第3話どこへいく?逃げるのです

玉座の間にて

「3人の様子をしっかりとみておけ。

恐らくナギは赤ん坊を連れて逃げ出すだろう」


「はっ、了解いたしました」

王の直属の騎士団に伝えるバラーク

現在直属の騎士は4人おりそれぞれ

1人目の騎士はこの騎士の団長である

パラディンの称号を持つ

聖騎士 ファレット


2人目はドラグーンの称号を持つ

竜騎士 ローズレティ


3人目は ウィザードの称号を持ち宮廷魔術師の

魔法使い クロイツ


4人目はサムライの称号をもつ

侍騎士 ナギ

レイの父親だ



「バラーク様発言よろしいでしょうか?」

ファレットは疑問をもっていた。

詳しい事情はわからないが生まれたばかりの孫を

本当に殺してしまってよろしいのか?

いつもなら質問などしないが

今回はどうしても胸騒ぎがしたために質問をする。


「うむ、もうしてみよ」


「いくら何でも生まれたばかりのバラーク様の孫です。

そしてこれからは王子として生きるはずだった子です。

明日本当に死刑執行にするのでしょうか?」


ここにいるバラーク、ローズレティ、クロイツは

驚いていた。

いつものファレットならこんな事は言ったりしない。


「ほぉ〜驚いたぞ。ファレットお前がそんな質問をするとはな。よければ聞かせてもらえぬか?お前の問いには

後に伝えよう。」


「はい。特に深い意味はありませんが、強いて言うならばただの感です。

あの子は大きくなると私の直感です」


「くくっ、あははは

そうか、お前の直感かそれなら大きくなるかもしれんな」

そこまで言い一息つくバラーク






「ただあの子はツノが生えていた」

バラークがそう言った瞬間3人が前に振り向く。


バラークが驚きのまま問う

「なっ、それは本当でしょうか?

遠目からしか見ていませんが信じられません」


「あぁ本当だ。

我も信じられん。嘘だと思っていたが我もこの目でみた…


だから今ここでそなた達に秘密裏に行ってほしい任務を与える。ナギを捕まえた後のレイの処遇についてだ」








時刻は真夜中の2時


「ソニー頼んだぞ」

レイを抱えたナギが走り出す。

「かしこまりました」

ソニーもナギとは逆の方向に走る

お互いに黒いマントをまとって



「このままマントをまとって城内を走り回れって

確かに侍女の私ならばお城の中に詳しいとはいえ

結構きついですよ」


独り言のように愚痴をこぼすソニー

そこで一旦走るのをやめる

後ろ姿が見えるためにこっちをみていない

城内を見回る騎士がいたからだ。


「早速見回りの騎士がいましたか。

まだ騒ぎを大きくするには早いので

とりあえず彼には気絶してていただきますか」

いい笑顔のソニーは早速魔法を使う。


『ウォーターボール』


ただの初級魔法だがこれも魔法の使い方だ。

ウォーターボールを騎士の後ろからただ当てるのではなく、頭を包み込むようにする。

騎士は一瞬のことで驚くが助けを呼ぼうとするが

頭全体を水で包まれているため助けが呼べない

するとどうだろう苦しみから解放されたように

2〜3分経った頃に騎士は倒れる。

実際には開放も何も

普通に気絶しただけで、ただたんにひどい。


「ふぅ〜やっぱり気絶させるにはこれが簡単ですね。

効率もいいですしまだまだ城内を逃げ回らないといけないので失礼しますね」


ソニーは騎士が死んでないかだけをみて

倒れた騎士が気絶なのを確認する。


見回りの騎士を見つけるたびにソニーは

同じように気絶させる。

そんなやりとりを5回ほど繰り返す。

同じように騎士が死んでないかを確認する。



するとソニーの後ろから…


「この気配は妖精かしら?」


ソニーはすぐさま後ろを向き、身体を身構える。

ソニーの後ろから声をかけたきたのは

ものすごく整った顔をしている女性でありナギと同じ

王直属の騎士団であるローズレティであった。


「あなたは…レティ様

どうしてここにいるか聞いてもよろしいですか?」


「そんな事聞かなくても分かるでしょう?

あなた達を捕らえるためよ。

貴方の周りに妖精がたくさんいるのが分かるから

見つけるのは簡単だったわ。

もしかしてだけど貴方フェアリーテイマ?」



「ツッ、よくお分かりですね。流石はドラグーンの称号を持つ事はあります。」


「そんな事はないわ。

たまたま私が竜眼と竜の加護を持っているだけよ

だから貴方の周りに妖精がいるのが視えるわ。

貴方ものすごく妖精に愛されてるわね。

貴方を守るために私の前に立ちふさがっているもの…


それでどうする?

歯向かうかここで大人しく捕らえられるか…

私少し興味あるのよね

妖精とドラゴンどっちが上なのか」


ローズレティは微笑む

その微笑みはまさに竜の様に獰猛な笑みに間違いない。

このままではナギが捕まってしまうとソニーは

焦り始める。するとローズレティは追い討ちを掛けるかの様に言う。


「あぁナギの所には団長とクロイツが行く予定になってるわ。どれだけ持つのか少し楽しみであるわね」


ソニーは絶望な状況に唾を飲み込む。








ナギ側

「おいおいワイバーンまでいやがる。

これはローズまで警備してるってことか?

ローズとクロイツだけならまだしも

団長まで警備に回っていたらほんとにヤバいぞ」

クソと罵るナギ



ナギは先ほどから騎士達に遭遇しない様に上手く城を走っていた。

そして現在城の地下にある大きな扉の前に立っていた。

ナギは別に地下に向かって走っていたわけではない。

騎士達に遭遇しない様に走っていたら

まるでそこに吸い込まれるかのように

地下に向かっていたのだ。


「とりあえず中に入ってみるか」

ナギは大きな扉に手を添える。

そして一気に押す。すると扉は少しずつ開き

ナギは自分が入れる大きさになると手を添え外し

中に入る。

その部屋の中央の地面には複雑な魔法陣が描かれていた


「これは召喚魔法の魔法陣…」


「流石です。よくお分かりですね

まぁ今回は人目のつかない地下室の方が

都合がいいのでこの部屋に来させましたが

どうでしたか?」


「クロイツ…やはりお前も城の警備に回っていたか。

と言う事は俺は間抜けにもここに誘導されていたことかそれにしても何故バレた?」


「ただ単にバラーク様が見抜いていただけだ

その赤子を連れて逃げるとな」

「そう言う事ですよ」


後ろの扉からキィーと扉が開く音がして

そう声をかけてくる。


「はぁー、団長まで警備に回っているのかよ。

嘘だろ」


ナギの頬に一筋の汗が零れ落ちる。

後ろの大きな扉からファレットが入ってきたのだ。


ナギはこの状況をなんとかしようと必死に考え始める


「無駄な抵抗はよせ。

大人しくその子を渡すんだ。

渡さなければお前は牢獄で暮らすことになるぞ」


「はいはいそうですかって

そう簡単に自分の子供を渡すと思うなよ団長、

団長とクロイツが相手になるなら手加減はできない

たとえ俺が死ぬ事になってもこの子は逃すぞ」


「ふっこの状況でよくそんな事が言えるなナギ

私だけでも一苦労なのにお前の相手は私とクロイツだ

手加減する暇などあると思うなよ」


ファレットとナギはお互いに剣をぬく

ファレットは直剣

ナギは刀お互いにお互いを睨み合う


「最後にもう一度言うその子を渡せ」

「レイは渡さない」


ナギがそう言った瞬間ファレットは突進するかのように

ナギの元へ走り出し剣を右上から左下に剣を振るう

ナギはその動きに合わせ居合斬りの

要領で切るのではなく受け流す

受け流しが上手いき立ち位置が変わる


「レイ少し待っていてくれよ」

ナギはレイを自分の後ろの少し離れた所にレイを置く

そしてナギは視線と剣先を2人に向ける


「こい!」


ナギはその場所から動かずに2人に殺気

を向けて威圧する



「ならば遠慮なくいくぞ」

「僕も忘れないでくださいね」

クロイツは魔法を使いファレットを援護する


そうして戦いが始まる。


ナギは2人がレイに行かない様に

気をつけて戦う。

しかし戦いは一方的だったと言わざるをえない

ナギはてこずっていた。

攻撃をしようとすると

クロイツの魔法の援護に邪魔され

守りに入るとファレットとクロイツの連携にてこずる

しかしナギは大きなダメージの攻撃は上手く避け

最小限のダメージですんでいた。


「やはり赤ん坊を守っている状況では

戦いにくいかナギ?

いつもの様なキレがないぞ」


「ッッツ、隙さえあればレイを

奪う気だろう?」

「その方が早く終わらせれるからな」


戦いは激しくなっていく一方だった。

剣と刀がぶつかり合う。

ファレットは叩き潰すかの様に剣を振るう

ナギは当たりそうな攻撃だけ防ぎ

それ以外は避ける。

しかし避けると言っても少しのミスで

取り返しのつかないことになる。

ナギは野生の感ともいわれるその直感で判断していた。









「そろそろ日が昇ってくるな…

このまま長引けば騒ぎになるだろう

クロイツそろそろ終わらせるぞ」

「わかりましたよ団長

かなりの魔力を使う事になりますが

隙を生むならこの魔法を」


クロイツは大魔法を使うために詠唱する。


「風ノ精霊ヨ 膨大ナ魔力ヲ糧ニ 我ノ願イヲ叶エロ」


『エアー・ストップ』


ナギの体が止まる

いや正確にはナギの周りの空気が止まったのだ


「ぐっ、体が動かん、

クソがぁ、クロイーツッッッ!」


「これで終わりだなクロイツ、

その魔法どれくらい持つ?」

「はぁはぁはぁ、魔力量にもよりますが

今回は約10分です」

「わかった」


「くそ団長、レイに近づくんじゃねえぞ!

あぁ体が動か、な、い」


ナギは顔を赤くして叫ぶ

ファレットはそんな事を気にせずに

レイの元へ歩きだす。

そしてたどり着きレイを抱える


「かわいいな、ナギ。」

「当たり前だ!俺とロールの子だぞ!」

「ふっ、間違いないな、お前はともかくロール様に

似ているよ。それにしても本当にツノが生えているな

鬼族か…」



ナギはこの窮地をどうすれば抜け出せるかを考えていた。しかし体が動かない状況ではどうしようもない

このままではレイは死んでしまう。

それならいっそ賭けに出ようと苦肉の策を思いつき

マントの中に隠していたこぶし大の

魔力石を使いその策に賭ける。


自分のありったけの魔力を床の魔法陣にこめる


「空間ノ精霊ヨ 空間ノ魔力石ヲ糧ニ 願イヲ叶エロ」


『ターゲット・テレポート』


魔法陣が眩しく輝き辺り一帯が光に染まる


「なっ、そんなバカな」

ファレットとクロイツは眩しくて目が開けられず

目を瞑る。

そしてファレットは腕に抱えたレイがいなくなるのを感じる。

「ナギィィィ!!!!!」


そして光が収まる

その場に居たのはナギとファレットとクロイツの3人のみだった。


「レイ、お前を1人にするのを許してくれ」

ナギは涙を流しレイが1人になる事に不安を抱いていた。魔物に食べられるかもしれない。

奴隷に売られるかもしれない。

それでもこのままでは死んでしまうのは確実だ。

生きて欲しいからこそ魔法を使った。


「くそ、クロイツどういう事だ。

これは召喚魔法陣なはずだ。なぜ転移できる?」

ファレットは今起こったことが信じられないと

クロイツに問いかける。


「これはやられましたね。

そうですね、もともと召喚魔法と転移魔法は

同じ空間魔法であり、彼の詠唱から考えるに

空間ノ魔力石を代償にこの魔法を

完成させたのでしょう。

そしてこの床に描いている魔法陣は

特別性であり召喚魔法と転移魔法どちらも

発動させる事が出来るのです。

これは宮廷魔術師と王族しか知らない情報なので

恐らくロール様から聞いたのでしょう。

まさか1人だけ転移するとは恐れ多いことを」


「くそ!場所はわかるか?」


「今の詠唱からだと、場所は全くわかりませんね

捕らえることは難しいでしょう」


「そうか、とりあえずバラーク様に報告だ。

ナギ貴様は牢獄行きだ。そう簡単に出られると思うなよ?クロイツ、そいつはもう魔力がもうない。

牢獄に連れて行け!」


ファレットはそう言い地下室から出て行く

「はぁー全く人使いが荒いですね。

それにしてもナギさん流石ですね。

まさか転移魔法を使うとは」


「お前、こうなる事ある程度読んでいただろう?

どういうつもりだ?」


「まぁー色々あるのですが。

強いて言うならバラーク様の命ですからね。

まさかレイ様1人だけを転移させるとは、

こうなるなら話をしとけばよかったですかね?」


「そういうことか、まぁ話をしとけばよかったな

やってしまったことはもう戻らない。

レイ無事でいてくれよ?」

そう願うナギ








王の寝室にて


「そうかそうなってしまったか…

全くどうしてこう裏目にでてしまうのか…

ナギに知られないように

クロイツにナギとレイを転移させるつもりだったのだがな」



「捜索はしますか?」


「いやいい、どこにいるかもわからないのだ」


「わかりました。

それとナギの処遇ですがどういたしますか?」


「そうだな、城にいる皆はロールが妊娠していたのは

知っているこのままでは怪しまれるだろう。

ナギには悪いが子供を殺したと罪をかぶってもらう

しばらくは牢獄で暮らしてもらうつもりだ。

それと奴の侍騎士の職から外れてもらう」


「はっ、仰せの通りに」





そしてナギの称号はサムライからアウトローになる。








とある島


「コレは人間の赤ん坊…」


その人物の影からは2本のツノが生えているのがわかった。

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