第19話 まあ最後の候補者なんだよね

 生徒会室に一種の気だるい沈黙が広がっていった。そんな状況に耐えられなくなったので、僕はもう一度同じ事を聞いてみた。


「あの、今のどういう意味ですか?1次活動やる2年生が全員辞めたって?」

田中は少し顔を赤らめ、やがてそれはうなだれの姿勢に変化して小さな声でつぶやく。


「あちゃ~…」

「田中!!!今それを言う必要はないだろ!」


 清水君はやや上から目線で諭すように田中さんに言う。なんかちょっとイラってくるんだけど。


「ごめーん…。っていうかゲス海が2年を親の七光りだの、無能呼ばわりしたから出てってたんだろ?」

「事実を言って何が悪い?そもそもアイツが…」

やや清水が挑発的に言い放つ。


 これ以上黙っていると段々と過激になっていきそうだったから、わざと話の腰を折る為に僕は当たり前の質問をした。

「あの~…!と言うことは生徒会のメンバーは…」


「うん、実は1次2次関係なく、メンバーは3人。」

って言うことは僕も含めてここにいる3人だけか…。僕はその後すがるように聞いてみた。

「でも、それなら3年生に手伝ってもらえば?」


 そう言うと田中さんは少し諦めた表情を見せ、ゆっくりと彼らが把握している事実を話し出した。


「松君も知ってると思うけど、ウチの学校金持ちの子息様が多いからそもそも内申なんかあんまり気にする人多くないんだよね。だから去年の生徒会の2年の役員はゼロ。つまり3年の生徒会メンバーはいなかったんだよ。お金持ちにとって最悪今まで通り多額の寄付金を積めば付属の大学にはいけるし、優秀な家庭教師つける人も多いんだ。だから生徒会やる人とか元々多くないっていうか~……。」

 なんか田中さんの長い睫毛と肩がどんどん下向きになっていく。テンション相当下がってるんだなあ。

「そ、そうなんだ......2人で大変だったね。」

「そう…。本当に大変だったんだよ......。それで、去年一時的に2次業務やる人がいなくなって一部のモンスターペアレントっていうの?それが騒ぎ出したんだって、それに......」


 なんとなく僕がここに入れられた理由が見えてきた。恐らく、そのモンスターはかなりの金額の寄付金を学校に投じている訳だな。まてよ、それにって言ったよな? 何か他にもありそうだけど、田中さんにこれ以上辛いことを聞くのも悪いな…。



あっそういう事か、サトゴリラに生徒会室に無理やり連れてこられて来た時、田中さんに清水君が言ってた事を思いだす。


『新しい人、佐藤センセから紹介してもらったから』


なるほど…、前にここに入れられてギブアップした奴がいて、候補者が僕くらいしか残ってないのね……。

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