2歳の年 文字学習其の壱。

平安時代、当然のことながら文字は基本漢文か、崩したカナ文字である。

しかも筆、その上荒い和紙。


つまりは、読めない。


「若様、そんなもの見てなんになるので?」

うーん、興味本位?

「はいはい、そうでございますか」

この世話役、最近知ったが『翠月』というらしい。


しかし、この2歳児の体は大分不便だ。

とにかく一人でできることが限られる。

だが、不幸中の幸いというべきか。

この世話役、10代前半位にしか見えないのに、そこらの家臣よりよほど優秀だ。

察しが良いうえに、腕も立つ。

本家、現橘氏長者である橘恒平の娘、名前は知らない。

というか正史にこんなのいただろうか。

女性にして有力貴族の長などと、歴史の教科書に必ず載るような偉業。

いや、偉業すぎたから消されたのか?

まあともかく、そこから送られてきたと聞いている。

恐らく監視だろう。たまに観察するような鋭い視線を感じるし。


まあ、つまるところ私の命はこの世話役翠月に守られているし、狙われている。

しかし、平安時代で文字を書ける、これがどれほど貴重な人材かわかるだろうか。

是非とも仲間に欲しい人材だ。


どうにかして、仲間に引き入れたいものだ。


なんとか、言葉を理解できるようになった。

不自然にならない程度に、注意深く監視の目を欺く気疲れなのか。

はたまた子供は充電が早く放電も早いのか。


今日も私は、眠りにつく。

明日生きているだろうか、そんな不安を押し隠して。

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