第6話 晴香

〈side晴香〉

怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

何で居るの?何で?ナンデアラワレタ?

「星野美奈…あんたは…あんたはっ…」

私は昔、星野美奈に激しい嫉妬を抱いていた。あの子はダンスが本当に上手くて、プロ顔負けの技術を持っていた。星野とちょうど同じ時期にダンススクールに入学した私は、何かと星野と比べられた。


〈んー、ダメね。もっと自分を表現して〉

──これでもかってくらいやってるよ。

〈ほら、美奈みたいに。あの子を見習って。〉

──無理だよ。そんなこと。

〈晴香、あなたも十分上手よ。でも、美奈には叶わないわね〉

──そんな…私、私……悔しいよ……

どれだけ頑張っても先生は認めてくれない。星野美奈に勝てない。

そんな時、私より少し遅れて入った唯と亜美が私に囁いた。

〈晴香ちゃん、あんなに頑張ってるのに美奈に勝てないなんて可哀想〉

〈私は晴香ちゃんの方が上手いと思うなぁ〉

〈ねぇ、晴香ちゃん〉

〈美奈が邪魔なら、消してみない?〉

──消す?

〈…どうやって?〉

〈いじめるんだよ。あの子を。もう2度とスクールに戻って来れなくなるまで〉

〈怪我させちゃうのもアリだよねぇ〉

──この子達、天才なの?私と同じ5歳なのに…そんな素晴らしい発想が出来てしまうの?

そうだよ…星野美奈さえ消えれば…私は…頂点に立てるんだ…

〈…そうだね。楽しそうだね…やろっか〉

こうして私達の『星野美奈撲滅運動』は始まったのだった。

最初は自分たちで衣装を隠してその罪を星野になすり付けるぐらいのことしかしなかった。

でも──もっと、もっともっと、もっともっともっともっと───

私達の嫌がらせはエスカレートしていった。階段から突き落としてみたり、すれ違い様に殴ったりもした。

そしてある日、星野美奈はスクールに来なくなった。やった、私達の勝ち。

先生曰く、〈足の怪我のショックから立ち直れていない〉そうだ。先生達にもバレず、私達は自らの手で星野美奈を追いやったのだった。

ある日、私が尊敬する先生からこんなことを聞かされた。

〈美奈ちゃん────だって〉

これは絶対に森山楓香には言うなと言われた。私の尊敬する先生の言いつけだもん。まだ森山には言っていない。



星野美奈がいなくなったことで、今では私がこのダンススクールで1番上手いダンサーなんだ。センターの座は誰にも渡さないから。最近よく斎藤先生に褒められる。「晴香、verygoodよ!!」とか言って。

そうよ、そうそう!!もっと、もっともっと、もっともっともっともっと!!私を褒めて───────!

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