4歳の年 文化都市、平安京2
「さて、諸君、初めまして」
この建物の中では最も大きい部屋に現在いるすべての学徒を呼びつけ、語る。
プレゼンテーションのように、注目を集める。
サーカス団のように、視線を誘導する。
はっきりと意見を表明する。堂々と、優雅に、それでいて強かに。
「本日から超特例でこの学館院の全権を獲得した、橘道貞です」
まあ、ざわめきますよね。
自分たちより3周りは小さい人間がこれを得ることになるのだから。
反発は必至だが、それで立ち止まることのできない理由がこちらにもある。
5割ならいい方だろう。
中心となるだろう人間は7人か。楽勝だな。
「まあ高度な政治的事情がある、諸君らにはこれだけで十分でしょう」
というかこれ以上を言わなければならないというなら、一族に不要。
幸い頭に血が上ってるくらいでオールクリアとなりそうだ。
示せばいいだけだが、都合のいい状況を作らなくては。
恐らく、スペアとしての能力を試されているのだろう。
さながら最終テスト。こんなことしてる場合じゃないんですがね。
ここに通うのは橘の系譜に連なる輩、顔見世と実力試しを一気に行わされるのか。
「私の役目はこの学館院を新しい学問の館にすることです」
ああ、面倒面倒。
無粋な目線から観察するような目線、なんとも懐かしい視線だ。
険しい視線の持ち主は。3人か、面倒だなぁ、引き込むか?
「諸君の優秀な能力と磨き上げられた知性には期待しています」
少し笑いが漏れる。いけないいけない。
能ある鷹は爪を隠すというし、わざわざ開示することもない。
スパイっぽいのもかなり混ざっているし。ね。
さあ、文化革命を始めようか。
まずは現状の確認だ。
平安橘転生記 天宮詩音(虚ろな星屑) @AmamiyaSionn
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