第22話 テキストで腹の探り合いって嫌
「はなぁ、嬉しいよ!ありがとう!清水君と一緒に間取り持ってくれて嬉しいな!」
「まあ、そんな大げさなことじゃないけどね。ははは。でも、皆でどこかに遊びに行けたらいいな。」
田中さんが蚊の泣くようなか細い声で言うと、清水は全く気にしていないように様子を見せ、その小さな人をじっと見つめた。時々目をそらしてはを繰り返している。そして、その小さな人が意を決したように切り出した。
「あのさ... それで、どこに連れて行ってくれるの?」
清水は一瞬、上唇を引きつらせ、鼻の周りにしわを寄せた。嫌悪の感情を感じた。
そうか... だからさっき躊躇の表情を見せたのか。自分に嫌悪感を抱かせたくないから、回避しようとしたが、他に適当な理由が見つからず、仕方なく梶本を呼んだ。でも、なぜそこまで?
そして、その嫌悪の表情を一瞬だけ見せた後、すぐにいつも通りの爽やかな笑顔に戻し、答えた。左右の口元の口角が均等に綺麗に上がってるよ、アンドロイドみたいだね!しかも目元は冷たいまま!
あ~あ、また何か心にも無い事言いそうだなあ。
「まあ最初は仲良しグループ的な感じから初めない?その方が俺の方もリラックスして楽しめるんだけど、どうかな?」
期待通りのテンプレありがとう!でもあの表情だと彼女には全然興味ないんだな。
だけど恐らく田中さんの友人であるこのちびっこい人の気持ちを出来るだけ害しないように、でも下手に恋人扱いさせないように、目的の二次活動達成の為だけに気持ちを切り替えて言葉を選んで話せる。頭の回転がめっちゃはや!
「そうですね~まずは、友達からですよね~」
梶本さんの眉毛が少しさがりつつも、くちびるの端が少しだけ上がったまあ少し残念っぽいけどとりあえずはって、ところかね。
「あれっ、ここにいるはなあと清水君と比べて......この人は?」
あわてて、言葉の最後を言いよどんで僕の方を見たとき、口元の口角が少しだけ上がっていたのを僕は見逃さなかった。まただ!そう思った。
フン!ああそうだよ!僕は不細工だよ!その口元が少し上がっているのは中学の頃女子に嫌っていうほど取られた態度、あの時とは別の軽蔑の表情だ。
昔俺の事をいじめた女子と同じ目だ。ムカつく!クソ!だから女は嫌いだよ、人を直ぐ外見で判断して!
「あっその人は新しくウチの仲間になった松川考基くん、書記補佐だよ」
「はあそうなんですか、どうも梶本です」
「はあ、松川です」
一度あった人で記憶にある人に再度あったときは、人は口が少しだけ開きかかり、挨拶した後も、ややひらきかけたままになる。人が記憶を手繰り寄せているときの表情、ってそのしぐさを全然見せないって僕には全く興味ないし、思い出したくも無いって感じですかね!
そう勤めて機械的に僕に挨拶を交わすと、その後は清水のそばから離れない状態になり、しばらく早口でどうでも良い様な事をしきりに清水に話していた。
僕は結局することがないので手持ちぶさたになり、つぶやくように言った。
「あの~やっぱりする事無さそうだから帰るよ」
こんな惨めな思いもう沢山だ、早く帰りたい。
そう言って足早に生徒会室から立ち去ろうとすると、清水はさりげなく素早く出口をブロックして爽やかに
「これからみんなでどこかで、夕ご飯でも食べにいかないか?」
と持ちかけてきた。
「え?いいよ。なんかお邪魔なようだしさ、それに」
うぜえなあ本当に。その作った爽やかさ最高だけど僕には通じないよ。
僕がその後を続けようとすると、ちびっこい人に気づかれないように、何か細心の注意を払っている様子を見せながら、
「まあ、そう言わないでさ~邪魔なんかじゃないよ全然!」
と、やや大げさな言葉使いで僕に話しかけそして彼女たちに気づかれないようにさりげなく僕の袖をひっぱり、スマホの画面を見るように促してきた。
清水のスマホにはいつのまにか何行かのメッセージが表示されていた。
”頼む! この子は2次活動の重要な情報源の一人なんだよ。昨日の永田覚えているだろう? あれも彼女の広いネットワークがあったからできた事なんだ。”
えっ!こいつ、俺が一緒にどこか行くの拒否るの見越して、あのちびっこい人と話しながらこんな文章作ってたの?どんだけスパイなんだよ、海斗さん......
僕は、表向きの言葉遣いをしながらスマホで本音を返した。
「ええ、でもお邪魔しちゃ悪いな~なんか」
同時に本音送信っと。
”だったら、彼女を生徒会にでも2次業務にでも参加させればいいじゃないか?”
そう言うと、彼も同じように表面的な事を言いながら本音で返信してきた。
「全然!邪魔じゃないから、さっきみんなでって君も言ったろう?」
”彼女はそういうのに興味がないんだ、いろいろと家庭の事情がありそうで……”
いや!レス早!、っていうか最初から僕が断るの予想して、このメッセージ作ってたのか?鋭すぎる!!
でもまあ、この生徒会も、このちびっこい女子もいろいろあるからその事含めてか。ま、こんな事で時間の無駄遣いするならとっとと済ませたほうがいいかな。
「そうか、わかったじゃあ少しだけな」
「本当?来てくれるの?悪いね、何だか無理やり見たいで~田中、松君も来るって!良かったな!」
ちっとも悪いと思ってないだろう、その表情は......チッ!分らないように超小さく舌打ちする僕。
田中さんは無邪気に明るく応える。
「あっそうなんだ、大勢のほうが楽しいし良かった~」
まあ、ちょっとだけならいいか、はあ~でも疲れる。
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