第6話反逆者
目が覚めるとなにやら城内が騒がしかった。窓の外を見ると訓練所の兵士達も慌ただしくしている。
「なんかあったのか?行ってみるか。」
部屋を出ると兵士達の話し声が聞こえてきた。
「陛下が殺されたって本当か!?」
「本当らしい。しかも殺したのがどうやら・・・。」
なん・・・だって?王様が殺された?そんな馬鹿な!訓練所に急いで向かった。その途中謁見の間に人だかりが出来ていた。俺は人混みを掻き分けて入っていった。すると、みんなが集まって言い争いをしていた。
「ふざけんな!アリックが陛下を殺すわけねぇだろうが!」
な!?嘘だ!アリックが王様を殺すわけない!
「な!?嘘だ!アリックが王様を殺すわけない!」
声に出てた。
「ユ、ユウヤ・・・。」
アリックはまるで真っ青な顔で俺のほうを見た。
「しかしねぇ、私が見たとき殿下が血だらけになった短剣を握っていたんだよ?誰が見たって殿下が殺したのは一目瞭然じゃないかね?」
「だからと言ってアリックが殺したとは限らねぇだろうが!」
「そうよ!兄様が父様を殺す理由がないわ!」
「それはどうだろうね?理由はいくらでも思い付きそうだがね。例えば王の座が欲しくなったとかね。」
「そんなの理由になんねぇだろう!」
ゴードンとメグが大臣と言い争っていた。
「お、おい!アリックが王様を殺したってどういうことだよ!」
「ユウヤ、いたのか!どうもこうもねぇ!ジダンがアリックが陛下を殺したって言ってやがんだ!」
「アリックがそんなことするわけねぇだろ!あんた大臣なんだろ!?なんで庇わねぇんだよ!」
「全く。これだから、どこぞの馬の骨ともわからないやつは。いいかね?私はこの目で見たんだよ?殿下が王様を殺したと思われる凶器を持っているのを。その状況を見たら間違いなく犯人は殿下なんだ。庇えるわけがないだろう。」
「くっ!アリック!お前も黙ってないでなんか言えよ!」
「ぼ、僕は・・・」
「お、おい!」
「ほら見た前。反論しないところからすると殿下が殺したんだ。衛兵!反逆者のアリックを捕らえよ!」
兵士達が謁見の間になだれ込んできた。
「くそがぁ!アリック!立て!ここはいったん逃げるぞ!」
「俺も行きます!ゴードンさん!」
「私も・・・!」
「おっと、姫様には残ってもらわねば困りますなぁ。貴女には女王として街を守ってもらわねば。」
ジダンはメグの腕を掴んだ。
「な!離して!」
「メグ!」
俺はメグを助けようとしたが、兵士達がそれを遮った。
「くそっ!」
「ユウヤ!急ぐぞ!姫さんなら大丈夫だ!殺されはしないはずだ!今は逃げることだけ考えろ!」
「ふん!この数相手に逃げられると思うな!衛兵!反逆者アリック、ゴードン、ユウヤの3名を逃がすな!」
「兄様!兄様ーーー!!」
俺達は迫り来る兵士達を殺さぬよう振り払いながら無我夢中で走った。
「なんでこんなことに・・・!」
ー・・・。
俺達はなんとか逃げきることが出来た。
「はぁはぁ・・・」
「ちっ!どうなってやがんだ!」
アリックは黙ったままだ。
「あの、バン爺の姿が見えなかったけど・・・。」
「ん?あいつは朝早くどっかに出かけちまったよ。ったく、こんな時にどこ行きやがったんだ!」
「・・・。アリック、大丈夫か・・・?」
アリックはやっぱり黙ったままだ。
「ふー・・・。アリックもこの調子だし、いつ追っ手が来るかわからねぇ。とりあえずこの先にある村へ行くか。」
「そう、ですね。」
村の方向へ歩きだすと、馬に乗った人が近付いてきた。
「!!隠れろ!」
咄嗟に茂みに隠れた。
「村にいた兵士か?」
とゴードンさんが覗き込むとそれは、
「バン爺!」
「!おっと!危ないじゃろうが!・・・ってゴードンか?何しとるんだこんなところで。」
ゴードンさんと俺は事情を話した。
「そっちでも大変なことが起こったようじゃの。」
「そっちでもって?」
「わしは村の様子を見に行ってたんだが、生き残ったはずの村人や兵士達、カイルの姿までなかったんじゃ。」
「な!?なんだって!?」
「陛下が殺されたのと、村人の行方知らず。何か関係があるかもしれんの。とりあえずわしは王都へ行って情報を集めてくる。なに、安心せい。わしは殿下が陛下を殺したなどと思っとりはせん。」
「分かったぜ、バン爺。気を付けろよ。バン爺がアリックを庇ってることが知られたら捕まりかねないからな。」
「分かっとるわ。そんなアホな真似はせん。殿下お気を確かにお持ちください。きっと真実があるはずです。それでは。」
バン爺は王都へ馬を走らせた。
「俺様たちも行くとしよう。村の様子を見てみねぇとな。」
「はい。アリック・・・行くよ。」
アリックに肩を貸し、村へ急いだ。村へ着くと静寂が漂っていた。
「本当に人っこ一人いる気配がねぇな。」
「いったいなにが・・・。」
村を歩いて回ると、ゴードンさんが歩みを止めた。
「ん?これは・・・。」
ゴードンさんが何かを拾った。
「それは?」
「こいつぁカイルがしていたネックレスだ・・・!」
「ってことは・・・まさか・・・。」
「もしかすると、俺様たちが王都に戻ったあと再びモンスターに襲われたのかもしれねぇ。」
「そ、そんな!」
「まじでどうなってやがんだ。」
黙り込むとなにやら物音がしてきた。
「この音は・・・?」
「!まずい!隠れろ!」
どうやら追っ手が来たようだ。急いで崩れた建物の影に身を潜め、息を殺した。
「どうだ!?見つけたか!?」
「いや!誰もいないようだ!」
「ちゃんと探せよ!陛下を殺したアリックとそれを庇ったゴードンとユウヤを見つけ出せ!」
やっぱり俺達は反逆者なんだな。絶対裏があるに違いない。アリックが王様を殺すわけがないんだから。
「ここにもいないようだな。仕方がない、一度戻るぞ!」
兵士達は諦めて王都への道を戻っていった。
「ふー、危なかったぜ。」
「これからどうしますか?ずっとここにいるわけにもいかないし。」
「そうだな・・・。」
考え込んでいるとようやくアリックが口を開いた。
「・・・この先の山の頂上に、おばあ様が住んでる・・・。」
おばあ様?アリックの祖母か?
「ああ。そういやそうだったな。アリックの婆ちゃんなんだが、偏屈すぎて大臣が追い出したんだっけか。まぁいい、今は頼るしかなさそうだな。」
「あー、でも確か頂上に行く途中厄介な奴がいたような・・・。」
「厄介な奴?」
「行ってみりゃ分かるさ。」
山の頂上に住んでるというアリックの祖母に頼るしかない俺達は向かうことにした。厄介な奴ってのが気になるけど・・・。
山のふもとに着いた俺達は一度仮眠をとることにした。
「いいか。敵が来る可能性がある場合火をたくときは、一度穴を掘るんだ。そうしてから火をつけて消すときに砂を被せて穴を埋めれば後が残りにくくて見つかる確率が下がるからな。」
さすが兵士。いや、今は元ってことになるのかな。
「俺が見張りをしてやるからお前たちは休め。」
「で、でもゴードンさんだって疲れてるんじゃ。」
「へ、気にすんな。一徹するくらいどうってことねぇよ。いいから黙って寝ろ。」
アリックも疲れきってるし、俺もクタクタだったからお言葉に甘えることにした。
「明日は日が上る前に出発するからな。寝坊すんじゃねぇぞ。」
「はい。」
王様は殺され、メグが捕まり、反逆者扱いされ、アリックはなにも語らない。せめて、アリックが知っていることを話してくれればいいんだけど。一晩寝ればアリックも少しは落ち着くかな?そう思いながら眠りについた。
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