08/20/08:30――問題の迅速処理

 朝食ちょうしょくえると、すずはみせもどるらしかったが、できればまたあとかおせてくれとのこと。おれはそれにうなずきつつも、食後しょくごのおちゃえると、北上きたかみとハコとともそとた。

「こりゃまたクソ天気てんきじゃねえか。日陰ひかげでのんびりできる狙撃手スナイパーはいいもんだな?」

うらやましいならうでげろ下手へたくそ。日陰ひかげあせとどっちがマシだ?」

「ははっ、うねえ」

 そとてすぐ、おれたちは共通言語イングリッシュへとえる。はなしかれたいわけではなく、第三者だいさんしゃがいないでは、だいたいこんなかんじだ。れているのもあるし、自然しぜんとこうなってしまうだけの時間じかんごしている。

「で? ルゥイ、そもそも一人ひとり片付かたづけられるようなことを、どうしてわたしにまで手伝てつだわせるわけ? さけ一本いっぽんじゃわりわないわよ」

対価たいか要求ようきゅうおれではなく〝当事者とうじしゃ〟にけられるとかんがえろ、短気女たんきおんな腑抜ふぬけのクソおんなでも、一時期いちじき爵位しゃくいっていたんだ、サーバのアドレスでもこたえさせれば暇潰ひまつぶしになる」

一時間いちじかん以内いない成功せいこうしたら、ルゥイに別途べっと要求ようきゅうするからおぼえておきなさい」

「おいいたかケイミィ。このクソおんな、ツラのかわしたかず段違だんちがいだ。便所べんじょわすれた下着したぎをおまえぬすんだんじゃないのか?」

おれのせいにすんなよ。おまえがワンサイズうえ下着したぎをプレゼントしたんじゃねえのか」

「いずれにせよ不機嫌ふきげんそうなツラはわらんな」

機嫌きげんくにっこりわらって? ――そっちのほうこわいだろハコは」

 はなしながら、おれたちはりょうはなれ、――まちとはぎゃく方向ほうこうあるす。

空襲くうしゅう警報けいほうてなかったよな? 戦時中せんじちゅうのクソ田舎いなかおもすぜ。駐在ちゅうざい連中れんちゅうごとしたら、マジでやばいことになったな。ナイフと拳銃けんじゅうだけはかえしてほっとしたぜ」

「イカサマくらい見抜みぬきなさいよ、あんたは。ふくはどうしたの」

屍体したいからもらった」

馬鹿ばかね」

「ちゃんと病気びょうきのチェックはしたけど、問題もんだいなかったからなー」

今日きょう天気てんきとおまえあたまはよくてる」

「ほっとけ。こんな〝あそび〟にうこっちのにもなれってんだ、たのしみもありゃしねえ」

情報じょうほうってきたのはおまえだろうが……」

「その〝確証かくしょう〟をたのはルゥイだろ」

一番いちばんなにはなさなかったアイスでしょ。今度こんど下着したぎがそうかしらね」

「あー、そういやハコ、いたか?」

「アイスのスリーサイズ?」

「じゃねえよ。ゴーストバレットのはなし

「グレッグのクソ野郎やろうさがしてるってことならいてるわよ。あの間抜まぬけじゃ一生いっしょうかかっても尻尾しっぽつかめるかどうかあやしいけれどね」

「はは、おいルゥイ」

「ん? ああ、もうつけてるってわらばなしだ。ハコ、兎仔とこ軍曹殿ぐんそうどのがゴーストバレットだぞ」

 沈黙ちんもくした。

「あはははは! おれとおんなじ反応はんのうしてら!」

記録きろくしておいてくらべれば面白おもしろかっただろうに、どうして昨日きのうおれはやらなかったんだ?」

るかよばーか」

「まあ軍曹殿ぐんそうどのも、むかしはなしだとはっていたがな」

「……それはつまり、いま兎仔とこさんはむかし自分じぶんを〝ころせる〟ってことでしょう」


 そのとおり。

 ――とんだ、ものだ。


「お、た。こんなクソ田舎いなか乗用車じょうようしゃはしってやがるぜ、それなりに高価こうかっぽい」

 われてけて確認かくにんおれたちはみちふさぐよう、呑気のんきある速度そくどゆるめてまる。

○八四二マルハチヨンフタ

「あいよ。ヘイ、ろよあの間抜まぬけ、くるまめやがったぜ。助手席じょしゅせきから一人ひとり? ははは、あんな馬鹿ばかたことねえ」

 とはいえ、セオリーだ。おれたちのまえくるまめて、運転席うんてんせきからもかおせるようなら、おお馬鹿者ばかものである。

 さてと。

車内しゃない二人ふたり確認かくにん

相変あいかわらずだなあ――ま、こんくらいならおれだってえるけど」

「とっととわらせて、アイスであそびましょ」

ころすなよ、いぬども」

命令めいれいすんな、クソッタレ」

 おれ把握はあくした相手あいて三人さんにんの〝視界しかい〟に介入かいにゅうし、不自然ふしぜんではない程度ていどに〝死角しかく〟をつくる。照準器スコープのぞめば射線しゃせんえがき――相手あいて狙撃手スナイパーがいたのならば、その射線しゃせんみ、変更へんこうくわえることができるおれ術式じゅつしき応用おうようである。

 その術式じゅつしきを〝かんじた〟二人ふたりは、左右さゆうからむ。一歩いっぽおれこしよりもひく姿勢しせいになり、疾走しっそう開始かいしした。

「……――?」

 おれそばまできたアメリカンは、二人ふたりえたようにしかえなかっただろう。

「おい――」

おれやさしい人種じんしゅだ」

 かる両手りょうてひろげて、おれう。ツラはすで確認かくにんしてある、ターゲットで間違まちがいはない。

あまったるいミートパイをされても文句もんくったことはないし、夕方ゆうがたにホットドックをってべても、晩飯ばんめしはちゃんとう。電車でんしゃとびらまりそうなときにご老人ろうじんがいればす」

「なにってんだおまえは」

「わからないか? そうか、わからないか……残念ざんねんだ。つまりな? あんたはうんいってことだよ」

 くるまから派手はでおとひびき、おとこかえった。やれやれとおもいながら、おれはそのうしあたまつかみ、左手ひだりてうでるようにちかられた。

「おいクソ間抜まぬけ、まえ脅威きょういからかおらすとは、どういう教育きょういくけた?」

 ちかられたおれ左手ひだりてが、おとこ手首てくびにぎりつぶす。単純たんじゅん握力あくりょくではなく、いわば雑巾ぞうきん片手かたてしぼるようなやりかただ。そのあいだも、あたまけっしておれほうけさせない。

かえすが、あんたはうんい。だからえらばせてやろう……自分じぶんあしあるいて、くるままでもどるか、それともおれきずってくか、どちらがいい? こし拳銃けんじゅうもぶらげてない間抜まぬけじゃえらべないか?」

「……」

 ゆっくりと、おとこあしまえしてあるす。重心じゅうしん移動いどう歩調ほちょう、そうしたものをかんじながらくるまちかづいてけば、もう二人ふたりおとこくるまからきずりされていた。

 さてと、ハコがくちひらく。

「いろいろときたいことがあるの。でも残念ざんねんね、あなたたちはきっとうそう。そういうかおをしてるし、時間じかん無駄むだね」

 まよわず、ハコはうばった拳銃けんじゅう片足かたあしった。たまなかのこかただ、さすがによくわかっている。

「こっちの野郎やろう正直しょうじきはなしそうだぜ? ――けど、うんがなかったな。おれはどうも鳥頭とりあたまってやつでね、きたいことをわすれちまったんだ。さて、なんだったか、あんたってるか? いやるわけねえか――じゃ、いらんな」

 あしうらひざたたきつける容赦ようしゃのなさ。


 まったくこいつらは、おれ意図いとをすぐさっするから面倒めんどうがない。


 こまかく、こまかくきずやす。おおきいのは最初さいしょだけ、つぎからはきざむようにしていためつける。その様子ようす見続みつづけるこのおとこは、反応はんのうすらわすれたカカシのようで――。

「――あんたはうんい」

 おれ耳元みみもとふたたささやけば、ぎくりとからだ強張こわばった。その瞬間しゅんかん左手ひだりてはなしたおれは、おとこ腰裏こしうらからナイフをき、それをふとももにて、るようにして瀕死ひんし二人ふたりそばへところがした。

「おう」

「はいはい」

 北上きたかみかぎわたして監視かんしにつき、ハコがくるま調しらす。おれ携帯端末けいたいたんまつして、インカムをみみけた。まずは――。

『はい』

りょうて〝そと〟へい、距離きょりはそうとおくない。そばにいるなら金代かなしろと――カゴメならばついててもかまわないが、津乗つのりはよしておけ。桜庭さくらばはどうせてる」

『はい? なにかありましたか?』

「おまえきゃくまみれでたおれてる、はやくしろ」

 そこまでえばわかるだろうとおもって、通話つうわる。けば、あわてた様子ようすりょうからこちらへ人影ひとかげ確認かくにんした。目視もくし距離きょりだ、すぐるだろう――が、ふん、カゴメも一緒いっしょか。

 おれつづけて兎仔とこ軍曹殿ぐんそうどのへ。コールはしばらくつづいたが、天来てんらいるよりもはやつながる。

『おー』

報告ほうこくです。天来てんらいの〝問題もんだい〟にかんして、三名さんめい処理しょり実行じっこう北上きたかみとハコもあそびにくわわってかたづけましたが、どうしますか?」

『んー、きてんのか』

瀕死ひんし二名にめい一名いちめいのこしてあります。P229、マカロフ、AK二丁にちょう確認かくにんしました」

『そっか。穂乃花ほのかは?』

事前じぜんさっすることもできなかった一般人いっぱんじん期待きたいはしません」

われよ』

「はい。――おい天来てんらい軍曹殿ぐんそうどのだ」

「え? あ、はい……」

 インカムをわたし、おれはしゃがみむようにして連中れんちゅうる。

「――どうした? おまえはまだきているし、こいつらもんでいない。いまからアンビュランスが到着とうちゃくすれば、一命いちめいめるかもしれないぞ? だが一秒いちびょうごとに、こいつらはちかづく。ああもちろんそうだ、おまえなにかをしゃべったって、これからさききてけるとはかぎらない……大変たいへんだな、同情どうじょうするよ、けてくる。どうしてこんなことになったんだ? あさったトーストがわるかったのかもしれないな」

「おい――」

「なんだカゴメ、おれるくらいなら天来てんらいてやれ」

「――っ」


 ふん、ようやくか。


 かえされたインカムをり、れば。

「ヒュゥ」

 ふざけたように、北上きたかみ口笛くちぶえく。

 そこにいたのは、天来てんらい穂乃花ほのかかおは、はげしい感情かんじょうをすべて内側うちがわんで、それをこおり仮面かめんおおった、かつて〝アイス〟と揶揄やゆされたおんなのものだった。


 おれたちにとっては、見慣みなれた、よくあるかおだ。


 そして腑抜ふぬけのカゴメにとっては、まさか天来てんらいがこんなかおをするだなんて、かんがえもしなかっただろう。

「――軍曹殿ぐんそうどの?」

はなしはついたぞー、処理しょりはこっちでった。のこりの処分しょぶんもこっちでやっちまうよ、そのほうはやい』

諒解りょうかいしました。必要ひつようなら自分じぶんが」

『いんや、もう位置いち特定とくていはしたし、国外こくがいだからなー。グレッグとマドーネにまかせる』

たすかります」

わるいが回収かいしゅうまではえよ。じゃーな』

「ではまた」

 通話つうわれば、かみつかんでかおわせ、なにかをはなしていた天来てんらいも、一息ひといきついて表情ひょうじょうもどしたようだった。

「はふ……あ、風祭かざまつりさんはもどっていてください。沙樹さきさんが心配しんぱいしてるかもですからねー」

「あ、ああ……うむ、そうだな」

 ちらり、とおれ一瞥いちべつげるが無視むししておいた。ま、あいつにもくすりにはなっただろう。

「すみません、おおきなりをつくってしまいました」

「だったらすぐかえせ。おれからの要求ようきゅうはサーバのアドレスだ」

おれ昨日きのうめし充分じゅうぶんだから、アドレスにアタックする程度ていどましてやるよ」

「ふぬっ……! な、なんて要求ようきゅうをするんですか!」

かるいものでしょ。でもわたしにはりないからいますぐ下着したぎぎなさい。こいつらのお土産みやげとしてたせるから」

「もっといやですよなんですかそれは⁉」

「――おい不知火しらぬい

おそいぞ金代かなしろ

「なんでわたしされてんだ? すことなんざ、なにもないだろうが。穂乃花ほのか下着したぎがす手伝てつだいもいらないだろ」

「ちょっ――」

「ははっ、監査かんさ仕事しごとわすれたのかよ、このボケおんなは。まちはずれは管轄かんかつじゃねーってか? わらわせるぜ。ルゥイの気遣きづかいを便所べんじょなが趣味しゅみなら、一緒いっしょにモラルもながしとけよ」

今日きょうはオフだからって、昨日きのうあそぎたのよ。ぎたといたあたまかかえてきて、昨日きのうまえった便所べんじょのことなんてさっぱりわすれてる。今日きょう天気てんきあたまなかおなじなのね」

気付きづいてたのか――」

「おい、おいルゥイ、おまえまわりにゃクソ間抜まぬけしかそろってねえのか?」

「ああそのとおり、おまえとハコをればそんなことはさっしがつく」

「ンだとてめえ、こんなわかりやすい馬鹿ばか一緒いっしょにすんな」

「ほう、ではおれたちがいぬであることをかくしきれているとでも?」

「そりゃむずかしい問題もんだいだな、フェルマーさんにかなくちゃわかんねえ」

「ガリレオさんもんでやれ。ということだ金代かなしろ前崎まえざきには報告ほうこくしておけ。もっとも、さき連絡れんらくっているだろうがな」

「……」

「なんだその不満ふまんげなかおは。もしかして今朝けさはでかいのがなかったのか?」

穂乃花ほのかいぬきらってる理由ワケがよーっくわかった。じゃあなクソッタレども」

 くるりと背中せなかける金代かなしろし、おれかえって二人ふたりれば、かたすくめていた。この程度ていど軽口かるくち、いつもどおりだろうに。

「というかわたしまでクソッタレの仲間なかまりですよ⁉」

るか――ん? どうした、間抜まぬけ。おれなにいたいのか」

 呑気のんきなこちらの様子ようすて、おとこ奥歯おくばみしめながらこっちをにらんでいたので、おれ正面しょうめんにしゃがんでやった。

「ふざけるなよ、貴様きさまら……名前なまえおぼえた」

「それで?」

「まずは貴様きさまらの家族かぞくからだ……簡単かんたんにはころさない。だがおぼえてろ、かならず、貴様きさまたちはころす……!」


「――ふ」


 大笑おおわらいした。

 いていた北上きたかみも、ハコも、はらそこから大笑おおわらいする。


 ああ――だろうよ、そうだとも。


 いぬってのは、本心ほんしんわらときは、こういういびつな、こんな状況じょうきょうしかないんだ。


 きょとんとしている天来てんらいをしりに、おれたちはさんざんわらってから――なあと、さきほど談笑だんしょうしていたのとわらない口調くちょうう。

「おまえ、まだきていられるとでもおもっているのか?」

「――、……情報じょほうしいんだろう?」

なにっているんだ? 目的もくてきなんで、背後はいごだれがいて、おまえおなじような馬鹿ばかがどれだけいて? ――はは、っただろう、おまえうんい。もしも〝合衆国がっしゅうこく〟がおまえ背後はいごについていたら、あのくに今頃いまごろかたむいてる。どういうことかわかるか? ――とっくに貴様きさまらの素性すじょうも、背後はいごも、全部ぜんぶあらえて、片付かたづけははじまってる」

 ゆっくりと、おれ右手みぎてひらき、おとこかおつかんだ。そのままぎりぎりとちかられてやる。

かえすぞ。――おまえは、うんが、い。ハコ」

「はいはい」

 げられた拳銃けんじゅう左手ひだりてり、なが作業さぎょうとなりにいる瀕死ひんしおとこあたま二発にはつちこんだ。

「いいか? おまえいま、まだかされているのは、なんの事情じじょうでもなく、おれったとおり、うんいだけのことだ。だがな? うんってのは――ずっといままじゃない。きゅうわるくなることもあるわけだ。ちなみにっておくが、こういう面倒めんどうこした貴様きさまらを、おれのぞんでいたなんて、まさか、おもっていないよな?」

「――」

「ほらよくるといい、おまえ仲間なかま一人ひとりすくわれた。いたみから解放かいほうされた。おっと、となりにもう一人ひとりいま苦痛くつうあえぐやつがいるな――」

「やめろ……」

「なんだって? よくこえないな。いやおれ神父しんぷじゃない、懺悔ざんげをしなくても」

「やめてくれ!」

大丈夫だいじょうぶだ、ちゃんとこえた」

 ゆっくりと、おれちからいて、右手みぎてはなし――。


「――ところで、うんがないってわれたことはないか?」


 やはり発砲はっぽう二発にはつ頭部とうぶへとまれた。

「さて、おれ神父しんぷじゃないからおまえらくにしてやってもいいんだが――時間じかんれだ、おむかえがきた。かったな? おまえいまもまだきてる。うれしいか?」

 はははと、ちいさくわらいながら、くちふるわせてかおさおにしたおとこからはなれ、到着とうちゃくしたバンの運転手うんてんしゅかる挨拶あいさつをする。

屍体したいぶくろふたつだ」

「へえ」

 作業着さぎょうぎ帽子ぼうしをつけたおとこは、むねポケットからちらりと認識票にんしきひょうせると、ちいさく口笛くちぶえいた。

「そりゃこっちの作業さぎょうらくになる、ありがとよ。れてるな、さすがはいぬか。きてるのと無駄むだはなしをせずにみそうだ」

多少たしょうあそべるかともおもったが、どうもな――と、そっちは三人さんにんか」

おれはただの運転手ドライバー、そっちが掃除屋ナイトマンくるま解体かいたいもこっちでつから、あとで勝手かって回収かいしゅうするよ。それより」

 ようやく、おれ視線しせんわせたおとこは、これでもかというくらい、いやそうなかおをした。

「あんたと、――そっちのにいちゃんとねえちゃん、そこにいるガキっぽいおんなれて、とっととここからはなれてくれないか?」

 てるように、おとこう。


「――あんたらはこわくてたまんねえ」


はなくな、おまえ

「だからこんな仕事しごとにありつける」

「まったくだ」

 かたすくめたおれは、作業さぎょうをしている連中れんちゅうけた。視線しせん北上きたかみとハコに、もうくとい、天来てんらいうながす。

冗談じょうだんじゃねえな、おい。背中せなかにもならねえよ、あんたたちは――」


 そうとも。

 そのくらいのことじゃ、おれたちをころせない。


「さあって――おっと」

 北上きたかみせきばらいをひとつ、そこから日本語にほんごもどす。

わすれてねえよな、天来てんらい。おまえのサーバのアドレスをとっととおしえろ。つっても? まあおれたちがかえるのは明日あしただ、先延《》ばしにしてやってもいいぜ」

「あとパンツ」

七草ななくささん、本気ほんきですかそれ……」

「むしろ冗談じょうだんだとおもったのはどのあたりなのかをくわしくかせてちょうだい。録音ろくおん準備じゅんびはできるから」

録音ろくおん……⁉」

「……わるいな、ケイミィ」

「なあに、おまえおんなあまいのはいまはじまったことじゃねえだろ。〝み〟の程度ていどだって、まあ、あんくらいだろ」

「〝素人しろうと相手あいてなら、あんなものだろう」

「え? あのひと元軍人もとぐんじん……」

「なんかったか、天来てんらい

「いえ、なんでもないです。はいもういいです」

「ふん」

 本当ほんとう面倒めんどうおんなだ。だまっていたことの説教せっきょうあとでしてやることにして、とりあえずおれは、すずのところにかおでもしておくとしようか。


 こんなもの。


 おれたちにとっては、日常にちじょうはしでしかないのだから。




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