第3話 怖い夢

「……なた?あなた?」


「うわぁッ! 」


「あなた大丈夫? だいぶうなされてたわよ」


「ああ、おまえか……すまない。なんだかとても怖い夢を見ていたようだ」


「すごい汗よ」


「とても怖い夢だったんだ……とても」


「きっと疲れているのよ」


「なのにどんな夢だったのか、ああ、もう忘れかけている」


「そんなに怖い夢なら無理に思い出すことないじゃない」


「こういうのは思い出さないと気になる性分でね」


「嫌だ……怖い話なんて聞きたくないわ」


「たしか夢の中で俺は……」


「やめて、聞きたくないってば」


「夢の中の俺は……ひとりだった……」


「……」


「愛する妻もなく」


「……」


「心を許せる友もなく」


「……」


「定職もなく、学校も出ていなくて……いや、そもそもずっと引きこもりで無為に年を重ねて、親が老いて亡くなってから俺は……精神を病んで入院していたんだ……」


「……」



「なあ……あれはただの夢だよな……本当に夢の……なあ、おまえ?おまえ……?」

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