第35話 夏合宿だなんて絶対信じねえ~
しかしドアが開くとそこには誰もいなかった。
よし!そこから靴を履き替え校舎を出てバス停に向かう。関口の家に向かう為今日は徒歩通学だった。バスは数分後に時間通り到着、バスに乗り込みドアが締まりようやく安堵感が広がった、そして嬉しさが徐々にこみ上げてきた。
やった!ついに清水を出し抜いた。思わずでるガッツポーズ。バスは時間調整の為、停車していたが、しばらくすると、車内アナウンスが聞えてきた。
「本日はご乗車有り難うございます。お客様松川さま、いらっしゃいましたら運転席まで、お越し願います」
えっ、戸惑いながら運転席へ行くと、はいと手渡された携帯からは聞き慣れた声が聞こえてきた。
「松くん、購買部には欲しい物が無かったの?ずいぶん遠くまで買い物いくようだね、一緒に行こうか?」
汗が、顔から滴り落ちるのがわかった。
生徒会室に戻ると、田中さんが
「松くんおかえりなさい、暑かったでしょ、はい麦茶。おなか空いたら素麺もあるよ」
と額に薄っすらと汗をかきながら微笑みながら声を掛けてきた。
「ありがとう田中さん」
「どういたしまして」
あれ?田中さんの右手の甲が少し赤くなっている。これはやけど?もしかして素麺茹でていて?
「田中さん、その手......」
「あっあはは、料理下手だからさちょっと火傷しちゃった、でも大した事無いからダイジョーブ!」
「そう、ありがとうね」
「いや、そんな......大げさだなあ、へへ」
なっなんかちょっとむず痒い感じがするなあ。あっそうだ!気になる事があった。
「しかし、あの~清水さん?」
「なんだいあらたまって?」
「一つ質問をしてもいいでしょうか?」
「もちろん」
「なんで分かるの!!!ひょっとして秘密エージェント?CIA?FBI?KGB?」
僕は混乱して訳の分からない質問をしてしまっていた。
「まあ当たらずともとおからずかな、因みにあのバスの運転手さんはある件で知り合いだから」
どぉ~いう経緯でとは敢えて聞かないでおこう。
「さあて、全員揃ったところでいくつかの懸案事項がありますので話し合をしたいと思います。まず、一次案件」
「ぶぅーつまんないよ~」
田中さんが不服そうに口を尖らせて言う。
「はい、そこぶぅーたれ禁止。先ずは図書委員の欠員が続いている件から、その後は購買部のパンの種類が少ないという意見が多い件、その次は体育倉庫の鍵が閉まりにくい件、プールの塩素が強くアレルギーの人が入れない件」
このあと、いくつかの一次活動案件の事項について話し合い、その後清水君は
"忌ありげ"に別の話題に切り替えた。
「さて!!みなさん!夏になってきましたね~!夏と言えば何がありますかみなさん?」
えっ?さっきまでの清水君とテンションがちょっと違うな?どうーしちゃったんだろう?暑さでやられたかな?うわーなんかキラキラな瞳でこっちを見てるよ~僕になんか面白い答えを求めてる感じ?
「えっと...ゲームフェスみたいな感じ的な...?」
「ぶー!ゲームフェスは夏以外もやってま~す!松川君不正解! 田中はどうかな?」
「あ”っ?ど~せゲス海の提案することなんか~裏に1枚も2枚もあるから、楽しくないこと~!」
「ぶー0点不正解!幾分かは楽しいです!」
「はあ~さよかあ~じゃ早く言ってよ、こっちは暑いんだから、嫌な事は早くすませたいの~」
「OK! それじゃ手短に。もう今週で7月も半ばを過ぎましたので夏季休暇中の生徒会夏合宿の件を話し合いたいと思うんだけど」
「はっ?」僕は耳を疑った、夏合宿?そして思わず手を上げた。
「はいなんでしょう松くん」
「あの生徒会で合宿をやることの意味はなんでしょう」
「そうですね、目的としてはいくつかありますがまずは慰労です。皆様にはずっと頑張ってもらったので。そしてなんと佐藤先生から海外も選択肢に含めて合宿の許可を頂きました。あともうひとつはお祝いも兼ねてです。先月めでたく全員無投票で生徒会正役員に昇格しましたからね。よかったですね松川書記兼、会計補佐」
え?知らなかった!っていうか、役職増やされているよ!そう思ってショックを受けていると。
「あああっ!!もうあんったのその嘘聞きあきたからさ。で?合宿の本当の目的は?」
やはり同意見か。まあ昇格以外嘘なんだろうな。
「うーん、折角旅行が楽しめるんだからもうちょっと乗ってくれてもいいと思うんだけど」
「あ?でっどこいくの?」
田中さんがぶっきらぼうに言いやや机を荒く叩きながら立ち上がった。びっくりして田中さんの顔を見上げると、その眉間には強い皺がいくつか出来ていた。田中さんって怒ると右手の親指を人差し指の上に置いてストレスを逃しているのか......ああ何か清水に酷い目に合わされたんだなと思う。
「言っとくけど、あんたが5月山浦の件でやらかしたの、まだ忘れてないんだからね!危うく帰りの飛行機乗り遅れるところだったんだから、二度も!中間テストの初日に成田空港から学校に直行とかあり得ない!」
うわぁ~そこんところ詳しく知りたいような、知りたく無いような。
「あの件は済まなかった。でも今回は前みたいに前日深夜集合とかギリギリで行動開始とかないし、人員も増えたから大丈夫!それに今回は白石の件だからなんとかしないといけない。正直なところもう両親も学校もお手上げ状態なんだ」
そう清水君が言うと田中さんは、渋々ながら少し納得しつつも、
「ああ、彼女かぁ......我が儘お嬢様だからな。でもさあ、もうあんなやつほっとこうよ」
とうんざりとした表情を見せた。
ええ!この前の梶本玲奈も相当な我が儘娘だと思うんだけど。ちょっとそこんとこどう思うよと独白しながら田中さんの友人で有ること思いだし口を少しだけモゴモゴさせつぐむ。
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