第11話 悪役のデザイン・前編

 さて実際に悪役をデザインする場合、どこから手をつければ良いでしょうか。


 まずは外見、性格、口調、身長、体重、好きなもの、嫌いなものといった「パーツ(または属性)」を組み合わせ、キャラクターを作っていく手法が考えられます。


 このアプローチは取りかかりやすいですが、うわべの特徴しかない空っぽなキャラクターが生まれる危険性があるので、注意が必要です。




 たとえばこんな魔王。


「赤髪ツインテールで竜の翼が生えていて、巨乳の美少女。得意技は炎のムチ。とんでもない魔力を持っているがドジッ娘でツンデレで……」


 これだけでは記号の集合体です。たまたま誰かが似たような組み合わせを選んだら、即座にキャラクターがかぶってしまいます。


 差別化のために、もっとパーツを追加する手もあります。オッドアイ、片方の角が折れている、尻尾が九十九本ある、口調がサムライっぽい……等々。しかしそれには限度があります。パーツを詰め込みすぎたキャラクターは作者にも読者にも想像しづらいですし、描写するのが大変になります。


 となると作者が書きやすく、読者も想像しやすい範囲でキャラクターを作らざるを得ず、結局は誰かが作ったキャラクターと似てしまいます。真剣に考えたのに二番煎じと呼ばれたり、パクリ扱いされたら嫌な気分ですよね。




 そこで、ちょっと考え方を変えてみます。


 誰かと設定がかぶるのは仕方ない。分かりやすいキャラクター作りを優先しよう。それならパーツを減らしたほうが特徴を掴みやすい。いっそのこと、独創性のないキャラクターに魔王をやらせたらどうだろう。それはそれで面白いんじゃないか?


 次回はこの発想に基いて、ステレオタイプな女性キャラクターを魔王に据えたらどうなるかを考えてみます。

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