第6話 いざ、天界へ

 あれから数週間。

 何事もない平和な日々が続いている。

 でも、一つ気になることが。


「ねぇ、あなた…天使なのよね?」

「うん。そうだよ。…まだ信じてくれてないの?」

「いや、そういうわけじゃなくて…その、なんていうか…天使がいる世界とかって行けたりする?」

「天界に行きたいの?」

「……うん」

 だって気になるじゃない。天使がいる世界…そんなの、物語の世界でしか聞いたことないし…本当にあるなら──

「じゃあ行こうか」

「えっ……」

 いや、ちょっと待って。そんな気軽に行けるところなの?

 戸惑う私を気にもかけず、学校へ向かっていく彼。


 何事もなく学校を終え、放課後。

 いつもなら、私の家の前で別れるところだけど、今日はその隣。

 彼の家に入るの何気に初めてかも。

「さて、行こうか」

 そう言って彼は何もなかった空間に真っ白な何かを生み出す。

「これ、なに?」

「これ?ゲートだよ。さあ、行こう」

 彼はそう言って私の手を掴んだ。

 彼に言われるがまま足を進め、彼が開いたゲートの中へ。

 ゲートに入ると真っ白な空間に大きな扉。

 私が一驚していると

「君はそこに立ってね」

 彼はそう言う。彼の示した場所は、二枚扉の左側。

 床に謎の模様が描かれている。ここに立てばいいの?

 彼のほうを見てみると、同じく謎の模様が描かれた上に立っている。

 じゃあ、私も。

 私がそこに立った瞬間、模様が光だした。

 そしてどこからともなく声がする。

[承認。ロックを解除します]

 機会の音声…。ちょっとSFっぽい。

「よし。じゃあ行こうか」

 彼はそう言って、私をお姫様抱っこした。

「ちょ、ちょっと!急に何!?」

「僕から離れないでね」

 彼はそう言うと、いつの間にか開いていた扉の向こうへと飛び込んだ。

 飛び込んだ瞬間、咄嗟に目を瞑ってしまった私。

 目を開けるとそこは、おとぎ話に出てくるような大きなお城に、鮮明な虹、見慣れない建造物、個性的で美しい羽を背に飛ぶ天使達。

まるで、ファンタジーの世界に迷い込んだよう。あまりにも美しく、神秘的な世界。私はそんな美しい世界の空にいた。

「空…飛んでる……」

 彼の背中には綺麗な純白の羽が生えていた。

 そうだ、彼は本当に天使だった。

 人間界になじみ過ぎててすぐ忘れてしまう。

 空を、しかも天界の空を飛ぶなんてあまりにも異次元すぎて、不思議で、辺りを見わたしてしまう。

気が付くと大きなお城にと到着していた。

「ねぇ、ここ……」

「僕の家だよ」

 驚きすぎて言葉を失った私と、何も気にしていない真の前に、純白のドレスを纏った女性が現れる。

「あら~シェルちゃん。お帰りなさ~い。いつ帰ってきたの?もう~帰ってくるなら連絡くらいしてくれてもいいに~」

「母上。ただいま戻りました。連絡しようと思ったのですが、急に戻ることになったので連絡できませんでした。申し訳ありません」

「あら~そうだったの~。気にしなくていいのよ。ところで…シェルちゃんの後ろにいる子は…人間ちゃんね!シェルちゃんの恋人、可愛いわね~」

 なんか、ポンポン話が進んでて頭が混乱してきた…。

 あ、自己紹介しないと。

 そう思った瞬間、後ろから声がする。

「やぁ、シェル。お帰り」

 振り向くと……表すなら純白の王様…みたいなかっこいい男性がいた。

「父上。ただいま戻りました」

 急に色々起こりすぎて戸惑っていると、彼が私の方へ向き

「紹介するね。こちらがが僕の母上でこちらが父上。お二人とも、彼女は────」


 一通りの自己紹介を終え、落ち着いたかと思ったら

「まぁ~本当に可愛い子だわ~。私とお茶しましょ~」

 真のお母さんに手を引かれ、綺麗な花たちが並ぶ花園へと連れて行かれる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る