第15話 やる気ない決意
清水が生徒会室から出て行った後、僅かながらもリラックスできた僕は 、思い切って田中さんにあることを聞いてみた。
「あの、田中さん」
「う~ん?なぁに?女性恐怖症のこうきくん」
「いや、あの、今まで入学してからどの位こんな事してるんですか?」
「え? どのくらいって? まあ問題児といってもそんなに多くないよ、大体だけど1週間に1回か2回くらいかなぁ?」
えええ! こんなに問題ばっかり起こすなんて、この学校のコスパ最悪じゃないか。自分の時間を1次活動や2次活動に使うことが殆どで、ほとんど自由時間がない!
「そうですか…、ははは…。他にどんな事やらかしてきてるんですか問題児は?」
「そうだねぇ…。だいたいが恋愛関係で揉めてごちゃごちゃになったとか。つまんないところだと学校とか塾のテストのやまはりとか~。あっ、そう言えばこの前もっと変なのもあったよ。清水がやったんだけどね、うんちもらしたからパンツばれないように学校まで持って来てくれだって」
「そんな事まで…、情けなさ過ぎる…」
「そう、情けないよね。小さい時からな~んの苦労もしない人たちは、くだらないことで見栄を張って、出来ないことは他人に頼ろうとするんだよ」
そう軽蔑の表情を一瞬だけ作り
「まあよろしく~! 仲良くやろうよ!」
と直ぐに弾ける笑顔をして、僕のほうを方を見てきた。ただその後田中さんはまた近づいてきそうになったので、僕は慌ててしまい
「失礼します!」
そういって生徒会室を出て走り出した。
自転車置き場に辿り着くと既に自分以外の自転車は無くなっていて、時計を見ると19時過だった。ちょうど良いや今日の夫婦喧嘩も終わっているだろう。
僕は自転車に乗り込み考える。
「こんな事でいいんだろうか、何か信じられない…。でも奨学金かぁ…」
そう思いながら、自転車を漕ぎ出した。
校門を出ると県道沿いに自転車を北へ走らせ交差点を3つ越えると家に着く。家に帰ると母さんが泣きながら割れた皿を片付けていた、僕も無言で片づけを手伝う。
「考基、ごめんね」
「いいよ、いつもの事だろ。親父は?」
「あの馬鹿ならまたどっかに飲みにいったよ。まったく…、最低の父親だね……」
その言葉に沸き起こる複雑な感情を必死に押し殺し、片づけを手早く済ませると、母さんが疲れた表情で聞いてきた。
「夜食はどうするの?」
「いいよ、適当にスパゲティーでも作って食べるから。母さんは寝てて」
「そう、悪いね」
自分が何を考えているのか、僕自身もよくわからなかった。ただ、無意識のうちに、湯切りを忘れそうになっていたスパゲティーに目をやっていた。
「まあ今日はどうせあそこあたりで意識が朦朧になるまで飲んだくれているはずだから、これ食べたら迎えに行くか」
それにしても......
生徒会活動でお坊ちゃんたちの後始末かあ…、確かに奨学金は魅力的だけど僕は要領がよくないからなあ。 人の世話を焼きながら勉強するなんて、僕にはできる気がしない…。
だけど......大学なんかとてもうちの経済力じゃ無理だし、親父の会社もつぶれないでギリギリでやってるからな。
「やるしかないか......2次活動」
****
慌しく松川が生徒会室から出て行って数時間後。清水は今日の2次活動が完了した事を佐藤先生に報告し、生徒会室に戻ってきた。田中はちょうど、1次活動記録の入力を終わりPCをシャットダウンしていた。
清水は田中におもむろに言葉をかけた。
「松君にあの事を言わなくて良かったのかい?」
「ひとまずは......いいよ」
「そうか......まっお前なら大丈夫だな」
「そっ私なら大丈夫」
「そっか、じゃあ俺は帰るわ。戸締りよろしく!」
清水は何か言葉を続けたそうな仕草を一瞬みせたが、軽く微笑み生徒会室を出て行った。
一人生徒会室に残り、カップに残った紅茶を見つめながら田中は思う。
「今度こそ負けないんだから......絶対!」
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