第44話 イケメンでも、性格がアレだと困りますね
前日にセットしたアラ-ムが鳴る。普段自宅ならなかなか一度で止められないアラ-ムを一度で止め、顔を洗い部屋を出て朝食会場に向かう。
エレベ-タ-ホ-ルで清水と偶然?出くわし僕と目が合い近づいてくる。しっかし朝から男なのにこうキラキラした雰囲気もど-かと思うけどねえ......
「お早う松君、夕べは良~く眠れたかな?」
なっなんだなんだ、この雰囲気良さげな感じで、すご-く含みのある言い方は? ここは平静を装って、普通によくありそうなテンプレで答えておくか。
「いや~初めて外国へ来たから興奮してあまり眠れ無かったよ!だからちょっと眠い」
まあそれ以外にも昨夜いろいろあったからな、清水はどこまで知っているのかな?
意味の無いことだけれども、清水君をカオヨミしてみる―――眉毛、平たん、傾き無し。大きな瞳―――いつも通りのシトラス系の香りがするような爽やかな目を細めた微笑み。口元―――両側が綺麗な均等上げ。もう~ここまで来るとラノベの中のヒロインだろ!悪役令嬢だろうが5秒で悩殺!これだけ完璧な隙のなさだと何を考えているかまるで読めない。ダメだ、降参!
「へぇ-そう」
うわあ、全然お前の言ってることなんか信じてないからって感じがしまくりで、透明度100%で見透かされてるよう!
恐らくこいつの事だから昨夜の事全く知らないって言うことはありえないと思う!でも、知ってると思わせてこっちのボロがでるのを誘っているのか?いや、まさかそこまで......う~ん考えが交錯しすぎて纏まりがつかなくなってくる。
と、そんな僕の考えを見透かしたように清水は話しかけてきた。
「ん?松君何を考え込んでいるの?」
「い、いや何も、何でもないよ」
そんなりやり取りをしながら朝食会場に到着した。会場は入り口にライオンのレリ-フみたいのが、飾ってある場所だった。朝食はバイキングスタイル、もちろんセレブ専用のバイキングの為一般用とは別の場所にあった。
はなさんと梶本さんとは部屋が別のフロアになっているため朝食会場で落ち合う事になっている。
会場に到着すると、僕を見かけたはなさんがちょっと顔を赤らめてそれを誤魔化すように話しかけてくる。
「あ......おっおはよう......こうくん」
下の名前で呼ばれるのなんて、親とか親戚以外に無かったから顔が少しだけ紅潮してくる。だからできるだけさりげなく自然に挨拶しようと思ったけど。
「あっおっおはよう......」
うわ~カッコ悪すぎ!なにそんなに声裏返ってんだよ僕は!!折角、はなさんと下の名前で呼び合おうと夕べ約束したのに~~本当に意気地なし!少しくらい腹黒師匠のマネできないのかね...と自分に腹が立つ。
「あのさ、思ったんだけど、本当シンガポールって日本と全然違うね!ほら見て街路樹が何だか、熱帯雨林のジャングルの木みたいだよね」
「そうだね、日本にある木とは全然違うよね!ハハ...」
も-緊張しすぎておうむ返ししかできない。
「ね!見てよ、通りを歩いている人が、なんだかインドのマハラジャみたいな帽子被っている人とか、中国っぽい人とか、南国っぽい人とかいろんな人がいるんだねえ~」
そう言いながらさりげなく、でもちょっと遠慮気味にはなさんは左手を僕の肩にかけて通りの方向を指す。あれ、ひょっとして顔が紅潮してるのはなさん?シルクのようなはなさんの顔が、首元までピンク色に染まっているのに気づいて僕も、なんだかわからないけど、顔が赤くなってきた。
その時遅れて梶本さんが会場に入ってきた、かなり眠そうだ。
「おはよう......ふあ~やっぱりだめだ~朝は時差があっても無くても眠い~」
はなさんはびっくりして、パッと僕の肩にかけていた手を離すと梶本さんのところに近づいていく。
「おはよう玲奈。良く起きられたね~ヨシヨシ~」
はなさんが、玲奈の頭をまるで妹に優しく接する姉のように撫でている。
「う~はなあ、もう~からかわないでよ~ふぅ眠いよう」
その時清水の口元が一瞬緩んだのを僕は見逃さなかった。ははあ、また朝からはなさんをおちょくる気だな、全く凝りもせずよくやるよ。
「おおそうだ!田中よ!今ひらめいた!田中の実家の家業もこのホテルと同じように立て替えたらどうだ?もちろん自費で!そうしたら少しはお客さんも戻るかもハハハ!」
ボコッ!
その瞬間、清水がうずくまり他の宿泊客が数人振り返り失笑が少しだけ起こる。
「ぐぅう”......田中はな棒くん!トレイで殴るのなし!トレイは!」
「やかましい!この脳みそアロハ男!立て替えないでも経営はうまくいってるってゆーの!本当はあそこのミニチュア マーライオン銅像で殴ろうかと思ったんだけど、トレイで我慢してやったから感謝しろ!」
何故、ここまで全力でおちょくりが好きなんだあんたは?っていうかはな棒ってどういう意味?いや、もっと気になる事もあった。
「あのう、はなさんの実家の家業ってなんなのかな~って思ったんだけど」
その瞬間2人が同じ言葉を発した。
「えっ!」はなさんは顔を赤らめて、フリ-ズしている。
「えっ!」梶本は、少し驚いている。
「いっいやあ~あのう、その......りょかんぎょう」
「へえ~そうなんだ、今は外国人観光客も増えて大変でしょう?」
「ま、そだね......ハハハ」
梶本はひとり事をごにょごにょ。
「え!え?どうして? 今、はなさんって下の名前で呼んでたような気がしたけど......コーキ今まで、あんな呼び方してなかったけど、どうして?」
清水は本音を言いたくてごにょごにょ。
「確かに旅館業だね。ふふふふぅ~あああ、それに昨夜あったこととか、あああ全て今この場で暴露してしまいたい。でもそんな事言ったらこの微妙なバランスで保っている3人の繊細なトルコグラスのようなトライアングルがぁ.......トランプタワ-のような関係性がぁ......」
清水さん表情がダークサイドに落ちてます、怖いです、あとやっぱり気持ち悪すぎですよ。
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