水の旅路
少し進んだ未来のお話。世界はどこまでも綺麗だった。綺麗とは言っても景色の話などではなく人に害をなしうる存在などはほぼ無く貧富の差も解消されありとあらゆる全てが清潔で満ち足りた世界。不満を持つ人間などどこにもいなかった。しかし例外は古来よりどんなところでも存在する。この場合は不潔な、いや、普通の人間にもに害を与えることで生き長らえる存在だ。言ってしまえばばい菌、更に言えば水虫菌である。彼らにとってこの世界は満ち足りた場所などでは無くこの世の地獄だ。ネズミだろうがなんだろうが取りつく島も無ければ有益な菌意外を抵抗も持たせずに死滅させる万能薬、それも人体に一切害を与えないものにより建物は構成され、手を出すことはおろか動くことすらままならなかった。そんな中彼らを率いる頭領たちが現状を打開すべく会議を開いた。
「このままでは我々が絶滅するのは時間の問題です!」
「何かいい案はないのか!!」
いい案などは存在しない事はこの場にいる全ての菌が理解していた。そして、彼らに残された道は2つだった。1つはこのまま滅びを待つこと。そして2つ目は
「こうなったら新天地を探すしかない!みんないきましょう!」
そう、2つ目はありもしない新天地を探しかすかな希望を抱くこと。しかし彼らにとってそのかすかな希望は決意をするには十分過ぎるほどだった。こうして種の存続をかけた世紀の大移動が始まった。様々な苦難を超えて数日、いや、数ヶ月数年、永遠ともいえる時間彼らは旅を続けた。最初の頃は比較的大勢いた仲間も8割ほど死滅してしまっていた。そしてついに彼らは見つけたのだ。管理の行き届いた世界の外に。その前には川が流れていた。その川を越えるのにもう1割の仲間が死滅した。越えた先の世界は彼らが生きるにはうってつけだった。しかし彼らは絶滅した。この世の全てが管理されている世界での例外、これが何を指すのか。そう、この世でない場所。そんな世界の住人、幽霊に足などあるものか。
いや、この世でなくなったときにはもう遅かったのかもしれない。
そんなセカイも つかいかた @yoho
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。そんなセカイもの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます