第3話思わぬ出会い

鉄と鉄がぶつかり合う音で目が覚めた。眠気眼を擦りながらベッドから起き上がり窓の外を見ると、どうやら城内には中庭がありそこを訓練所として使っているようだ。

「アリックもいるのか。少し顔を出してみるかな。」

そう思い扉に手をかけようとした瞬間

「だっ!?」

勢いよく開き思い切り顔面を打って床に倒れこんだ。

「なにこんなところで寝てんのよ!もう昼だってのにぐうたらし過ぎじゃない!?」

「姫様、駄目ですよ!この方はお客様なんですよ!?」

「いーじゃない、別に!お客だかなんだか知らないけど、昼間で寝てるなんて馬鹿よ!馬鹿!」

ひどい言われようだ。姫様と言われてるこいつはどうやらアリックの妹なんだろう。そしてその後ろで必死にお姫様を制してるのがきっとアリックが言っていたメイドさんか。

「とっくに起きて・・・」

俺は起き上がりながら姫様の顔を見て息が止まった。メグ・・・ミ?そう言いそうになり慌てて飲み込んだ。瓜二つとかのレベルじゃなく、安城メグミ、本人そのものだった。ここは異世界のはず。そんな訳はないと思いながらもじっと見てしまった。

「なに人の顔じっと見てんのよ!!この変態!!」

強烈なビンタでまた倒れこんだ。

「ひ、姫様!!」

姫様を押さえてくれたメイドさんを見てまた驚愕した。西野アイ、そっくりだったのだ。いや、本人そのものだ。またじっと見てしまった。

「今度はアイラにまで!このド変態!!」

強烈なビンタで意識が飛んだ。

ふと気が付くとメイドさんが介抱してくれていた。

「お目覚めですか?」

「あ、ありがとう。」

「柔な男ね!」

お前が言うな。とは言わなかった。

「えっと・・・」

「あ、私はメグ姫様のお世話をしております、アイラと申します。」

「よ、よろしく。」

名前も変に似てる。どうなってんだ。

「あんたがこんな時間まで寝てるからわざわざ起こしに来たのよ!」

「姫様にはお部屋でお待ちいただくよう申したんですが。」

「どこの馬の骨とも分からない奴にアイラだけに任せるわけにいかないじゃない!」

「はは・・・」

性格まで似てるなんて。顔が同じならそうなのかと少し可笑しくなった。

「そういえば、外で訓練みたいなことをしてたけど。」

「はい。朝の8時から12時までは中庭の訓練所の方で近衛兵隊の方々が訓練されております。」

「アリックも居たみたいだし、挨拶したいんだけど。」

「そうでしたか。ちょうどお昼休憩の時間帯なので、ご案内させて頂きますね。」

「なんであんたが兄様を呼び捨てにしてんのよ!」

「呼び捨てでいいって言われたんだよ!」

またビンタが飛んで来ると思い慌てて言った。

「それでは訓練所にご案内する前に、こちらのお洋服に着替えて下さい。今ユウヤ様が来ておられるお召し物はお洗濯させていただきますので。」

「早くその汚ならしい服は脱ぎなさいよね!」

そういうと二人は部屋の外へ出た。確かに汚ない・・・。用意された服に着替え部屋を出た。


「兄様ー!!」

訓練所の着くなりアリックを見つけたメグは飛び付いた。

「姫様!はしたないですよ!」

メグはアイラの言葉を完全に無視だ。

「やあ、メグ、アイラ。ユウヤも来てくれたんだね。昨日はよく眠れたかい?」

「ああ、おかげさまで。」

「今しがた休憩に入ったところなんだ。良かったらみんなに紹介してもいいかな?」

「あ、ああ。」

紹介されても困るんだけど、まあ別にいいか。

「みんな聞いてくれ!彼はユウヤという冒険者でかなり腕のたつ剣士だ!誰か手合わせをしてみたいものはいないか!?」

「なっ!?」

俺が何か言う前にアリックに手で口を塞がれた。

「何?あんた、怖じ気付いてんの?情けないわね!」

アリックとメグにむーむー文句を言ったが俺の抵抗は虚しく終わった。

「アリック殿下!私が手合わせ願います!」

一人の男が前に出てきた。その男の顔をみたとき再び息が止まった。

「私の名はケンドール!冒険者ユウヤ殿、手合わせ願おう!」

五十嵐ケンタに瓜二つだ。メグにアイラにケンドール、知ってる顔が3人も異世界にいるなんて。少し混乱している俺にアリックは剣を握らせた。

「模擬剣だから大丈夫。君なら勝てるよ。」

そう囁くと俺の背中を押した。歓声が沸く。さらに混乱する。

「さあ、構えたまえ!そんな生まれたての子鹿状態では私には勝てぬぞ!」

笑いが起きる。

「さっさと構えなさいよ!」

混乱するのは後回しだ。五十嵐ケンタにそっくりな奴に負けるのだけはごめんだしメグに文句を言われたくもない。一つ深呼吸し構えをとった。もちろん剣道の構えだ。

「ほう。見たことがない構えだな。それで私の剣を受けれるかな!?」

ケンドールが斬りかかってきた。が、勝負は一瞬だった。ケンドールが斬りかかるのと同時に俺は低く踏み込み胴を打った。ケンドールが膝をつくのと同時に歓声が沸いた。

「へ、へぇ。なかなかやるじゃない。」

「やっぱり僕の目に狂いはなかった!さすがだね、ユウヤ!」

メグは置いておいてアリックはまるで自分のことのように喜んだ。

「い、いや。もう無我夢中で・・・。」

「・・・っく!!ユウヤ!この借りは必ず返す!覚えておくがいい!!」

ケンドールは顔を赤くしながら去っていった。そのセリフはどこかで聞いたことがあって少し笑ってしまった。

アリックは俺に手を差しのべ、

「実はユウヤに頼みがあってね。是非とも僕達の隊に入ってほしいんだ!」

「!?ちょ、ちょっと待ってよ!」

「そうしたほうが外に自由に出られるしもとの世界に帰れるヒントが見つかるかもしれないよ。」

卑怯な耳打ちだ。おまけにウィンク付きだ。そんなこと言われたら入るしかないじゃないか。

「兄様の申し出を断るんじゃないわよ!この馬鹿!」

「う・・・。わ、分かったよ。その代わり危ないことはしないからな!」

「それは保証できないね。」

とアリックはまたウィンクをした。これは何を言っても無駄なんだろう。俺は諦めて素直に近衛隊に入隊することにした。その晩、俺の入隊を祝う宴が開かれた。

「やあ。楽しんでくれてるかい?」

「ん、まぁね。」

「ユウヤを初めて見かけたときちょうどゴブリンと対峙しててね、何やら武器を持っていたから少し様子を見てたんだ。そうしたら一瞬でゴブリンを退けたじゃないか!正直震えたよ。僕は一瞬で君に魅了されたんだ。それでそのあとバン爺達とユウヤを保護しようと相談したけど反対されちゃってね。まあ僕の権限で無理矢理言いくるめたんだけど。」

王子なのに無邪気な顔で笑うんだなと俺は思った。というかあのとき、見てたのか。俺はため息を軽くついた。

「そうそう、実は父上・・・クロノス陛下に一緒に来るよう言われててね。今から行こうか。」

「お、おう。」

王様の名前クロノスっていうのか。でも王様がなんの話だろう。昨日のことについてかな。


謁見の間に着くと王様は相変わらず豪華な椅子に座っていた。

「お呼びでしょうか、陛下。」

アリックは片膝をつきながら言った。俺も真似した。

「うむ。ユウヤ、昨日のお主の話を考えてみたのだがやはり難しい問題でな。今はどうすることもできん。それでお主にはアリックと共に行動してもらい、この世界のことを知ってもらおうと思ってな。先刻の野試合はアリックの案だが、面白いものを見せてもらったよ。」

見てたのか。

「アリックは10歳の頃から近衛隊の隊長をしていてな。16になった今でも同年代に共に友達と呼べる者がおらなんだ。仲良くしてやってほしい。」

アリックが16って、年上だったのか。10歳からモンスター討伐とかやってるのかと分かって、アリックが少し大きく見えた。

「は、はい。もちろん喜んで!」

「うむ。それになにやら、娘の、アリックの一つ下の妹のメグもお主を気に入っておるようだしの。」

王様が笑いながら言った。アリックの無邪気な笑顔は王様似なんだなと思った。そしてあのおてんば姫と同い年のことに驚いた。

「ユウヤが元の世界に戻る方法はまた後日改めて話し合おう。」

「はい。」

「それでは陛下、失礼します。」

アリックが立ち上がり一礼するのを真似をして謁見の間を後にした。

「そういえば、アリックの母親、妃?っていうのか?見てないけど・・・」

「母上は、僕が5歳のときに病気で亡くなったんだ。」

「ご、ごめん。」

「いや、いいさ。」

俺ってデリカシーがないのな。

「今夜はもう遅い。部屋に戻って休むといいよ。明日から早速訓練に参加してもらいたいから7時には起きるように。」

「ああ、分かった。おやすみ。」

部屋に戻った俺は明日に備えてすぐ眠りについた。



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