第4話 愛しのメリー

僕は彼女を愛していた。


ドライブ、遊園地、レストラン、僕らはいつも一緒だった。

ふたりでたくさん写真を撮った。

たくさん思い出を作ってきた。

幸せな日々がいつまでもいつまでも続くと信じていた。


でもそれは、何もかも許された愛ではなかった。

無理解や偏見、嘲笑と罵声。

世間は僕らふたりにどこまでも冷たかった。

世界中が敵に見えた。

だから僕らは毎夜ふたりきり、きしむベッドに優しさを持ちよった。


その彼女を僕は捨てた。


僕らの愛は現実という怪物に飲み込まれ敗北したのだ。

僕は浴びるように酒を飲んだ。

でもどんなに悔やんだところで彼女は戻ってくるはずもなく……。


と、着信音。


『もしもし、あたしメリーさん』


そんなまさか……あり得ない!


『今あなたの後にいるの』


振り向くと昨日山に捨ててきたはずのダッチワイフがそこにいた。

ああ……メリーさん……こんなに泥だらけになって……。


固い固い抱擁。



メリーさん、ああメリーさん、もう離さないッ!

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