赤ずきん お散歩

梅雨が近づいてきた今日この頃。赤ずきんはじめっとした森林を歩いていた。

片手にぶら下げた籠には猟師に貰った銃。そして少量の食料が入っており、家出などの事では無さそうだ。

「……お母さん、お花持っていったら喜んでくれるかな。」

赤ずきんは、道端から少し離れたところの花畑に興味を奪われた。

お母さんの為に摘もう、と良心が生まれ花の前にしゃがみ込み綺麗な花だけを摘み始めた。



暫くして籠の中身が花で埋まった時、傍らの茂みで物音が。

赤ずきんは素早く立ち上がり、辺りを見回し物音へと耳を傾けた。

するとまた音が鳴る。今度は比較的大きな物音だった。

赤ずきんは意を決し、茂みの方へと飛び込んだ。

「……ひっ!」

「え?」

音の正体は小柄な狼。しかも同い年の様に見える。

「こ、殺さないで……お願い。」

恐ろしそうに、小刻みに震えながら上目遣いで赤ずきんを見つめた。



__こいつ、使えるかもしれない。

赤ずきんは籠の中から銃を取り出し狼のこめかみに突きつける。

「やめてぇ……!」

「抵抗しなかったら殺しはしないわよ。良い?言うことを聞いて。」

赤ずきんは猟師の前とは全く違う口調で話し、冷たい視線を送った。

「なっ、何?」

「あら。口の利き方がなってないわ。まず飼い主には敬語__でしょう?」

にこりと、同性でも惚れるかもしれない笑顔で狼に笑いかける赤ずきん。

それを見た狼はぶるりと震え、素直に頷いた。

「ふふ、良い子ね。じゃあ早速なんだけれど……。」

鈴のような可愛らしい声で、赤ずきんは恐ろしい事を言い放ったのであった。



「私のお母さんを、食べて?」

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