☆ 天使降臨

 ある日、空が割れ、天使が堕ちてくる。

 ところによっては真っ青な空だったようだ。

 ガラスが割れるような、雷鳴が轟くような音がしたともいう。

 その姿は伝説上の天使に特に似ているわけではないが、それでも共通点は数多ある。

 背中というか、肩甲骨の上辺りから羽根のようなものが生えていたし、顔の眼と思える部分には、この世のすべてを見透かしたように透明で澄んだ冷たい瞳が覗いている。

 重力をまったく感じさせないその体躯も他に喩える対象を見つけられない、あるいは見つけてはいけないような蒼く醒めた印象もしくは拒絶感を、たまたまその降臨を目撃したものたちに与えたらしい。

 薄く透けた体表には、淡く、濃く、斑模様があり、ときとしてその色が、変わり、移り、光り、怖ろしくも、美しいようにも見える。

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