第2話 声
「おはよ…」
「楓香ああああああああ!!!!!」
教室に入るなり莉子が飛びついてきた。
「莉子…どうしたの?」
「数学の課題!やってないよおおおお!!!」
「…んで?」
「見・せ・て♡」
「だが断る」
「ええ〜!?そんなぁ!」
「潔く原田先生に怒られてきなよ」
「だって!!これ以上忘れたら私放課後掃除なんだもん!!」
「教室綺麗になるしいいじゃんw私達の教室綺麗にしてよ莉子ww」
「ひっどぉぉい!!!楓香ひっっっっどぉぉぉい!!!」
全く莉子は。全然学習しないんだから。
その後も気だるい授業が続いた。早くダンススクール行きたいな。…莉子は途中までいないけど。
そして数学の時間。
「課題をやっていない者は速やかに立て」
莉子が席を立つ。果たして莉子の他にもやっていない人は居るのだろうか……って、ですよねー!!!!!皆やってありますよねー!!!!!原田先生怖いですもんねー!!!!!!
「おい赤崎!!!!!今日で何度目だ!!!!!約束通り放課後掃除な!!!」
「ひっ!は、はい……」
クラス中にどっと笑いが起こった。あーあ、莉子、水野くんに笑われてるよ…水野くんは莉子の想い人。サッカー部でカッコよくて男女問わずすごいモテる。普段は可愛い系なのに、サッカーをやるとなるとこれまためちゃくちゃカッコイイから、そのギャップに惚れる人も少なくないんだとか。
「どうしよう…穴があったら入りたい…」
「お疲れ莉子☆水野くん笑ってたよ〜?」
「うえええええ!!!??」
「『あいつバカだなぁっ』って小さく呟いてたし?」
「えっ!?…でも、水野くんからなら褒め言葉かも…♡」
「…莉子、あんたヤバイね」
「……で?莉子は放課後掃除あるから今日のレッスンは遅刻するってこと?」
昼休み。隣のクラスの有紗を呼んで3人で屋上でお弁当を食べる。
「あ、楓香クッキー食べる?」
「やった!欲しい!!ありがと!」
「うぅ…だって楓香が課題見せてくれないから…」
「「課題は自分でやるものでしょうが!!!」」
有紗と見事にハモる。
「ふぇ、ごめんなさぁい…」
何で怒られたのを私のせいにするかなぁ!こいつは!!水野くんに言いつけてやろうか。すると有紗も同じことを考えていたらしく、
「…ちょうどあそこに水野居るし、私が言いつけてきてあげる」
「ひええ!!それだけは勘弁してぇ!!」
「じゃあそんなこと言った罰として、私達にコロッケ奢って」
「えっ!?酷くない!?」
「「何が??」」
またまた有紗と息ピッタリ。
「2人とも私の扱い酷すぎるよぉ…」
莉子がそう呟いたところで昼休みは終わった。
「……え、莉子が遅刻ですって?」
「はい、あの…」
「あいつ課題忘れて罰として居残り教室掃除なんですよ」
私がどう言おうか言い淀んでいると、有紗が代弁してくれた。
「何ですって!?バカなの!?あの子ほんっっとうにバカなの!?」
あーあ、莉子がそういうことばっかりしてるからさすがのオカm…いや、斉藤先生も怒っちゃったよ…
「あれほど課題はやりなさいって言ってあるのに!!」
…今度は斉藤先生がお母さんみたいだ。
莉子が来て、斉藤先生にお説教され、レッスンも終わってさあ、帰るぞー!しっかし今日の斉藤先生、メイク濃かったなぁ。
「楓香、行くよ…今日は莉子にコロッケ奢って貰えるんだからね」
「うぅ…有紗、まだ覚えてたの……?」
「当たり前よ。言い出したの私だし」
「あはは、有紗さす…(楓香ちゃん)……え?」
「ん?どうしたの楓香」
「いや、今私の名前を呼ぶ声が…」
「えーー?私聞こえなかったよー?」
「私も聞こえなかったわ。きっと空耳だから、ね、行こ」
「うん…そっか…行こ…(楓香ちゃん!空耳なんかじゃないわ。今すぐこのビルの最上階へ来て)……」
「ふーうーかぁー!!!ねぇってばぁー!」
「……ごめん、2人とも先帰ってて!」
と言って私は走り出した。今の声に聞き覚えがある。
「え、ちょっ、楓香!!」
「楓香ぁー!楓香の分奢らないよー!?」
「莉子!また今度奢って!!」
もしかして、今の声って……
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