第九話 本日二度目です

受付の方に行って話を聞くとそのセミナーの準備が出来たとのこと。

受付嬢に言われた部屋と向かう。

ああ、もう楽しみだよ。楽しみ過ぎるよ!

遂に俺も魔法の授業を受けられるんだ!

まだ、この世界に来てからはちゃんとした魔法は見てないからね。

この世界の魔法てどんなんだろう?


ここの部屋かな?

部屋の入り口はギルドにある他のものと変わらない。

いや、一つだけ違う点があった。

それは部屋のドアに掛けてあるプレートに「講義室」と書いてあること。


部屋のドアノブに手を掛ける。

よ〜し、ドアを開けるぞ〜。

念願の魔法が遂に習えるんだ!

緊張はするなよ〜。

緊張し過ぎたらダメだからな〜。

もう、ワクワクが止まらない!

俺は勢いよく部屋のドアを開けた。


「アリシアさ〜ん!宜しくお願いしま〜す!」

「え!!??トシ……カズさん!!??」

「え……?」


俺の目に映ったのはアリシアさんの下着姿で先程来ていた服を脱いでいる途中だった。

二つの豊満な胸が包まれている上の下着と大事な下の方を隠している下着。

どちらの下着も淡い桃色だ。

そして、スカートを脱ぐ為には少し前のめりになっているので俺から見えるのはアリシアさんの無防備な後ろ姿、お尻をグイッと俺に見せつけるようだった。

さらにアリシアさんの見える細い腕と脚の肌は白く美しい。

雪の大地を連想されるかのように美しい。

こ、この姿勢は流石に思春期の男子高校生には毒だ。

それも致死性の猛毒だ。


「oh……」


英語だ。

俺の口から出たのは英語だった。

むしろ、こんな光景みて日本語でる方がおかしいよ!

アリシアさんの顔は段々赤みが増してきている。


「ちょ、ちょ、ちょっと!!!出て行ってください!!!トシカズさん!!!」


という訳で部屋から追い出されて今は部屋の外に居ます。

ハイ、キテたよ!!さっきキテたよ!!キトったよ!!

しかも、二度目!!本日二度目だよ!!

アリシアさんと会った時に胸を揉んでしまったのと今回の下着姿を見たのと合わせて二回!!

これが【ラッキースケベ】なんだね!!

これが【呪い】なんだね!!

いや、違うよ!これは呪いなんてもんじゃないよ!!

呪いというよりエロの神様(笑)の力だよ!!

世のラノベや漫画に出てくる男の主人公はこんなにも、こんなにも素晴らしいことを日々体験していたのか!!

いや、俺はまさに今その体験をしたんだ!!

俺も立派なその主人公だー!!

着替えてる最中、もしくはお風呂でなどで見ることが出来るその相手の身体!体!

しかも、あのアリシアさん!!あの綺麗な美少女のアリシアさん!!!

つい、さっき会ったばかりの初対面の着替えを見れるとか俺てどんだけだよーー!!


はい、少し落ち着こう。

少し落ち着きましょうか、俺。

ヒートアップし過ぎたね。ヒートダウンしよっか。

あ〜喋った〜脳内で喋り過ぎてつかれたよ〜。


……ん?そういえば、俺って何でこの部屋に来たんだっけ?

……そうだよ!魔法だよ!その講義を受けに来たんだよ!

準備が出来たって言うから来たのにまだ準備出来てなかったじゃん!

あー……どうしよ。

さっきはあんなに喜んでたけど冷静になったらアリシアさんに合わせる顔がないな。

まだ会ってからほんの1時間くらいだぜ。

そんな相手にあんな姿を見られるなんて、アリシアさん怒ってるだろうな〜。


「あの……準備が出来ましたので……もう入って大丈夫ですよ」


ガチャッとドアを開けて声を掛けたのは着替え終わったアリシアさんだ。

アリシアさんは白衣を着ていた。

白衣は全てのボタンがしっかりと止められているので白衣の下は何を着ているか分からない。

だが、顔は下を向いているのでどんな表情かは確認出来ない。


「……一つ……聞いてもいいですか?」

「……はい」


重苦しい空気の中で互いの言葉だけが聞こえあう。

部屋のドアを閉めているからだ。

だから、部屋の外の音は聞こえないようになっている。

閉ざされた密室で男女が一人ずつ。

本来ならば最高のシチュエーションなのだが、何故かそういった興奮は湧いてこない。

いや、理由は分かる。

さっき起こったことが原因でこんなことになっているからだ。


着替えの最中を見てしまった。

確かにこれは男子高校生にとっては非常に嬉しい出来事だ。

だが、それで相手が泣いてしまったりなどしたら罪悪感しか心に残らない。

アリシアさん、本当に泣きそうだもん。

泣いて殴ったりしてきた方が逆に清々する。

しかし、泣くオンリーだったら死にそうになる。

心は木っ端微塵になって何も残らないさ。

さっきあんなにも喜んでいた自分が醜く思うよ。


「何でまだ講義の準備が出来ていないのに入ってきたんですか!ちゃんと受付の方に呼ばれてから来てください!」

「……へ?」


顔を上げて俺の方を向き力強く言った。

うん?今何て仰いました?アリシアさん?

俺の聞き間違いか?


「いや、だって俺は受付の人に準備が出来たからってこの部屋に行くように言われたんですが……」

「え?……どういこと……ですか?」


アリシアさんも、まるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をした。

どういこと?ってこっちがどういうこと?だよ!


「もしかして……トシカズさん!少し待っていてください!」

「あ、はい、待ちます」


今分かることはアリシアさんは凄い必死になっているということだ。

アリシアさんはそう言い残して部屋から出て行った。

どこに行くんだろうか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



バンッ!!!


「ちょっと!どいうことですか!」


受付の机を叩いた大きな音が響くが、ギルド内の騒がしい音に消されて他の冒険者には聞こえない。

受付のカウンターでアリシアはセミナーの連絡を頼んだ人を問い詰めていた。

アリシアのその形相は凄まじいことになっていた。

その上、アリシアの瞳には薄っすらと涙らしいものが浮かんでいた。


「え?どうしたの、アリシアさん。何かあった?」


そんな呑気な言葉がアリシアをさらにヒートアップさせる。


「どうしたもこうしたも、何で講義の準備が出来ていないのに人を入れるんですか!」

「あ、あ〜〜なるほど」

「何がなるほどですか!」


受付の女性はやっと答えを導き出せた。


「ごめんね〜。私の勘違いだったみたいで、さっき連絡貰った時もう準備が出来ているかと思ってたからあの人呼んじゃった」


アリシアは絶句した。

その勘違いのせいで彼に着替えを見られたのだから。


「確かに私が悪いわ、ごめんなさい。でもそこまで必死になるものなの?」

「いや、だって私はきが……な、なんでもありません!今度からは気をつけてください!」


アリシアは彼が待つ部屋に戻って行った。


「きが……て一体なにからしら?」


何も知らない受付の女性の声はアリシアには届かなかった。

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