第10話 過去の曲がり角

「楓香ちゃん、今日も来てくれたんだね」

美奈……

「うん…あとね、斉藤先輩も連れてきたんだよ」

「えっ!?せ、先輩!?あわわわわわ…」

美奈は顔を真っ赤にして動揺している。そうか、美奈は斉藤先輩が好きだったんだね…。

「美奈…久しぶりだな。元気にしてた?」

えっ、ちょ、待って。オカマじゃない斉藤先生イケメン過ぎ…誰このイケメン…

「せっ、先輩!お久しぶりです!!……ううっ…先輩に会えるなんて思ってもみなかったよぉ…」

美奈、よっぽど先輩に懐いてたんだろうなぁ。てか好きだったんだもんね。

「あのさ、美奈」

「あの、先輩!」

「…………」

2人の間に気まずい沈黙が流れる。

「美奈から先に言って?」

「あ、はい、あの…私、先輩のこと、ずっと好きでした…でも私なんかが告白したって迷惑だろうなって…先輩、一人でいるの、好きでしたもんね」

美奈………すごい。今ここで言う勇気があるんだ。

「だから私、先輩をずっと影から見てることにしたんです…それだけで、幸せだったから」

「…っ!!美奈!!!」

先輩が美奈に抱きつく。美奈がよろけた。

──そして、先輩がはっとした表情をしたように見えた。

「せ、先輩………!」

「……ごめん、俺帰るね」

「えっ、ちょっと!先輩!?ねぇ!!てか待てこらオカマ教師!!!」

私は慌てて走って行った先輩…いや、オカマ教師か…を追った。


【side 斉藤先生】


美奈……僕のこと、そんな風に思ってたんだな…僕は昔から暗くて、冴えなくて、人前に出るのが嫌で…でも、ダンスは好きだった。本当はセンターで踊りたかったさ。

でも…僕がセンターで踊ったって誰も嬉しくないだろう?見に来る身内なんていないし、友達だって来てくれない。だから、バックダンサーでいいんだよ…そうだよ…。

正直、僕も美奈が好きだった。こんな僕に何でも相談してくれた彼女は僕の太陽だった。生きる希望を与えてくれた。



でも、彼女は───もう僕の手の届かない所にいる。



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