第23話 無理な作り笑いが気になる
だけどどうして梶本は清水と話す時無理に笑顔を作ろうとするのだろう。何か不自然だ。
あの後僕たち3人は学校を出て近くのファミレスに行くことになったのだが、夕食を摂っている時そんな事ばかり考えていた。
なにか人を恐れているのに無理して距離を近づけているような気がする。梶本の顔をそれとなく気付かれないように注意深く見るとそれが良くわかる。
鼻の周りに薄くだけど皺が何本もでている、だけど唇の両側が強く上げられている。鼻では嫌悪の表情をしているのに、口では喜びを表している。口で表現されている喜びの表情は殆ど嘘、だから彼女の表情は作り笑いの典型例と言える。
だけど清水君の時だけそんな表情になるけど田中さんの時は本音で会話しているような表情だ。彼女と話している時は笑った時の口の角度がちょっと違う、あと目の下の皺が多くなる感じがする。
気のせいかな?清水君と話している時の表情が母さんが酔っ払って手を付けられなくなった親父のご機嫌を伺いながら会話してる時と少しだけ似ているんだけどな。
ひょっとして彼女、まさか男性恐怖症?でもそれじゃなんでわざわざ清水に好意を?なんか矛盾するな、う~ん分からない考えが混乱してきた。
そんなことを一人で考え込んでいると、梶本さんが時計をみてすこし驚きながら言った。
「あ、もうこんな時間だ、私帰らないと」
そう言われてみんな時計を見ると19時近くになっている事に気付いた。
「ああもうこんな時間か、じゃあ今日はこれで」
「うん、楽しかった~清水君今度はどっか遊びにつれていってね~」
「はは、まあみんなで遊びにいくとかいいかもね~」
駅前で梶本と別れると僕たち3人は、誰からとも言う事無く近くの喫茶店に入り直した。
「ごめんな松君、今日は梶本さんとあまり話せてなかったね。つまらない思いをさせてしまったかな」と清水が言った。
「いや、そんなことないよ。ただ、彼女の表情が不自然で気になっていたんだ」と松川が答えた。
「不自然って?具体的にはどういうこと?」と田中が尋ねた。
「う~んなんて言ったらいいか自分でも上手く言えないんだけど、梶本さんの表情や態度と清水への好意が相反すると言うか、清水の事あれだけ好きだってアピールしまっくているのに男を警戒してるっていうか、敵意すら表している?ごめん僕言っている事おかしいよねやっぱり」
二人とも一瞬無言になりそして互いに顔を見合わせている。えっ何か僕すべる事言った?
「すごい!」
「いや~すごいな!やっぱり佐藤センセの眼力は恐れ入ったよ、驚いた!そうその通り、彼女梶本怜奈は男性恐怖症、理由は不明」
「え!?」
「まつ君良く分かったね~すごいよ一度会っただけで。私なんか彼女と同じクラスで友達になってしばらくしてから、他の人とかからの情報も合わせてなんとなくわかったのに~あれが表面的なものだと分かったんだ。今日初めて会っただけで?」
「田中さんは何か知っているの?」
「原因については詳しくはわからないんだよ、でも多分お父さんとお母さんが仲がよくないみたいなこと言ってたような気がするから、その事と関係があるかも」
そういいかけると田中は何か気になったようで、
「あ~もう田中さんだなんて、他人行儀な言い方好きじゃないな~」
ちょっと目を細めて少しだけおどけた感じで言った。
「えっ?でも下の名前で呼んでもいいの?」
「う~んそれもちょっとね~自分の名前好きじゃないんだ~古臭いでしょ?」
「そうかな?いい名前だと思うけど」
「エッ?そ、それは有難うね、ヘヘ」
「まあ田中それは今は置いといて、取り合えず今回の2次活動の目標として彼女の男性恐怖症を少しでも克服してあげるってことでいいかな?」
「まあ~この手の問題は解決は難しいんじゃないの?先月あった伊藤君みたいになんなきゃいいけど」
「まあ、いつもうまく行くとは限らないよ、でも正直あれは俺の作戦ミスだった、すまない」
「いいよもう済んだことは、しょうがないんじゃないの~あのケースは、まあ結果的に事が治まったから良かったけど」
2次活動もいつもうまくいくとは限らないのか、二人とも眉を一瞬寄せた、後悔してるのかな?気まずそうだ、一体何があったんだろう。まあとりあえず今は梶本さんの件だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます