同じ居候同士宜しく

大きな山々に囲まれた小さな村、石と藁で建てられた住居、どこかで見たことがある典型的な田舎町だった。

どんな村?と聞かれたなら、「日本の戦国時代を思い浮かべてみて」といえば何となくだがしっくりくる気がする。

リノンと共に歩きながら、俺は独り言を呟いた。


「しっかし何もねーのどか過ぎて逆に退屈だー...」


俺の独り言を聞き、彼女は微笑んだ。その微笑んでいる彼女に俺は一つ質問してみることにした。


「ここの村の人ってあまりいないみたいだね。リノン含めて数十人って本当なんだ。リノンって今は一人で住んでいるの?」


「え、ええ...。今は居候さんと一緒に住んでいますが家を空けることが多くて、基本的に一人です」


「俺だったら寂しくてなんかやだな」


「そんなことないですよ。アルさん」


リノンは足を止め、


「例え今が一人で寂しい思いをしていても、ずっと一人なんてことありません。いつか一緒にいてくれる人がいると思うんです。そうでなければ悲しいじゃないですか...」


「...かもな」


俺にそう告げた。


-

---


その後、彼女の住居へ帰る間に色々とこの世界の取り巻く状況を更に教えてもらった。


「ここは東西南北、中央国で分割された大きな大陸。5つの大国がそれぞれ統治していたけれど、3年前程前から各国の領主が襲われたり殺害されてしまったの。大国が今まで統治していた町や村は大荒れしたわ。内乱や亡命が繰り返され、既に大国が統治する力が残っておらず、王が統治する時代は終わり、人々は自分の力で生き残っていかなければいけない状況になった」


彼女は一呼吸置き、続けて答えた。


「この村にいる人達は隣国から逃げてきた人が集いできた集落なの。私もその一人...とある国で召喚士として活動していたのですが、山賊や暴徒の襲撃から国を守り切れず限界を迎えてしまいました。やがて国が滅び多くの同志を亡くしてしまいましたが、今ここにある生を大切に生きてゆくことにしました」


話を聞く限り、まるで戦時中だった。俺の想定していた平和な世界での村作りとは程遠い状況なのだろう。

生き残るために守り、守り続けなければならない世界。

生き残るために逃げ続け、生きねばならない世界。


まるでこの世界は、俺のいた現実世界と大差なく根本的に同じじゃないか。

俺はこんなごった煮な世界を望んじゃいない。帰る方法を早く見つけるべきだと心から感じた。


色々と思い返しているうちに、リノンの住居に到着した。

木製の住居、築20年程といったところか。居候含め2人で住むには大きそうな家だ。


「しかし、大きな家ですね」


「住むには勿体無さすぎるほど大きいですが」


玄関の扉を開け、履物を脱ぎリノンは先に駆け上がって行った。


「どうぞ居間に上がって待っててください。今お部屋の準備をしますね」


俺も履物を脱gー


アル「ん?」


リノンのサイズとは違う別のサイズの履物がある。

噂の居候さんだろうか。


「そこの客人さん」


居間からリノンとは別の女性の声がした。


「先程リノンから話は聞いたよ。こっちに来て休みな」

「は、はい」


-

---


居間でくつろいでいる女性が一人いた。

20歳前後で身長は180辺りと背が高く、モデル向けの体格。

肩まで伸びたゆるふわな銀髪、薄着からはみ出た少し露出し過ぎな褐色肌が色鮮やかに芽生えする。

薄着が着崩れし肩が肌蹴ているし、大きな胸色々と見えてるし直視しにくいです。はい。


今の机の上には酒瓶と御猪口が置かれている。

まだ夕刻を迎えた時刻だというのに、色々と出来上がりかけている様子だった。


「君も旅人かな?それとも国を追われた放浪者かい?」


「いや、違います。リノンさんに呼ばれて、召還されたんです」


「そういや、リノンは召喚士だったな」


彼女は物珍しそうに俺をジロジロと全身を見てくる。やはり外の世界から召還された者は物珍しいのだろうか。

確かに彼女らの衣服と俺自身の衣服は違う。この世界では考え方も生き方も違う。


グランさんは御猪口を手に持ち、注がれていたお酒を一気に飲み干した。


「紹介が遅れたね。私は流浪の旅人をしているグランというものだ。各地を転々として旅していてな、今はリノンの住居に居候している」


「俺はアルっていいます。今日召還されてからまだ数時間しかたっていないんですが色々と教えてもらいました。この世界について」


「そうだろう。色々と目新しいことばかりで、元にいた世界とはイメージが違うだろう。始めは誰だって迷ったりするだろうな。さして君は"アタリ"だな」


「"アタリ"っていうのは何ですか...?」


「犯罪・反逆行為及び危険思想を持っておらず、主を信じて従う者だ。反逆せず主に都合のいいタイプ。まさに主にとって理想なタイプじゃないか。君はこの世界に呼ばれる前は召使いなどやっていたんじゃないか?」


俺は犬か。そんな身分で喜ぶ身柄じゃない。

だがリノンみたいに召喚士が優しい人ばかりじゃないんだろう...もしリノン以外のヤバい主が上だったらと思うと...。


「そんなわけないですよ。俺は只の一般人ですよ。元いた世界じゃこんな命のやり取りのあることしてないですよ。俺はただ平凡で誰もいないところで悠遊過ごしたいんです」


「それが出来れば苦労しないさ。この世界は特にね。君はこの世界にとどまりたいか?それとも元にいた世界に戻りたいか?」


「今は戻りたいですね。命を大事にしたいんで」


「そうか」


グランさんは机の上の御猪口に酒を注ぎ始めた。


「まぁ君の人生だし、リノンとの契約も色々とあるんだろうしな。そこは当人達で決めることだな」


グランさんは色々と旅してきたからこの手の話に関して色々と知っているのだろうか。

後で色々と伺ってみることにしよう。


「さて、そろそろ晩飯の時間だな」


部屋の掃除を終えたリノンは台所に直接向かい、そのまま夕食の準備を始めた。

このままお世話になるのもあれなので手伝いに行くことにした。

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