君への愛言葉

Chica Sunny

第1話 日常

「はい!!今日はこれで終わりよ!皆お疲れ様!!」

斉藤先生(男性)の声で今日のレッスンは終了した。ちなみに先生は「(自称)永遠の17歳の乙女」だそうだ。

「ありがとうございましたー」

「楓香(フウカ)!帰ろ!」

「有紗(アリサ)!お疲れ!!」

「あ、2人とも待ってよ〜」

「莉子(リコ)早く!!もう私お腹空いた〜!」

なんて、いつものように他愛もないやり取りをしながら私達3人は帰る。あ、私の名前は楓香。莉子と有紗とは同じ高校。ちなみにダンススクールのあった日は3人でコンビニのコロッケを食べてから帰るのが習慣なのだ。

「莉子!!早くしないと置いてくよ!ほら、楓香も!1番遅かった人、奢ってもらうから〜」

「あ、待って有紗!莉子早く!!」

「2人とも酷〜い!!」


「でさ、斉藤にさー、腕思いっきり掴まれたの!!」

「えー、やだぁw」

「それセクハラじゃんww」

「何で私ばっかり触るかなあのオカマ講師…」

「有紗が可愛いからじゃない?」

「ちょっと!莉子は!?」

「うんうん、莉子も可愛い可愛いw」

「思ってないでしょそれ〜!」

やっぱり3人で居るのは楽しい。有紗や私の愚痴を話し合ったり、莉子の好きな人の話をしたり…このメンバーは何でも話し合える。いわゆる『親友』だ。

「それにしても莉子、どれだけ食べれば気が済むの?」

「だってお腹空いたんだもん!」

莉子はコロッケにチキンにポテトを食べている。夕飯前なのに…

「この前だって、お母さんに怒られたんでしょ?」

「うっ、でも…」

「いいから、もうやめときなさい」

「はぁい…」

「……何か有紗って、莉子のお母さんみたいだね」

「嫌だよ莉子の母なんて」

「有紗酷い!!!!!」


私はこのスクールに5歳の頃から通っている。私が入った頃、美奈(ミナ)という子と晴香(ハルカ)という子がいた。私は美奈ととても仲が良かった。でも、美奈は足の怪我を理由にスクールをやめてしまった。私が8歳の時だった。でもそれは表向きの理由であって、美奈がスクールをやめた本当の理由は…

美奈の怪我の原因は──晴香だ。

美奈はダンスがとても上手かった。だから大会でもソロの部では代表としていつも美奈が出ていたし、グループの部だって美奈がセンターだった。そんな美奈に嫉妬した晴香は美奈を階段から突き落としたのだ。美奈が大会に出られないように─

初めのうちは怪我をしていても美奈はスクールに来ていた。晴香はそれも気に食わなかったらしい。そしてその日から毎日晴香とその子分による美奈へのいじめが始まった。わざと足を引っ掛けて美奈を転ばせたり、美奈の聞こえるように陰口を言ったり、無視したり…

私は美奈の傍に居続けた。大丈夫、大丈夫、と励まし続けた。美奈はいつも笑顔で「楓香が励ましてくれるお陰で、あいつらの嫌がらせも乗り越えられる」と言ってくれた。

でも、そんなある日─美奈はスクールに来なくなってしまった。その時私が担当してもらっていた先生は「足の怪我のショックから立ち直ってないみたいなの」と言っていた。でも─私にはわかる。美奈が晴香にいじめられていて、それを理由にやめたんだってことを─

私は美奈の連絡先を知らなかったし、美奈とはそれきり会っていない。

今頃元気でやっているだろうか…


なんてことを考えていたら家に着いた。今日は数学の課題が沢山出てるんだっけ。数学の先生怖いからやらなきゃ。













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