05/15/18:00――寮生との顔合わせ

 おれにとって日本にっぽんのおちゃというのは、印象深いんしょうぶかいものであり、それ以来いらいこのんでむようになった。

 といっても、いままでの生活せいかつなかものといえばビールやさけ、そして珈琲コーヒー身近みぢかなものとしてあり、紅茶こうちゃふくめておちゃむことはほとんどなかった。休息日きゅうそくび自分じぶんれなければめなかったおれは、だからこそ、その時間じかんたのしんだものだが、これからの生活せいかつにおいては気軽きがるむこともできるだろう。そのけんかんしては非常ひじょうよろこばしかった。

 とくにここはおちゃ有名ゆうめい静岡県しずおかけん位置いちしているため、こころなしか期待きたいしていたのもたしかだ。まだ初日しょにちということもあってくわしく調しらべていないが、きっとまちにはおちゃっているところもあるのだろう。

「それほど美味うまいって印象いんしょうはねえんだけど」

 それはおまえ日本人にっぽんじんだからだと、おれ気楽きらくこたえつつ、おちゃ片手かたてにベッドへこしろす。このりょうんでいるおなどしおとこ明石あかしけいみみかくれる程度ていどかみながさをたもっており、あかるい印象いんしょうける。それなりにきたえているのか、ひょろっとしているようにえて、なかなかに〝ふとい〟かんじのおとこだ。

「まあでも、おれとしちゃたすかったって部分ぶぶんもあるんだけどな」

「なにがだ?」

いままで、おれ以外いがい全員ぜんいんおんなっていう状況じょうきょうまいってたんだ。ハーレムかと揶揄やゆされちゃいるが、冗談じょうだんじゃねえ。こっちの肩身かたみせまうえに、作業さぎょう全部ぜんぶおれまわってくる」

「その作業さぎょうは、おれたところでわらないだろうがな」

「おい! ちょっとくらい手伝てつだってくれよマジで!」

「……、まあかんがえておくか。いろよい返事へんじ期待きたいしたいのなら、それなりにしろ」

「それなり?」

おれそでしたひろいぞ」

賄賂わいろ要求ようきゅうすんなよ……」

「いや、実際じっさいおれおんなとの同居どうきょやらなにやら、おとこ連中れんちゅうとならばともかくも、こうした経験けいけんはないからな。多少たしょう不安ふあんかかえている」

不安ふあんなんてツラにてねえけどな」

にくいだけだ」

 部屋着へやぎ、なんてものをっていないおれは、スーツの上着うわぎいでハンガーにかけ、ネクタイをはずした服装ふくそうである。けいはジーンズにシャツという身軽みがる恰好かっこうで、これがそとおなじなのか部屋着へやぎなのかはさだかではない。

 そもそも、部屋着へやぎ寝間着ねまきがどうちがうのか、おれにはよくわからないのだが。

国外こくがい生活せいかつながかったんだろ? そもそもあっちで、日本茶にほんちゃなんてるのか?」

専門店せんもんてんは、あるにはある。おれ場合ばあい友人ゆうじん東洋人とうようじんでな――いや、そうかんがえれば、東洋人とうようじんいというのは、おおかったんだろう。ケイミィとばれていた野郎やろうが、どういう事情じじょうかはらないが、おれれてくれたのをんだのが最初さいしょだ」

めずらしいあじだったのか?」

「もちろんだ。それまでは珈琲コーヒーばかりだったからな」

 その珈琲コーヒーだとて、たとえば同僚どうりょうのジンジャーがれたものなら美味うまかったが、泥水どろみずじゃないのかとうたがうようなクソ不味まず珈琲コーヒーもあった。それでもめないよりはマシだとおもって、のどおくながんだものである。

「だが、なによりもおれにとっては、そうだな……感情かんじょうてきには複雑ふくざつだが、なんというか、いたんだ。頻繁ひんぱんんでいたわけではないが、それからすこした。急須きゅうす湯呑ゆのみそろえたりな」

「つまり、しょうったってことか。いやなんつーか、その恰好かっこうというか、雰囲気ふんいきだけでうのもなんだけど、おまえ湯呑ゆのみって縁側えんがわ呑気のんきにしてたら、警察けいさつ通報つうほうするレベルだからなあ」

「よしてくれ。身分証みぶんしょうせたら、サインをもとめられそうだ」

「ねーよ。まあただ、のんびりはできるだろ。まちたって、あそはそうおおくねえし、ここらのガキのあそびっていえば、ボードくらいなもんだ。ちなみに、サーフボードのほうもそこそこ、やってる連中れんちゅうはいるぜ」

「フライングボード、か。試用品しようひん片手かたてに、カゴメがスキップしながらもどってきていただろう」

「おう、かえりにあそんでたんで、かる挨拶あいさつだけはしといた。かなり熱中ねっちゅうしてたから、おれはじめてったときのことをおもしたよ」

「……場所ばしょかぎられるが、面白おもしろいおもちゃなんだろうな」

「そういうおまえわなかったんだろ? 風祭かざまつりがぶつくさとってたぜ」

ったことじゃないし、小言こごとわされたけいには同情どうじょうくらいはしてやる」

「なんだかなあ。一応いちおう学校がっこうでも授業じゅぎょうみたいなのがあるから、ってたほうがいいぞってことくらいは、おれっておく」

「そうか。けいはよく使つかっているのか?」

「ここらにむ――というか、学校がっこうかよってる連中れんちゅう九割きゅうわりちかくは活用かつようしてるよ。一応いちおう部活動ぶかつどうみたいなのもたまにやってるぜ。土屋つちやってのが部長ぶちょうで、おれふくめてここの寮生りょうせい大半たいはんだけど」

かえみちながいから、れているうちにあそぶようになった」

「そんなかんじだ」

「まあ、いたらおう」

「おう。おれ、そういう返事へんじしたやつが、けたっての、あんましかないんだけどな」

してきて当日とうじつなんだ、慎重しんちょうすぎるくらいがいい。明日あしたから登校とうこうはするつもりだが、厳密げんみつには来月らいげつあたまからだ。日本にっぽん学校がっこうなんてのも、かよったことはないからな」

こうの学校がっこうはどうだったんだ?」

「ん、ああ」

 さて、訓練校くんれんこう学校がっこうだが、どう説明せつめいしたものか。

義務ぎむ教育きょういく観念かんねんあまかったからな、ほとんどかよってないも同然どうぜんだ。ほんむし、独学どくがく対応たいおうしてきたこともおおい」

「あー、あんましんでかないほうがいいか?」

おれじゃなくておんな相手あいてにやれよ、それは」

「は? むしろおんなたいしてはきが重要じゅうようなんじゃね?」

「ベッドのうえでのはなしだ」

「ああ、そっちの……」

説明せつめいさせるな」

「いや、すぐに反応はんのうできるほう熟練者じゅくれんしゃだろ。――お、そろそろめし時間じかんになるから、りようぜ。今日きょう立食りっしょくパーティだと」

「へえ? 椅子いすとテーブルのかずりないって理由りゆうなら、けい作業さぎょうひとえるわけだ」

いやなことをうなよ!」

冗談じょうだんだ」

 そなけのあらで、手早てばやあらったおれは、そろって部屋へやそとへ。

「そういえば、ここはスペースがかなりられているな」

「うん? ああ、歓談かんだんスペースな」

 住居じゅうきょスペースなのにもかかわらず、広間ひろまのようになっており、よっつのとびらがそれぞれある。使つかわれているのは階段側かいだんがわ一番いちばんちか右手みぎてけい部屋へやと、その対角たいかくにあるおくおれ部屋へやだけだ。

「これはおれ知識ちしきからのかんがえになるが、一般的いっぱんてきには部屋へやひろさを確保かくほするため、廊下ろうかくらいにするんじゃないのか?」

「そうわれりゃそうだな……けど、かる運動うんどうならしたにもひびかないし、結構けっこうできるんだぜ。大声おおごえすとおこられるけどな。そういうのは部屋へやなかでやれって」

「そんなものか……たしかに、スペースがあるのなら、部屋へやなかでやるよりは解放感かいほうかんもあっていいな。ちなみに全裸ぜんらてきたらおれ無言むごんばすからおぼえておけ」

おぼえてはおくが、そもそもてこねえよ。夏場なつばでもパンイチだよ」

「それならいい」

「いいのかよ……」

 そういう連中れんちゅう見慣みなれてる。むしろ、全裸ぜんらるもんだから、そのままてくる馬鹿ばかおおかった。

 したりると、すでおんな連中れんちゅうあつまっていた。

「ああ、たか。さきはじめさせてもらっている」

にするな。おまえ忍耐にんたいりょくなんぞ期待きたいしちゃいない」

「なんだと!」

 文句もんく無視むしして見渡みわたせば、料理りょうりはこんでいる寮母りょうぼ。それから三学年さんがくねん生徒会長せいとかいちょうをしているという――その役職やくしょく意味合いみあいはらないが――桜庭さくらば瑞江みずえがいた。こしまでとなが黒髪くろかみに、どこかぼんやりとしたかお。こいつなにかんがえていないんじゃ、とおもうほどのかおだ。

 そして、やや小柄こがらひとした一学年いちがくねんにいる、津乗つのり沙樹さき。なんだかドーナツがべたくなるようなものを、かみいて左側ひだりがわつくっているが、挨拶あいさつしたときいたところ、実家じっかはドーナツではないらしい。じゃあ何屋なにやなんだとたずねたが、がんばりだと返答へんとうがあった。こいつもよくわからん。

 総勢そうぜい五名ごめい寮生りょうせいに、寮母りょうぼ――なのだが。

「おい」

 おれけいから烏龍ウーロンちゃはいったグラスをりながらこえをかけるが、どうやらこえていなかったらしく、最後さいご一人ひとりかっておれう。

「おい、にくばかりって明日あしたあさ便所べんじょ後悔こうかいするタイプのおんなであるところの金代かなしろ、おまえだ」

「ああ?」

「どうしておまえがここにいるんだ?」

年上としうえには敬意けいいはらえ、敬意けいいを」

「だったら年上としうえは、敬意けいいはらわれる努力どりょくをしろ、努力どりょくを」

「ふん」

「――あれ、いてませんでしたっけ? 二代ふたよちゃんは、ここにんでいるんですよ、不知火しらぬいくん」

担任たんにん一緒いっしょ? いきまるだろう、おまえら」

「いやべつに。金代かなしろさんは、ちゃんとプライベイトを区別くべつするひとだしな」

「というか、ルイはきちんと公私こうし区別くべつしたらどうなんだ?」

横合よこあいからくちすような礼儀れいぎらずは、まずは自分じぶんってものを理解りかいして、一貫いっかんした態度たいどれるようになってから、かがみかっておなじセリフをったらどうなんだ?」

「このっ……!」

「あのう」

「なんだ、どうしたドーナツ……ではなく、津乗つのり

「ちょっとてルイ。なんでドーナツなんだよ」

あたまよこについているだろう。ドーナツがついに、販売はんばいばそうと苦肉くにくさくたのかとおもっていたら、間違まちがっていただけだ」

「お、おう……その発想はっそうはねえよ……」

「それで?」

「あーうん。ルイ先輩せんぱいって、カゴメ先輩せんぱいなかわるいの?」

「……? いや、そうえるかもしれないが、実際じっさいのところはらないな。なにしろ、おまえたちとおなじく、今日きょうはじめてった相手あいてだ。なかもなにも、ただの他人たにんだろう」

わたし貴様きさまのことが大嫌だいきらいだ」

「ああ、だから感謝かんしゃをしろ」

何故なぜだ⁉」

おれ悪口わるぐちうことで、ほかの連中れんちゅう円滑えんかつなコミュニケーションがれたんだろう? だったらそれはおれ成果せいかだ。それをまさか、自分じぶん上手うま他人ひとけられると勘違かんちがいでもしたのか?」

「ぬ、ぐっ……!」

「はいはい、追加ついかですよー。遠慮えんりょせずになんでもべてくださいね」

「うーん、なかわるいっていうか、波長はちょうぎゃくってるっていうか……うん、いま穂乃花ほのかさんにたすけられたね」

「うるさいぞ、沙樹さき。む、金代かなしろ殿どの! そのにくわたしねらっていたのだ!」

はやものちだ。あと年長ねんちょう優先ゆうせんだ。野菜やさいだ、野菜やさい風祭かざまつり

 おんなほう争奪戦そうだつせん野蛮やばんそうだな、これは。桜庭さくらばがぼうっとしていて参加さんかできていないが、おれったことじゃない。

本当ほんとう、ルイ先輩せんぱいってどうじないなあ……」

「ああ、それはおれおもった。なんかこう――いてる」

見知みしらぬ場所ばしょ一人ひとりきり。そういうとき必要ひつようなのは、周囲しゅういながされずにおのれることにある。それは慎重しんちょうさにつながり、すくなくとも後悔こうかいすることがなくなる」

「なくなるのか?」

後悔こうかいしたときでも、みとめられるといなおしたほう現実げんじつそくしているかもしれん。……まあ、もと性格せいかくもあるんだがな、おれ場合ばあいは」

 もっとも、周囲しゅういながされることがわるいともおもわない。ながれにるというのもまた、必要ひつようなことだ。

おれにしたって日本にっぽん生活せいかつ戸惑とまどうばかりだ」

「あれ、ルイ先輩せんぱいはどこでしたっけ?」

「アメリカだ」

「ってことは、カゴメ先輩せんぱいおなじじゃん」

「――アメリカといってもひろいぞ、沙樹さきわたしはイリノイにながくいたが、生活上せいかつじょう、あちこちに出歩であるいたものだし、どうであれ一緒いっしょにされたくはない」

「いちいちっかかるな、面倒めんどうおんなだな……」

「それは貴様きさまほうだろう」

津乗つのりあないたら、治療費ちりょうひくらいはらってやれ。おれはいつくかを、けい一緒いっしょけをしてもうける」

「なに不吉ふきつなことってるの! やだよわたし、この年齢ねんれい胃潰瘍いかいようとか!」

安心あんしんしろ、カゴメが料金りょうきんすから、おれ医者いしゃ紹介しょうかいしてやる」

「そっちで安心あんしんしたくない! まったくもう!」

「……、なあけい

「どうした」

おれまわりのおんなは、よくこうやってこえあらげるんだが、るいともぶというやつか?」

「あはは、ルイがおまえ名前なまえにかかってる冗談じょうだんならわらえるところだぜ、それ。――おまえ性格せいかくわるいんじゃね?」

ってるが」

ってんならなおせよ!」

馬鹿ばかうな、まだ裁判さいばん沙汰ざたにまでなっていない」

「なってたら大問題だいもんだいだろ……」

 くちわるいのは承知しょうちしているし、これでもだいぶおさえているつもりだが、まだあまいのだろうか。

「しかし、日本にっぽん料理りょうり美味うまいな。いや、それとも天来てんらい殿どのうでいのか?」

「さあ、どうだろうね。穂乃花ほのかだって、むかしから料理りょうりをしてたわけじゃないし、食材しょくざい鮮度せんどいってのも、にく関係かんけいないだろう、にくは。つまりにく正義せいぎだ」

金代かなしろ殿どのたしかににく美味うまいが、にくばかりなのはいかがなものか」

とり前菜ぜんさいうしがメイン、ぶたがデザート。ながれだろう?」

むねがぜんぜん、はらがふっくら、しりがでかい……?」

「ちょっ、なんで瑞江みずえ先輩せんぱいわたしほうて、とんだ間違まちがえをうの⁉ なんかディスられてんのかわたし!」

「……?」

「そこで可愛かわいらしくくびかしげるな! 訂正ていせい! だれ訂正ていせいちょうだい!」

かがみ自分じぶんでやれ」

「ルイ先輩せんぱいのとどめきた! ――きそうなんだけど」

「おいけい、ロリコンとしてフォローしてやれ」

おれさせんな! つーかおれはロリ方面ほうめん得意とくいとしてねえよ!」

「つまりこのなかでは金代かなしろだけがターゲットだと……?」

「ほう、なんだ明石あかしわたしだけがとしったババァだとそういたいわけだな?」

いたくないっす! ってねえよ! おいルイ、フォロー!」

「ん? ああ、かがみしわかぞえているのは天来てんらい趣味しゅみだ。一番いちばんのババァはすで決定けっていしている。――どう足掻あがいても二番目にばんめ金代かなしろだが」

「ああん?」

現実げんじつ直視ちょくししたくない気持きもちはわかるが、しかしおれ偏見へんけんたない。金代かなしろもまだ十分じゅうぶんわか部類ぶるいだろう。ロリコンマスターのけいからすれば、そうではないということらしいが」

「だからちげーよ! いやなんでそうなる⁉ ちょっ、いいからルイは年齢ねんれいはなしをすんな!」

「ほほう? 明石あかしはつまり、わたしにとって年齢ねんれいはなし禁句タブーだと、そううわけだな……?」

「あーもーこれどうすんだよ!!」

「あのう、わたしのフォロー、だれがしてくれるんですか……」

 ふうむ……なんでこうなるんだろうな? おれわるいのか?

 まあともかく、めし美味うまい。っぱ一枚いちまいでも、みずみずしくもあり、あまみすらかんれるくらいだ。こんなものがはいるというのは、本当ほんとうめぐまれている。もとよりあまりめしわないおれでも、ついびてしまうくらいだ。

「……あー、マジでひどった」

もどったかけい。どうした、めしったのならもっとうれしそうなかおをしろ。料理人りょうりにん失礼しつれいだぞ」

「おまえのせいだろうが!」

「そうなのか」

「ったく……まあでも、こうやってさわがしいのもわるくはないな」

いままではそうでもなかったのか」

「そりゃ、たまにはあったけど、本当ほんとうにたまにだ。金代かなしろさんはやっぱ担任たんにんだし、先生せんせいだ。桜庭さくらば先輩せんぱいはあの調子ちょうしだし、はな相手あいてもだいたい津乗つのりだったからな。ちなみに、津乗つのり直線ちょくせん重視じゅうしで、桜庭さくらば先輩せんぱいはコーナーや障害物走しょうがいぶつそうみたいなのを、のらりくらりとやるタイプ。――あ、ボードのはなしな」

「おまえはどうなんだ?」

おれはバランスタイプってところ。いまのところ、障害物系しょうがいぶつそう速度そくど競争きょうそうくらいしかないんだけどな……下手へたさわるとバランスをくずしてたおれるし」

「そういえば、まだ歴史れきしあさいのか?」

実際じっさい発売はつばいされたのが四年前よねんまえくらいで、こっちに配備はいびされたのが二年前にねんまえってところか? あんまり有名ゆうめいでもないし、設備せつびがあるわけじゃないしな。一応いちおう芹沢せりざわしてるポインタってのがあって、それを設置せっちしてれながら移動いどうする、なんてゲームもあるんだけど」

「なるほどな……まあ、スポーツとしてはむずしいのかもしれないな。結局けっきょく人気にんき左右さゆうするものだ、マイナーなほど肩身かたみせまい」

「それでもたのしんでやってるよ。土屋つちやもよくかんがえてくれるし。ってるだろ、ボード土屋つちや

「ああ、すずにならった。ったとおり、カゴメが購入こうにゅう検討けんとうしているからな」

活動かつどうもあいつが中心ちゅうしんになってうごかしてくれるからたすかるぜ。後輩こうはいだけどたよりになる」

「そんなものか」

 となれば、おれがボードにることになるのも、そうおそくはないのだろう。そうなったらなったで、どうとでもなるのでかまわないが――かくそうとしていないことを、あえてかくすというのも、また面倒めんどうだ。

 多少たしょううちあかかしておくのも、円滑えんかつ人間関係にんげんかんけいつくであることを、おれはよくっている。結局けっきょくはそのバランスだろう。

 そう。

 そのバランスがくずれたときが、一番いちばん面倒めんどうだ。できるのなら、自分じぶんくずしていったほういのである。


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