第二話 女神様からの贈り物
電車から降りて真っ白な場所へと出ると、電車は光の粒子になり霧散していった。
本当にあっという間に消えた。
こうして真っ白なこの空間には自分一人だけとなってしまった。
とにかく前へと進もうか。
前に進みながら辺りを見回すが本当に真っ白だ。
しかも体が軽くなった様な気がする。
歩き始めて数分ぐらい経ったと思う。
突如目の前に扉が現れた。
その扉も同じく真っ白。
何故その扉に気付けたかというとご親切にドアノブが付いていました。ドアノブは一般的なネズミ色?です。
正直この時の自分は高揚感で一杯だった。
こんなになったのは生まれて初めてだった。
ドアノブを回して扉を開ける。扉は押すタイプだ。
扉を開けた先は先程まで歩いてきた場所とは全く異なるものだった。
その場所に在るのは椅子が二つだけ。
手前に一つと奥に一つ。
奥の椅子には誰かが座っていた。
遠くて顔までは分からなかったが、おそらく女性だろう。女性特有の雰囲気を感じた。
「どうぞ。こちらの椅子にお座りください」
手前に在る椅子を手で促しながら、丁寧な口調で座るように言われた。
その指示通りに椅子の方まで歩いて女性に確認しながら座った。
「ようこそ、私たちの世界へ。私は女神が一人、名をテミスと申します。我々神々は貴方を歓迎します、斉田 利和さん」
「は、はぁ、どうもご丁寧に」
いきなり自分の名前を言われて驚いてしまった。
しかも奇妙なことを言ったな。
わたしたちの世界へようこそ、て。
ま、まさか、ここって?
「こ、ここって、まさか、もしかして、もしかしなくても、異世界ですか?」
「ええ。貴方の世界で仰るところの異世界です。ですが、ここは異世界といっても神々の住む場所、貴方が常日頃行きたいと願っている世界はもう少しばかり距離があります」
やったー!来たー!異世界だー!遂に念願の異世界に俺は来ることが出来たぞー!
この次の展開としては異世界にいる魔王を倒してとか言われるんでしょ?
「何故貴方がこの世界に来ることができたのかお判りですか?」
……あれ?……ちょっと予想外な質問が来たな。
まぁ、いいか。一応、相手は女神様だから敬語を使っとかないとな。
「い、いえ、分かりません。ですが、多分神様が選んでくれたのではないでしょうか?」
そう返すと女神様はニッコリと笑ってくれた。
女神は見た目からして二十歳いくかギリギリのところで、さらにスタイルは抜群だ。如何にも女神らしい服装の上からでも分かってしまう大きな胸や腰のくびれなど、元の世界でもこんなに綺麗な女性はあまり見た事がない。
女神の着ている服はそれこそ地球でいう女神の服装とは違い、膝上までの綺麗な白のワンピースだ。
因みに自分は普通の学生服です。
「お見事、正解です。実は地球の神の一人が『異世界に行きたいと強く願っている人間がいるからそっちに送るね』と言って貴方を此処に送ってきました。……あの神、少し調子乗り過ぎじゃない?何回もムチャなこと言ってきて。いつもメイクをゴツくして合コンに臨むし、ホントにウザいわ。こっちの世界に連れて来れる人数も決まってるんだから」
……なんか後半から声が小さくなって微妙に聞きづらくなってたけど何て言ってたのかな?
「あ、あの〜大丈夫ですか?」
「あ、す、すいません。コホンッ。では本題に入りましょう」
女神アクシルは咳払いをして話始めた。
「実は貴方がこれから行く世界では人間と対立している危険な生物がいます。その頂点に君臨するのが俗に言う魔王です。貴方にはこの魔王を倒して欲しいのです……と言いたいところですが魔王を倒す戦力としてはあちらの世界にいる者達だけでどうにかなりそうなんです、アクシデントがおこりさえしなければ。ですから、貴方は気軽に異世界生活をお楽しみください」
お、おう、いきなり斜め上を通り越して一周したぐらいの衝撃を受けたぞ、今の言葉だけで。流石は女神様だな。
「で、でも何かしらのチート能力は貰えるですよね?それが異世界転生というものですし」
「はい。その点はご安心ぐたさい。まず言語に関しては我々神々の魔法で大丈夫です。そして……大変申し上げにくいのですが、転生者には選べないのです。その……能力とかを」
指を絡めながらモジモジとする女神。
いやいや、何指をモジモジしてんの?ふざけないでよ!
「ですが、一応能力は与えられます。斉田 利和さんには神々が決めたモノが与えられることになっております」
神々が決めたモノ?それは期待できそうだな。
すると、女神は一枚の紙を取り出して俺に渡してきた。
「この紙に貴方への神々からの贈り物が書かれてあります。どうぞお読みくださいませ」
俺はその紙を受け取って恐る恐る中を見る。
そこにはハッキリと書かれていた。
『異世界転生者に選ばれた幸運の持ち主、斉田 利和。貴方には我々神々からの贈り物を授ける。貴方への贈り物は……呪い【ラッキースケベ】です。この呪いを上手く使い異世界生活をお楽しみ下さい。神々より』
……呪い……だと!?
ふ、ふ、ふ、ふざけんなー!!!
もっとチートな能力とかスキルとか魔法とか武器とかあるたろ!?なんでよりにもよって呪いなんだよー!!!
頭の中では激しい論争が勃発している。
神々がくれたこの紙を破り捨てたい衝動に駆られたが、神々を怒らせてしまうかもしれないので、そんなことをするわけにもいかず折りたたんでポケットにしまいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます