第2話異世界

ふと気付くと20人程の甲冑を着た人達に囲まれていた。そのうちの3人がさっきの男と何やら話し込んでいる。髭面の大男と、男から見ても男前なやつと、少し年食った男。ちらちら俺を見ながら話しているところを見ると、きっと俺をどうするかの相談なんだろう。話が済んだのか男が近付いてくる。

「僕の名前はアリック。アリックでいいよ。君の名前は?」

微笑みながら男は手を差し伸べた。俺は手を握り返し名前を告げるとアリックは

「これから僕達の街に案内したいと思うんだけどいいかな?ここら辺はさっきのゴブリンみたくモンスターが生息しているから。」

ゴブリン?モンスター?さっきの緑色した化け物の事か?何となく察した俺は、二つ返事で付いていくことにした。こいつらは甲冑も着てるしきっと強いんだろう。さっきみたいに命の危険を感じることはごめんだ。そっと胸を撫で下ろした。アリックは連れていた馬に颯爽と股がり

「シュナイダーは僕以外を乗せたがらないんだ。」

と笑いながら俺に手綱を握らせた。

「それでユウヤはどこから来たの?見ない格好だよね。」

「え・・・っと、自分でもよく分からなくて・・・。アリックは近衛兵って言ってたけど、さっきみたいな化け物と戦ってるの?」

「うん。まあこの辺りはゴブリンみたいな下級モンスターしか出ないんだけど、稀に近くの村とかが襲われたりするからね。だからこうしてパトロールしてるんだ。ユウヤはモンスターを見たことが無いの?」

「見たこと・・・ない。」

当然だ。少なくとも俺が知ってる世界にはあんな化け物はいない。不安に刈られている俺を察したのか、アリックは俺を落ち着かせるためか、話題を変えた。

「そうそう、後ろの3人の紹介がまだだったね。髭面の人はゴードン。その隣の男前がカイル。カイルとゴードンは一緒に教官として皆をまとめてもらってる。そしてバン爺。この隊を動かすときの作戦を練ってもらってる。3人とも頼りになるから、何か困ったことがあったら相談でもしてね。」

「よ、よろしく・・・お願いします。」

3人はただ俺を睨んでいた。


しばらく歩くと、これまた見たことが無い程バカでかい壁が聳え立っていた。

「で・・・でけぇ・・・」

俺は開いた口が塞がらなかった。

「ここが僕達が住む街、王都エデンー」

王都、それを聞いた俺は持っていた疑問が確信に変わった。見たことが無い化け物、見たことが無い甲冑を着た人達、見たことが無いバカでかい街。それらを目の当たりにした俺は信じずにはいられなかった。ここが俺がいた世界とは全く別の世界、異世界なんだとー。

「門を開けよ!」

甲冑を着た一人が叫ぶとバカでかい門がゆっくりと開く。石畳の街並み、たくさんの屋台、たくさんの人、たくさんの家や店が街の端まで並んでいる。そして一番不思議に思ったのが、人々が「アリック様」、「お疲れ様でした」とアリックに手を振っていること。俺と変わらないくらいの年なのに、もしかして偉いのか?とアリックの顔を見ているとアリックは

「僕達がパトロールや遠征に出掛けて帰ってくるといつもこうなんだ。恥ずかしいからやめてくれって言ってるんだけど、こうしてみんなが笑ってくれてるのは嬉しいことだよね。」

と照れながら言った。すると、後ろで俺を睨んでいた3人がようやく口を開いた。

「当然です。民は殿下に好意と信頼を持っております。殿下はこれから先、国を支えていかれるのですから無下にするものではございません。民は殿下を慕っておられるのですから好きにさせておけば良いのです。」

「がーはっはっは!バン爺の言うとおりだぜ、アリック!無理矢理やらせてるわけじゃないんだ!放っておけ!」

「口が悪いぞゴードン。ですがバンドール様の言うとおりですよ。殿下。皆好きでやっているのですから。」

え?ちょ、ちょっと待て。今、殿下って言ったか?殿下って王子ってことだよな?頭が痛くなってきた・・・。

「着いたよ。」

アリックの一声に俺はハッとした。目の前にはどっかの国のサグラダなんちゃらみたいなでっかい城が建っていた。

城内に案内され少し待つよう促された。アリックは他の3人と一緒に謁見の間とやらに入っていった。数分待つと、アリックが出て来て手招きをした。俺は処刑でもされるんじゃないかとビビりながらも謁見の間に入った。すると部屋の奥で一人だけオーラが違う人が豪華な椅子に座っていた。俺のイメージだけで言えば髭も白くないし年も40代くらいだし王様って言えるほどでもなかった。それでも一目で分かった。この人が王様なんだと。

「お主、ユウヤと言ったか。平原でゴブリンを追い返したそうだな。それにその変わった服装。お主はどこから来た?」

アリックに聞かれたときと同じように言葉を濁らせていると

「お主をどうこうしたりはせんから正直に申してみよ。」

俺は覚悟を決めこれまでの経緯を全て話した。すると王様は驚くこともなく何やら考え込んだ。

「ふむ。お主の経緯は分かった。信じるか信じないかは別としてな。お主もいろいろと疲れただろう。部屋を案内させるから今夜は泊まると良い。アリック、頼んだぞ。」

アリックは一礼すると俺の手を引き謁見の間を後にした。俺はまた、何が何やら分からず混乱していると、

「とりあえず今日はこの部屋で休んでね。いろいろと混乱しているかもしれないけど、一晩休めば気持ちも落ち着くかもしれないし。明日はユウヤが起きる頃にはメイドを向かわせるから、それまでゆっくり寝るといいよ。」

「あ、ありが・・・とう。」

「それじゃ、おやすみ。」

部屋に一人になった俺は用意してあったベッドにダイブしいろいろ考えてみた。変な扉、ゴブリンというモンスター、名前が外国っぽい甲冑を着た人達、王都。俺が今まで生きてきた中で見たことも聞いたこともないものばかりだ。これからどうなるのだろうと考えているうちに、余程疲れていたのかいつの間にか眠ってしまっていた。






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