第14話 ヨークタウン、決戦(下)
「くらえいっ! 蒸気爆裂槍!」
バルバロッサ大佐の駆る鈍色の蒸気精霊騎が、吸血鬼を打ち倒す白木の杭に似た巨大な槍を突き出した。
「それは届かないっ……なに!?」
距離を取って回避したはずの槍の先端が、爆発的な蒸気とともに飛び出した。甲高い金属音とともに、アークエンジェルの大剣が根元からへし折れる。
「よくやった、マーサ!」
「へ、へへへ……ぐ、偶然ですけどね! って、どうやって素手であんなのと戦うんですか!?」
目の前でバルバロッサ大佐の機体は、あらたな仕掛け槍を取り出していた。
「仕方ない、武器管制をこっちによこしてくれ。一か八かやってみる」
パウルは駆動系と武器管制系の操縦を同時に受け持つ。蒸気精霊スクリーンいっぱいに肉迫した敵の蒸気精霊騎の姿が写る。その瞬間、パウルの両手と両足がピアニストのようにめまぐるしく駆け巡った。
「ば、ばかなっ!」
バルバロッサ大佐は目の前の光景を信じることができなかった。目の前のいたアークエンジェルが視界から消えたのである。
「し、下かっ!?」
アークエンジェルは爆裂槍を寸前でかわし、その身体をひねるように大佐の機体の下に投げ出していた。そして……
「喰らえ、ハンドアンカー!」
至近距離から射出されたハンドアンカーは、装甲の薄い下肢部のジョイントの隙間から、大佐の機体を貫いた。
大佐の蒸気精霊騎は一瞬硬直し、そのまま崩れ落ちた。
「ひゅー! パウルさん、最初っから二役こなせたのでは?」
「冗談はやめてくれ……こんな曲芸、集中力が20秒も持たない。残りは?」
手持ち無沙汰の間、外部モニタリングをしていたマーサはよどみなく答えた。
「ラファイエット公、フェルゼン公、ともに無事。ブリタニア帝国軍の蒸気精霊騎は全機戦闘行動を停止。あ、コクピットから出てきましたね……あ、白いハンカチを降ってる。降伏するようですね」
「オーケー……これでアメリア独立戦争は……終わりだな……」
そう呟くと、パウルは目を閉じてぐったりと座席にもたれかかった。
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