第4話敵襲
昨日アリックに言われたように7時に起きた俺は、訓練所に向かうとすでに何人かの兵士が準備を始めていた。
「やあ、おはよう。ちゃんと起きれたんだね。」
アリックが笑いながら言った。
「入隊するからにはちゃんとするさ。それより、訓練にしては大層な準備だな。」
「実はこれから遠征に出掛けることになっていてね。最近どうもゴブリンの数が増えてるらしいんだ。それで調査も兼ねて近隣の村に呼び掛けをすることになってるんだ。」
「まじかよ・・・。いきなり遠征って、全然聞いてないし。」
「はは。でもユウヤなら大丈夫さ。」
「兄様ー!」
「姫様!駄目ですよー!」
騒がしいやつらがきた。
「兄様、お気を付けて。必ず帰ってきてくださいね!」
「メグ、ありがとう。もちろんさ。」
「ユウヤ!兄様にもしものことがあったら許さないからね!」
「はは。大丈夫だよ、メグ。ユウヤは強いからね。」
「そうだといいけど!それでは、兄様。私はお邪魔になるといけませんので失礼しますね。」
「待ってください!姫様ー!」
メグとアイラは走りながら去っていった。まるで嵐だな。
「まるで嵐だな。」
口に出てた。
「あはは!間違いないね!」
しまった。一応アリックの妹なのに毒づいてしまったが、アリックは笑ってくれた。
アリックと一緒に準備を進めているといつの間にか兵士が訓練所に集まっていた。ゴードンさん、カイルさん、バン爺もいる。準備を終えるとアリックは隊の先頭に立ち兵士達に激励をかけた。
「みんな!知っての通り最近ゴブリンの活動が活発になっているらしい!その調査と近隣の村へ呼び掛けをしに行く!下級モンスターとはいえ、ゴブリンだって立派なモンスターだ!決して舐めてかかることのないよう、気を引き締めるように!」
「はっ!」
兵士達は敬礼をした。アリックの話が終わるとバン爺が話しかけてきた。
「ユウヤ殿と言ったか。昨日は息子が世話になったようだの。」
「息子?」
「ああ!俺も見たぜ!昨日お前が模擬戦をしたケンドールはジジイの息子なんだ!いやー!爽快だったな!」
ゴードンさんは爆笑しながら言った。
「えぇ!?す、すいませんでした!!」
俺は全力で謝ったが
「いや、気にすることはない。あいつは少し自信過剰なところがあるのでな。一度敗けを知ったほうがあいつのためじゃて。礼を言わせてくれ。」
「い、いや、そんな!」
ゴードンさんとバン爺とは多少仲良くなれたようだ。カイルさんはなにやら他の兵士と話し込んでいるみたいだけど、ちゃんと話せるようになれれば良いなと思った。しばらくゴードンさんとバン爺と話しているとなにやら視線を感じた。後ろを振り向くとケンドールがこちらを睨むように見ていた。どうやらすっかり嫌われたらしい。まあ、別にいいけど。そうこうしているうちに出発の準備が整った。
「さあ!出発だ!」
アリックが号令をかけると、俺達近衛兵隊は王都を後にした。
何時間歩いただろうか。兵士達の歩みも遅くなってきた。
「だいぶ歩いたし暗くなる前にここにキャンプをはろう。」
アリックがそう言うと兵士達はおもむろに準備を始めた。
「あー、疲れたー!」
俺はすぐに倒れこんだ。
「いつもこんなに歩くのか?」
「まあね。でも一度もモンスターと遭遇しなかったからここまでこれたけど、変だと思わないか?」
確かに。ゴブリンの数が増えてるから遠征に出てきたのに一度も出くわしてない。むしろ、ものすごく静かだ。
「この近くに村ってあったっけ?」
「もう少し進んだところにあるけど、どうかした?」
「いや、気のせいならいいんだけど、様子を見てこようかなって思って。」
「それなら他の兵士に行かせるよ。」
アリックは手が空いてる3人の兵士に村の様子を見てくるよう頼んだ。
しばらくして夜になるとさっき村を見てくるよう頼んだ兵士が帰って来た。
「アリック様、特に異常はありませんでしたが、念のため他の2人には村に残って警備をしてもらうことにしました。」
「うん。ありがとう。」
やっぱり俺の思い過ごしかと夕食を済ませ寝床についた。どれくらい寝ただろう。外から叫び声がする。
「大変だー!た、大変だー!む、村が、ゴブリンの、大群に、襲われてる!」
なん・・・だって?嫌な予感が当たってしまった。ここまでの道中一度もモンスターと出くわさなかったのは、嵐の前の静けさというやつだった。くそ!!
「ユウヤ!起きてるかい!?」
アリックがテントに飛び込んできた。
「ああ!アリック、俺は村に行くぞ!」
「僕も行く!」
アリックと俺は馬を飛ばした。村に近づくにつれて死体の数が増えていく。
「ゴブリンめ!!」
危険なことは避けたかったはずなのに悲惨な現状をみて俺は怒りに震えた。村につくとゴブリンが溢れかえっていた。悲鳴や兵士達の雄叫びも聞こえてくる。
「手分けして逃げ遅れた人たちを村の外に逃がそう!」
「分かった!」
アリックと分かれて村人を探しながらゴブリン達を斬りまくった。崩れた家の影からすすり泣く声がする。女の子だ。
「大丈夫か!?」
「お、お母さんがぁ・・・」
女の子が指差したところをみると、崩れた家のしたじきになっている人がいた。が、すでに死んでいた。
「くっ!!・・・君、名前は?」
「・・・マリー。」
「いいかいマリー、よく聞くんだ。今から君を逃がす。残念だけど・・・今、君のお母さんを助けることは出来ない。マリーが抱いてるぬいぐるみ、名前はあるの?」
「・・・ミィちゃん。」
「そうか。マリー、君がミィちゃんを守るんだ。いいね?」
「う、うん。」
「よし。それじゃあいこう。」
彼女を抱きかかえ、村の出口へ走った。しかし、その途中で数匹のゴブリンに見つかってしまった。出口まで少し距離はあるが仕方ない。マリーを守りながら戦うには数が多すぎる。
「マリー、出口まで真っ直ぐ全力で走れ!」
「い、いやぁ・・・」
「大丈夫!すぐに追い付くから!」
マリーの背中を押し急ぐよう促した。
「来い、ゴブリン共!」
「はあ、はあ。さすがに数が多いな。村人も見当たらなくなってきた。」
「アリックー!」
「ゴードン!よかった、無事だったんだね。」
「当然だ!俺様がそう簡単にくたばるかってんだ!それより首尾はどうだ!?」
「何人かは村の外に逃がしたけど、まだゴブリンの数が多くて、村の隅々までは・・・」
「とりあえず今はそれでいいさ。それと俺様の考えが正しければ、やつもここにいる。」
「そ、そんな!ユウヤが危ない!」
「あいつも来てんのか!?下手に手出ししなきゃいいが・・・。」
「急いで探さないと!・・・!?くっ!ゴブリンがまた!!」
「今は自分の身を守ることだけ考えろ!下級モンスターとはいえ、これだけ数が多いと下手すりゃ怪我だけじゃすまねぇぞ!」
「ユウヤ、無事でいてくれ!」
「はぁ、はぁ。さすがに、キツいな・・・。」
「うわあああぁぁぁ!!」
悲鳴!?しかもそっちは!!
「マリー!!」
俺はマリーを逃がした方へ走った。するとそこにいたのはケンドールだった。
「おい!大丈夫か!」
「なっ!?ユウヤ!?なぜここに!?くっ・・・!あいつは・・・ヤバいぞ。」
ケンドールの目線を追うとそこにいたのは、馬鹿でかいゴブリンだった。
「な、なんだこいつは・・・?」
「ゴブリンのボス、キングゴブリンだ。」
ゴブリンの何倍もでかく、持ってる武器も何倍もでかかった。ふと、キングゴブリンの足下に目をやるとそこにあったのは・・・
「あ、あれは、マリーが持ってた・・・ぬいぐるみじゃ・・・。おい!ケンドール!もしかしてぬいぐるみを抱いてた女の子を見なかったか!?」
「あ、ああ・・・助けようと・・・思ったんだ・・・。でも、あいつが・・・喰っちまった・・・。」
そ、そんな・・・俺は・・・俺があのとき・・・どうして・・・俺は目の前が真っ暗になった。
「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!」
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