恩人たちとの談話

 急激に意識が浮上する感覚――

 心地よささえ感じるその感覚に抗うことなくゆっくりと目を開いていれば、見覚えのない天井が網膜へと飛び込んできた。

 

 ――はて? と、その光景に疑問を感じる。


 この光景はいったいどこの物だろうという疑問と、何故光景の左半分が真っ暗なのかという二つの疑問が俺の寝ぼけた脳内に浮かんできた。

 とりあえず左半分が見えないのは、顔の半分が何やらに覆われているかららしい。 


 とりあえず疑問の一つである視界不良の原因を探るべく、触れて確かめてみようと思った。



 ――瞬間、動かそうとした左腕に激痛が走る。



「っ!! ――いっつぅ!!」



 左腕に感じた痛みに反応して、思わず右手が左腕を抑えようと動かそうとしたが、どういうわけか右腕は左腕以上の痛みが響いたため、それ以上動かすことが出来なかった。


 暫し痛みに悶える俺――俺の視神経を直接いたぶるような痛覚の波を鎮めるために、荒れる呼吸を整える。

 深く息を吸い込んでは、肺の中身を空っぽにするために空気を悉く吐き出す――


 しばらく深呼吸を続けていると、痛みは徐々に落ち着いてきた。

 俺は痛みが引いてきたことに安堵して今一度大きく息を吐き出した。


 ――そうして俺は思い出す。この体の痛みが何故の事かを思い出す。

 あの隻眼の魔獣との死闘を思い出す。



『……そう…か、俺は灰色狼あいつと戦闘になってボロボロになったんだった。とりあえず生きてるってことはあの状況が何とかなったってことで……いいんだよな?』



 現状を確認する為にあえて言葉にして独り言を呟いてみるも、その呟きは尻すぼみで終わってしまった。

 それは自信が無いからに他ならなかった。

 俺の頭の中に残っている記憶は、最後の最後――渾身の攻撃魔導を放ったところできれいさっぱり、ブチリと途切れている。

 今こうして生きていることを鑑みれば――あのかき集めた賭け金魔力を賭けた賭けに、辛うじて勝てたということだと思う。


 ……――だけど、本当にあの時はギリギリだった。


 ――土壇場でそのことに気が付けたからいいものの、もし気が付かなかったと思うとぞっとする。

 

 もしそのことに気が付けていなかったら、恐らく俺は今頃あの灰色狼グレイウルフの腹の中に納まっていただろうから――




「おう、目ぇ覚めたのか、案外早かったな」




 ――と、物思いに耽っていた俺に向かって、不意に声がかけられた。

 首だけを動かし、唯一開いている眼を声のした方に向けてみれば、そこには浅黒い肌の女性を先頭にした四人組の女性たちが立っていた。


 

「――えっと、どちら様でしょうか?」



「まぁ、その反応で普通だよな――、簡単に説明するなら、お前を此処に連れ込んだ張本人さ」



「――すみません、此処はいったいどこなんでしょうか?」



「あぁ、此処はグランセルの冒険者専用の医療施設さ。ヴァンクールの隣に立ってる建物だ。知ってるか?」



 俺の問いに割と気さくに答えてくれたのは、先頭に立つ浅黒い肌の女性だった。

 彼女の発した言葉を頭の中で反芻させ――そこでようやく気が付いた、そうか、何故俺は直ぐに気が付かなかったのか。

 言われてみれば、この場所には微かに見覚えがあった。五年前に俺が初めて反発暴走リジェクトアウトを起こした時にお世話になった場所だった。


 そして同時に理解した――こんな状態の俺を此処に運んできてくれたこの人たちが――俺の命の恩人だということに。 


 

「……お名前を」



「あん?」



「――あなた方のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」



 だからこそ、これは絶対に聞いておかねばならないことだった。



「ああ、別にかまわねぇよ――俺はアスタルテ、一応戦乙女ヴァルキリーってパーティーのリーダーをやってる」



「私はメリッサだよ――よろしくね?」



「――僕はルサリィだけど……別に覚えてくれなくても構わないから」



「……ロロ、だよ?」



「アスタルテさんにメリッサさん、ルサリィさんにロロさん……」



 俺は恩人たちの名前を呟きながら心の中に刻み付けてゆく。


 この人たちのおかげで俺は今こうして生きていられる。

 結果は見るに堪えないものだけれど――ボロボロで傍から見ればさぞかっこ悪く映るのだろうけれど――それでも俺はどうにか命を繋ぎ、この世界に未だ留まっている。


 それを思うと、不意に心の奥底から熱い感情が湧き上がってきた。

 色々な思いが混じっていてるせいで明確な名前を付けられるものではないけれど、あえて感情の中で一番近似しているモノに例えたならば――それはきっと”歓喜”という名前がつけられることだろう。


 生きているという、凄く当たり前で――実は一番重要なこと。

 普段は気にも留めないその事実は、失いそうになって初めて気が付く――否、失ってから初めて気が付くものなのだ。



 ――この人たちのおかげで死なずに済んだ。



 これで父さんと交わした約束を違えずに済む。この世界にいる大切な人たちと別れずに済む。

 そう思うと無性に嬉しくて――ただ嬉しくて――俺は素直に涙を流していた。



「ど、どうしたんだいきなり泣き始めて」



 いきなり泣き始めた俺を見て、一様にギョッとした表情を浮かべるアスタルテさんたち。

 そんな彼女たちの姿を目にして、一つ、重大なことに気が付いた。




 ……――そういえば、俺はまだこの人たちにお礼の言葉を述べていない。




 その事実に気が付いた俺は、殆ど何も考えていない状態で一つの行動を行っていた。


 ――奥歯を噛みしめて両腕を動かす。


 動かすと同時、つい先ほど味わったばかりの呼吸を困難にさせるほどの痛みが襲い掛かってきた。

 とはいえ先ほど呼吸が困難になったのは不意打ち気味にその痛みを味わったからだ。


 痛みは確かにあるけれど、覚悟が決まっていれば我慢できないほどじゃない。


 俺は精神力を振り絞り、包帯でグルグル巻きにされた腕を支えにして強引に上体を起こした。



「お、おい、確かに表面上傷はふさがっちゃいるが、まだ完全に治ったわけじゃねぇ。まだ動かない方が――」



 俺の行動に対し静止の声を掛けてくるアスタルテさん

 ……確かにアスタルテさんの言う通り、ここまで無理に動く必要はないのかもしれない。


 でも、それでも俺は命の恩人たちに言っておきたいことがあった。

 今の世界イリオスでは馴染みの薄い行為あるらしいけれど、そんなことは全く持って関係ないこと。

 『頭が下がる』なんて言葉が前世であったなぁなんてこと不意に考える。

 

 今の俺は正にそれだった。


 ベッドの上で正座をして、両腕を前に着き、流れる涙はそのままに頭を下げる。



「――助けていただいて、グスッ、本当にありがとうございましたっ、このご恩は一生忘れませんっ!!」



 俺が今できる最大限の礼――『土下座』を敢行する。


 静かに、それでいて盛大に涙しながら、いきなり仰々しいまでの感謝を示す行動。

 それを人がそれなりにいる医療機関の中で、感謝の言葉を結構な大声で言いながら行えば、周囲の人たちから注目を集めるのは当然の事だった。

 しかも『土下座』を敢行しているのは、包帯でグルグル巻きになっている子供。


 そんな光景がいきなり目の前で展開されれば、奇異の目で見られること間違いなし――そんな行動をされる側は当然迷惑以外の何物でもないことだろう。

 事実、冒険者ギルドのチーム”ヴァルキリー”の皆さんの戸惑いは目に見えるほどに明らかだった。


 

 

 

 ……………




 …………………




 …………………………




「ふーん、それじゃあ君は、ムーングラスの採取のために草原シュプロジュールへ行ったけど、採取の途中で指定討伐の魔獣に遭遇しちゃったわけね……」



「……災難」



「でもだからって魔獣と一対一マンツーマンで戦うなんて無謀としか言いようがないよ、一歩間違えれば君は死んでたってことを忘れちゃだめだよ?」



 稍あって、土下座の体制であった俺を強引に寝かせつけてきた”ヴァルキリー”の皆さん。

 そんな折、彼女たちは俺が何故この様に傷だらけになったのかを聞いてきた。

 何でも彼女たちは俺が意識を失う直前に”風刃”オリジナルの魔導を放った場面を目撃しただけらしい。

 

 一人前の冒険者集団である戦乙女ヴァルキリーの皆さんに、半人前以前の初心者でしかない俺の拙い戦闘を目撃されていたという事実は、こうなんというか、如何ともしがたい恥ずかしさを覚えるが、それでも恩人たちからの質問に応じないなんてことは出来るわけもない。

 俺は仕方なく、隻眼の灰色狼と戦闘になるまでの一部始終をかいつまんで説明することにしたわけだ。


 そして、その結果頂いた言葉が今しがたの其れである。



「――その、なんというか……僕としても魔獣と戦う気は全然なかったんですよ? ただ、あの灰色狼グレイウルフは風魔導に特化してたのかやたら速くて……逃げられなかったんです。寧ろ遭ったのが普通の灰色狼グレイウルフだったら普通に逃げてたと思います。――僕は死ぬわけにはいきませんから」



 そう、

 退路はなく、進むべき道も限られていたあの時の状態では、いずれにしろ俺が取れる行動はあれしかなかったと思う。

 むしろ、あれしかなかったから――という行動を大胆に行えたからこそ、もしかしたら俺がこうして生を繋げるきっかけになったのかもしれない。


 まぁ、結局のところ結果論でしかないのだけれど――



「まあなんだ、あの時の坊主の選択が正しかったか――なんてことは俺たちにはわかんねぇさ――」



 俺のかいつまんだ説明を聞いて、俺の言葉の、最後の呟きを聞いて――アスタルテさんが言う。

 紫がかった瞳を、真っ直ぐ俺へと向けてくる。

 視線を合わせる、目を見て話す――俺が少しだけ苦手にしているそれを、この人は当たり前みたいに行っていた。



「――ただ、お前さんはこうしてちゃんと生きてんだから、ってこった。そもそも、冒険者やってりゃ臆病なくらいが丁度いい――俺たちの後輩が無謀なだけの馬鹿じゃなくて一先ず安心したわ」



 含蓄深い言葉を零しながら、俺の頭を少しだけ乱暴に撫でてくるアスタルテさん。

 その様子にはタブるところがあって、俺は不意に今は亡きロニキス父さんを思い出す。


 ……――そういえば、俺が良い行いをした時には決まってこうやって頭を撫でてくれたっけ。


 アスタルテさんの掌の感触は、父さんの其れとは当然ながら違うけれど。

 俺はその心地良い感覚に、思わず片目を細めた。



「っと、そういや忘れるとこだった。ほらよっ――」



 ――唐突だった。俺の頭を撫でてくれていたアスタルテさんは、その最中何かを思い出したらしく、唐突に腰につけた道具袋の中から小さな布袋を取り出してきた。

 はて、これはいったい何なのか……なんて考える間もなく、彼女は俺へとその袋を差し出してくる。


 半ば反射的に、比較的損傷が軽度な左手でそれを受け取ると、小さくカチャリと金属音が聞こえてきた。 


 中身が気になった俺が、袋を開けて覗きこんでみると――そこには結構な枚数の銀貨が入っていた。





 ――それを目にして思わず固まる俺。




 硬直から立ち直るまで約十セクンドの時間を要して、ようやく俺の思考は再び動き出す。



「っえ、ちょっ、なんですかこのお金!? 凄い大金ですけど!!」



 頭の中に浮かんできた疑問をそっくりそのまま投げかける。

 アスタルテさんはというと、焦る俺を不思議そうに眺めている。



「なにって、占めて九十万カルツ――此処の治療費を差っ引いて上で、今回お前さんが為した偉業に対する報酬だよ。準四等級に相当する指定討伐魔獣の報酬にしちゃあちょっとばかり少ないが――それでも新人ルーキーの初報酬としては破格だろうさ」



 それに――と、アスタルテさんは言葉を続けた。



「今回お前さんが達成したのは魔獣討伐だ。だからこういうオマケもついてくる」



 アスタルテさんは銀貨の入っている布袋を俺の手から拾うと、下部を指でつまんでそのまま袋を逆さに吊るした。

 緩んだ口からは銀貨がジャラジャラ零れては、ベッドの上へと落ちてゆく。

 

 っと、そんな光景に一つだけ大きな異物が混じっているのが見て取れた。

 

 ベッドの上には銀貨と共に大きな翠色の塊が一つ――


 その物体を目にして、それが一体いかなるものなのか――俺には直ぐに理解できた。

 それは隻眼の灰色狼グレイウルフとの戦闘の最中幾度となく目にした物体だった――だからこそ鮮明に覚えていた。



「これはまさか、隻眼の灰色狼の魔石ですか?」



「こいつは”頭がない灰色狼グレイウルフの死骸のそばに落ちていた魔石だよ”、お前が一番良く分かってるだろ――こいつは質が良い、捨て値で捌いたとしても金貨一枚百万カルツぐらいの値が付くだろうさ」



 その金額に眩暈を覚えた。

 魔獣を討伐するにあたり最大のメリット――それはを手にすることが出来るところにあるといっても過言ではない。


 なぜ魔石がこのように高価で取引されているのか、それはその利用用途と希少性ゆえだ。


 魔石は魔導の出力を増加ブーストする役割を持っているため、魔導士ソーサラーが好んで杖なんかの装備品に使用したりする。

 また見た目は宝石のように煌びやかであるため装飾品に利用されたり――結構重宝される物品なのだ。


 だが、見た目宝石のようであっても決して鉱石ではない――入手手段はという一点に限定される。


 一匹の魔獣を討伐して得られる魔石の量は微々たるものだ。


 いくら需要が多くても供給量が少なければ、必然その物品に着けられる値段というものは跳ね上がってしまう。

 その結果が最低金額金貨一枚なんて馬鹿げた金額になるわけだ。


 ……二年間もの歳月をかけて、ギルドの登録費用五万カルツをやっとの思いで捻出したというのに――こんな風に大金が入ってくると、少しだけやるせなくなってしまう。


 いや――初任務の内容を思い返せばこの金額はむしろ適正なのか――


 この職業冒険者はどうしたって他の職業と比べて、

 そして、だからこそのハイリターン。


 それが、この職業冒険者なのだ。



「魔獣を倒したのはお前さんだ。だからこそその魔石はお前さんに好きにする権利がある。売っ払うも良し、自分の装備品に使うもよし。まぁじっくり考えな」



「……――ありがとうございます。でも、銀貨の方はそうでもないですよね?」



「あん?」



「僕を医療施設ここまで運んできてくれたのはアスタルテさんたちです。依頼の後処理もやっていただきました。それに僕はまだあなたたちにお礼を返していない」



 ベッドに広がる銀貨――アスタルテさんの言葉が正しければ、此処には九十枚の銀貨があるはずである。

 俺は銀貨を大雑把にひとまとめにすると、手早くその枚数を数えた。


 ……――にーしーろーやーとー


 急ごしらえで数えた枚数は、四十五枚。



「……僕も入り用なのであまり多くはお渡しすることは出来ませんが。どうか半分持って行ってください」



「おいおい、いいのかよそんなに――確かに依頼の後処理をしたのとお前をここまで運んできたのは俺たちだが、俺たちがしたのは逆にそれだけだぞ?」 



「いいえ、決してそんなことはありません。、それをアスタルテさんたちには使わせてしまっています。むしろ少ない位ですよ」



 そう、この金額四十五万カルツでは少ない。

 彼女たちであれば一流の冒険者四人の集団パーティーであるならば、その使わせてしまった時間で、これ以上の稼ぎを出すことだって可能だったかもしれないのだ。

 

 これぐらい渡しておかなけれな罰が当たってしまう。


 ――少ないと、そう言い切った俺を見て、ポカンとした表情を浮かべる戦乙女ヴァルキリーたち。

 だが、その表情も長くは続くことはなかった。



「そんなに気を使う必要はないですよー」


 

 メリッサさんは優しく微笑みながら手を振った。



「……メリッサに同意、ホントに十歳?」



 ロロさんは三角帽子のつばと口角を同時に押し上げた。



「そこまで考えられるなんて凄いね、僕も見習わなくちゃいけないかな?」

 


 ルサリィさんは苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。


 そして残るアスタルテさんは――



「そこまで言われちゃ、突っぱねる訳にもいかねぇな。確かにこの金はありがたく貰っておくぜ」



 ――嬉しそうに笑いながら、俺の差し出した銀貨を受け取った。

 

 その表情は何を思って浮かび上がったものなのか――それは分からなかったけど。

 でも、俺が家事の手伝いをした時に浮かべる、イリス母さんの笑顔とダブって見えた気がした。



 これで、少しは四人の恩人たちに報いることが出来ただろうか?





 ――――





 ――――――――





 ――――――――――――ん? 四人?





 そこまで考えて、ふと俺は小さな事実に気が付いた。



「っと、すみません。四人では丁度いい額じゃありませんでしたね? これも一緒に受け取ってください」



 俺は今しがた手渡した銀貨にさらに三枚を追加する。

 突然の金額増加に不思議そうな表情を浮かべるアスタルテさんたち。



「ん? 何だこの銀貨三枚は? なんで改めて取り出したんだ?」



「だってアスタルテさんたちはのパーティーですよね?」



「――ああ、でもそれが何だってんだ?」



「いえ、ですからこの方が楽かなって思いまして――十二万カルツっていう半端な額ですけど、これなら銅貨は必要ありませんから」



 そうなのだ、四十五万カルツでは四等分した時に銅貨が必要になってしまう。

 そこまでの気遣いが出来ないなんて、俺はまだまだ未熟らしい。



「お前、あの一瞬でそれを計算したのか?」



「えと、どういうことでしょうか?」



「どういうことってお前――いや、いい、きにすんな。商人みたいな速さだったから驚いただけだ。またなんか困ったことがあったら言いな、そん時は手ぇかしてやる」



「ええ、その時はよろしくお願いします」



 若干戸惑ったような声で返答してきたアスタルテさんは、何やら吐き出しかけた言葉をそのまま飲み込んで、代わりに別れの言葉を切り出してくる。

 少しだけ飲み込んだ言葉が気になったが、これ以上彼女たちを引き留めている理由もないので、俺はそのまま彼女たちを見送った。


 


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




――医療施設の外にて――



「――おい、お前らあいつどう思うよ」



「戦闘面は申し分ないですよね? 魔獣を一人で仕留めるくらいですから」



「気配りが出来て頭も良い――ロロじゃないけどホントに十歳なのかって疑わしいよ。僕自信なくなっちゃうなー」



「……逸材」



「――だよな? あいつスゲーいいと思う。俺たちの仲間に入れられねぇかな?」



 一つの冒険者パーティーがそんな密談をしていることなど、アルクスには知る術もなかった。

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