「アリック、大丈夫か?」
「うん。自分の身くらい自分で守るさ。」
静けさが漂う。どうやら向こうもこちらの様子を見ているようだ。頭がいいだけあって、馬鹿みたいに突っ込んでこない辺りは、やはり普通のゴブリンとは違う。しかし徐々に間合いを詰めてきてるのが分かった。
「ふー。」
一呼吸した瞬間だった。それに合わせるかのようにゴブリン達は一斉に飛びかかってきた。
「くっ!」
なんとか攻撃を受け止めた。しかしすぐに2体目の攻撃が飛んで来た。
「うわっ!」
ギリギリでかわす。
「気ぃ付けろ!こいつらいっぱしに陣形組んでやがる!」
そう言いながらもゴードンさんは次々と倒していく。アリックもゴブリンの連携攻撃をものともせず戦っている。さすがだ。
「負けてられるかぁ!」
俺も負けじとゴブリン達を倒していった。
「はぁはぁ。つ、疲れた。」
「さすがに多かったね。」
「へ、まだまだだな!」
ゴードンさんは剣を振り回しながら笑った。どれだけ体力あるんだ、この人は。
「ゴードンさんが言ってた厄介な奴ってこいつらのことですか?」
「いや、違ぇよ。厄介な奴がいるのはこの先だ。こいつらは屁でもねぇ。」
これ以上厄介な奴がこの先にいるってのか。
「ちょ、ちょっと休みませんか?」
「しょうがねぇな。まあ、歩き通しだったしな。」
「今の戦いを見て思ったんだけど、ユウヤはキングゴブリンを倒して一皮剥けたみたいだね。」
「そ、そうか?」
「まあ、そこそこは戦えてるな。俺様と比べりゃまだまだだがな!」
それはそうだろう
「それはそうだろう。」
口に出てた。生意気だなとゴードンさんに頭を小突かれた。しばらく休んで俺達は出口を目指して再び歩き出した。少し歩くとさっきよりかなり広い場所に出た。天井もものすごく高い。
「そろそろ出口だね。」
「そして奴も居やがるな。」
「え?」
と少し高くなっているところを見ると何かが寝ていた。かなりでかい。
「こ、こいつは・・・?」
俺は後退りすると石に躓いて転んでしまった。その音で奴は目を覚ましてしまった。
「構えろ!こいつは、ワイバーンだ!!」
両手が翼の龍がこちらを睨み翼を広げた。
「ギャオオオオオォォォ!!!」
雄叫びをあげ空を舞った。と同時にこっちに向かって突進してきた。
「避けろ!」
間一髪でかわすも第2撃が飛んで来る。
「うわっ!」
「俺様が食い止める!その間に・・・!」
ワイバーンの一撃がゴードンさんにヒットした。
「がはっ!この、野郎ぉ・・・!」
「ギャオオオオオォォォ!!!」
ワイバーンがこっちを見ると再び空を舞った。
「おやめ!!」
俺がワイバーンの一撃に備え構えをとるのと同時に大きな声が洞窟内に響いた。するとワイバーンは地上に降り大人しくなった。声がした方を向くと一人のお婆さんが立っていた。
「ばばあ!」
「おばあ様!」
え!?この人がアリックのお祖母ちゃん?ていうか今ワイバーンが言うことを聞かなかったか?
「すまないねぇ。この子には来るもの全員襲うよう言ってあるんだ。たまたま様子を見に来てよかったよ。」
たまたまって、殺されかけましたが。
「たまたまって、殺されかけましたが。」
今度は声に出てた。
「細かいこと言ってんじゃないよ!小さい男だねぇ!・・・おや?見ない顔だね。新入りさんかい。」
「うん。ユウヤって言うんだ。」
「そうかい、そうかい。アリックにもようやく友達が出来たようだねぇ。」
「そんなことより婆さん、ワイバーン手懐けちまったのかよ。相変わらずすげぇばばあだな。」
「うるさいよ、ゴードン。ワーちゃんゆっくりお休み。」
そうアリックのお祖母ちゃんが言うとワイバーンはさっきまで寝ていたところに戻りまた眠りについた。ワイバーンを手懐けるなんて、すごい人だ。
「さて、立ち話もなんだ。家まで案内するよ。ついておいで。」
「おう、助かるぜ。」
「あ、ありがとうございます。」
一難去った俺達は頂上にあるアリックのお祖母ちゃんの家に案内された。
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