第46話 実はタクシーの後部座席にのると、酔いやすいんですよね~
その後一旦部屋に戻り、着替えを済ませて日焼け止めを塗っていると、梶本さんから電話がかかってきた。
「あっ私だけど、ちょっとロビーまで来てくれないかな?」
「えっ?まあ、いいけど」
「ありがとう!じゃあ待っている、急いでね」
いまいち理由が分らないまま、頭を掻きながらロビーまで行くと、梶本さんがロビーの玄関口付近で手招きしている。
「梶本さんどうしたの?まだ集合時間じゃないと思うけど」
「来てくれてありがとう!さあさこちらへどうぞどうぞ~」
なんでいきなり言い方が丁寧なんだ?
言われるままにホテルの玄関から出ると、梶本さんは何か嬉しそうな表情をして立っていた。
「今日も暑くなりそうだね、コーキはあついのは大丈夫?」
「まあ、極まれにオヤジに頼まれて夏の工事現場で作業とかもするから」
「そうなんだ、偉いなあ。私は朝起きるのも、暑いのも慣れないなあ」
「そうなんだ」
「でも今日は……」
""どんなに暑くても一気にコーキとの距離を縮めるんだから、ばっ場合によっては既成事実的なのも...""
「うん?何か言った?」
「いや、何でもない」
だけど梶本さんって少しだけ目がきつい感じがするけど整った顔だよね。身につけている黒のブラウスも、薄いグレーのスカートも高級ブランドなんだろうけど自然な感じで嫌味がないよな。関口が好きになるのも分る気がする。
そんなどうでもいい事を考えていると梶本さんの表情がさっきまでの嬉しそうな表情から、口元を少しだけ左右に一瞬だけ歪ませた。これは何か悪い事を考えている時の清水君の表情に似ている!!
ただ僕がそれを指摘する前に梶本さんは力強く言い放った。
「あっあっ嘘!ロビーで伝説のプロゲーマー ウメハラと ときどが取っ組み合いの喧嘩してる!」
「え?嘘!どこどこどこ? 」
振り向くと、ロビーではインド人の団体さんみたいな感じの人が、チェックインしていた。
「なあんだ、ウメハラなんていないじゃない...」
「へへ...いっつも私には騙されちゃうんだね~さあそのまま後ろに下がって、でないと...」
「でないと...って?」
「また思いっきり!抱き着いちゃうよ~」
梶本さんがジャンプするように僕に突っ込んできて抱き着いてきた。もちろん梶本さんのどこかのふわふわの部分が強く押し当てられてくる。頭に血が昇るのがわかる。
「うわっちょっちょっと!もうすでに抱き着いてるでしょう!」
ああ...ダメだ...暑いのもあってどんどん目の前がモノクロになっていく....
次の瞬間、僕は肩を思いっきり押され、ホテルのタクシーに乗り込まされてしまった。
何だ何だ何だ?
意味不明状態の僕。
「ヤッター!作戦成功~!」
「どういうこと?」
梶本さんはすばやくタクシーのドアを閉める。そして不適な笑みを浮かべて宣言した。
「これから今日一日は、コーキは私と組んで白石さんを探すの!」
「えええ!!!」
なんて強引すぎ!う~ん経営者のDNAだろうかね!いやそんなこと考えている場合じゃない。
「これはまずいよ梶本さん。勢いでタクシーに乗っちゃたけど、清水が言ったとおりこれからどうするの?僕スマホ以外財布も何も持ってきていないし、海外初めてで方向音痴だよ。梶本さんもあんまり得意じゃないよね」
この前梶本とサイクリングした記憶が蘇ってくる。星がや運動公園の森林コースは1周20分もかからないコースだったのに、梶本さんが飽きたからショートカットしようと言い出した。
その後はご想像の通りコースを外れ、いつの間にか大宮区の埼玉スタジアムに到着してしまった。そして戻れたのは16時だった、その後には筋肉痛だけが残った。
「大丈夫!その為にこれをパパの会社のエンジニアに作ってもらったの!!じゃ~ん!!」
「何これ?」
梶本さんのアイパッドに表示されたのは追跡βと表示されたアプリ。
「特性白石追跡アプリ!AIβ準備してもらったんだから!」
嗚呼、パパの部下さんおそらく徹夜で作ったのね、南無合唱。
「まあ、それは良かったね。でも何処から探すの?」
「フフン、そんな事この端末に聞けば良いんだよ。この端末は白石菜月がこの前録音した以外の知人、友人との過去のメール、チャットデータが全て入力されていて、ビックデータ化されたものがアクセス出来る様になっているんだよ!」
すげ~さすが清水が頼りにしている情報屋!
「そうなんだ、僕には全然わからないやごめん」
「まあ、簡単に言うと彼女の趣味、思考なんかをAIに記憶させてそこから何処にいくか確率で予想してくれるんだよね、まあ見ててよ」
そう言うとアプリを起動し白石行動予想と書かれたボタンを押した。画面には数秒で幾つかの観光スポット、中華料理の店等が表示された。
「観光スポット? こう言ってはなんだけど、白石さんってシンガポールに来て随分日にちが経っているから、こんな感じの場所もういかないんじゃないのかな?それにこのレストラン僕みたいな庶民向けぽっいんだけど」
「大丈夫!梶本製作所システム開発部のエリートグループに作らせたから間違いは無し!さあ行くよ!清水君とはなあのペアより先に見つけてやるんだから」
ええー本当は僕ははなさんとのペアだったのに。
そんなことを思っていると僕のスマホに電話がかかってきた。電話に出るとはなさんの心配そうな声が聞こえてきた。
「もしもし?こうくん今どこにいるのかな?まだ部屋にいるの?具合でも悪いの?」
「実は梶本さんが、今日は一緒に探そうってタクシーに乗せら......」
そういい終わるやいなや、梶本は僕のスマホをひったくるように取りあげてしまった。
「ええ!それどういうこと?」
「まあ、彼女の行動を予測しなかった俺のミスだな」
はなさんの驚いた大きな声と、その裏から小さくつぶやく清水の声が聞こえてくる。
「悪いけど、さっきのペア決めには納得できない!ちょっと公平さが足りないと思うの。だから今日は私とコーキが一緒に探すことに決めたから!私、負けないから!」
玲奈はそう言うと僕のスマホの電源を切ってポーチにしまいこんでしまった。
これは勝ち負けじゃないと思うんだけど。なんでこう強引かな~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます