第10話 ニューヨーク、陥落
アメリア独立軍の本拠地となったニューヨーク。いま、そこでは第二回大陸会議が行われ、独立軍のトーマス・クラフト大佐により歴史的な宣言がなされようとしていた。
「われらは次のことが自明の真理であると見なす。すべての人間は平等につくられ、神によって、生存、自由そして幸福の追求を含む侵すべからざる権利を与えられている。これらの権利を確保する為に、人は政府という機関をつくり、その正当な権力は被支配者の同意に基づいていなければならない。もし……どんな形であれ、政府がこれらの目的を破壊するものとなった時には」
彼は大きく息を吸い、固唾をのむ議員達をゆっくりと見渡した。
「それを改め、または廃止し、人民にとってその安全と幸福をもたらすのに最もふさわしいと思える方法で、新しい政府を設けることは人民の権利である!!」
演説が最高潮を迎えたその瞬間、議員達は脚を踏み鳴らし、帽子を振り回して同意の叫び声を上げた。トマス・ジェファーソンによって書き上げられたその『独立宣言』は、深く人々の心を打ち、この宣言がなされた7月4日以降、さらにアメリア独立の機運は高まっていく。また戦場の兵士達の心の支えとなったのであった。
***
だが、ニューヨークという土地は、攻めやすく、守り難かった。マーサの率いるアメリア大陸軍は、深刻な武器と弾薬不足に悩まされていた。
「とほほ……フランシュからの支援は、まだですかねぇ〜。このままじゃ、クリスマスは屋根の下では迎えられそうにありませんよ?」
「士気の低下も心配だな。義勇兵の中から離脱するものも出てきている」
ほどなく、パウルの懸念は現実のものとなった。クリスマスを目前とした12月23日、ブリタニア軍はニューヨークに対して総攻撃を行ったのである。
アメリア大陸軍は散り散りとなり、2万人を超えたアメリア大陸軍は、わずか3000名となった。残兵はマーサとともに凍りついたデラゥエア川を渡って脱出。バレーフォージと呼ばれる寒村に潜むことを余儀なくされた。
独立軍の最後の砦、バレーフォージにブリタニア帝国の制式蒸気精霊騎軍団が迫る。そのとき、現れたのは……。次回、『フランシュ王国、参戦』 猛る蒸気が未来を拓く!
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