第2話 コピー&ペースト

「麻酔から覚めればあなたはピカピカの健康体ですよ」


『クローン治療』

それはボロボロになった身体を治療するのではなく、クローンで新品の身体を用意し、そこに患者の意識を移植する最新の医療技術である。

私は眠り、そして目を覚ました。


「どうです?記憶に問題はありませんか?」


「ああ、問題はないようだ」


記憶は完璧だった。

家族のこと、学生時代のこと、銀行の暗証番号もちゃんと覚えている。


「それにしても寝て起きたらすっかり健康体とは、すごい時代に……痛ッ……痛い、くそ、ぜんぜん治っていないじゃないか!」


「しまった!」


医師が慌てて機械を操作すると、隣のベッドにいた患者がむくりと起き上がった。


「……問題はないようだ。それにしても寝て起きたらすっかり健康体とは、すごい時代になったものだな 」


そいつは私をチラリと見た。


「ああ、すみません。手違いで古い身体を起こしてしまいまして」


医師は言う。



「こちらはすぐに処分しますので」

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