2-11

「あの……先生?」


下から聞こえた琴子の声に現実へと引き戻され、永谷ははっと立ち止まった。

気づけばもう学校の入口についてしまっている。


「もう大丈夫です、たぶん歩けます。それにこの格好をみんなに見られるのは……その……恥ずかしいし」


一瞬視線をかわし、気まずそうに笑う2人。

そっと地面に下ろしてもらい、琴子は脚に力が入ることを確認した。

大丈夫だ。歩ける。

時折永谷の手を借りながら、琴子は駐車場へと向かった。



「っ! 琴子!!」


いち早く琴子の姿を見つけた翔の声と共に、クラスメイト達が次々と彼女たちのもとへ駆け寄る。


(良かった……!)


彼らも無事だったのだ。

永谷から聞いてはいたものの実際に会えた時の安心感はまたひとしおで、琴子はまた少し涙ぐんだ。


「いきなり一人で教室飛び出して、何してたんだよ!

心配したんだからな!」


思わず責めるような言葉を言った翔の肩に、響が宥めるように手を置く。

琴子は申し訳なさそうに口を開いた。


「ごめんね。大和が下にいると思ったらどうしてもーーー」

「先生!!! ねえ、目開けてよ!!!」


突然、琴子の言葉を遮るように泣き声が大きく響いた。

ぱっと視線を奥に向けると、軽トラックの荷台に小さな人だかりができていて、周りでは他の教員たちが懸命にそこに近づくことを制止していた。

引き離される生徒たちの隙間から見えたのは、ジャージを着た脚。

とても見覚えのある色をしていた。

さっと血の気が引くのを感じる。


(藤先生っーーー!)


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