3『ー転ー』

『ほら…ギターはこうやるんだよ…』

小6の私と、中2の姉。

姉の笑い声が私と姉の部屋で響く。

楽しそうな姉の顔を見上げると、光で見えない。

ただ、口元は満面の笑みであった。


『くっそ…勉強なんてしたくないのに…早くギターやりてー!』

中1の私と、中3の姉。

一緒の通学路で、一緒に学校へ通っていた。

受験期になると、姉は私と遊んでくれなくなった。

自分もいずれなるであろう勉強漬けの姿を、ただ見つめていた。


『私はこの髪型が気に入ってるって言ってやったんだよ。

 やっぱバンドやるなら、見た目もインパクト大事でしょ!』

中2の私と、高1の姉。

だんだん姉と過ごす時間が少なくなってきた頃。

でも私は、本気で姉の夢を応援してたから…

行かないで、なんて言えなかった。


『よし、行ってくるかな…ちゃんと受験勉強するんだよ!

 私は夕飯くらいには戻ってくるから。』

中3の私と、高2の姉。

私も姉のように受験勉強漬けとなった。

スポーツ、音楽、人望、勉強…すべて完璧だった姉。

スポーツ、音楽、人望、勉強…すべて微妙だった私。

同じ高校に入ろうと、精一杯に努力した。

私は気づいていた。

私は過去の姉と並んでも、絶対に勝てないんだって。

でも、少しは追いつきたい…その一心で頑張った。


『それであいつさ、なんて言ったと思うよ?

 お前なんか知らねぇよ!だってさ…むかつくなぁ…』

高1の私と、高3の姉。

季節は7月…姉に彼氏が出来た。

毎日のように彼氏の話を聞いて、正直悔しかった。

無事に姉と同じ高校に入れて、また毎日一緒に登校していた。

しかし夏休みが明けると、姉は彼氏の悪口を言うようになった。

毎日のように彼氏の話を聞いて、正直嬉しかった。

そして姉はまた、バンドに打ち込むようになっていった。

そんな姉の姿を追いかけるように、私もお古のギターを練習した。

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